１）人類に共通する素朴で普遍的な「霊的存在への信仰」
“アニミズム・シャーマニズム”
地球上にいつ人類が登場するようになったのか、現時点でははっきりとした最終結論は出されていませんが、太古のある時期に地球人類が誕生したことは間違いありません。そしてその時から、人間は「霊的なもの」への関心を持ち始めました。太古の人類が霊的なものに関心を持ち、これを信仰していたことは、さまざまな考古学的資料からも明らかにされています。人類の祖先といわれるネアンデルタール人やクロマニヨン人が、死後の世界の観念を持っていたことを示す埋葬儀礼や、狩猟に関係する呪術的儀礼を行っていたことが知られています。
太古の人間の原始信仰とは、具体的には“アニミズム・シャーマニズム”のことですが、この原始時代の信仰は、最も素朴な形での「霊魂説に忠実な信仰」と言えます。
アニミズム・シャーマニズムという「霊的存在への信仰」
人類史を客観的に眺めてみるなら、いつの時代にも「霊的存在への信仰」があったことが分かります。原始時代から現代に至るまで、人類は霊魂の存在・死後の世界の実在を信じてきました。原始時代の宗教が“アニミズム・シャーマニズム”という「霊魂説」に基づく信仰であったことは、よく知られています（注１）。
アニミズム・シャーマニズムは――「物質世界とは別の世界（霊界）に、数多くの霊的存在者（カミ・霊魂・精霊・死霊・祖霊・天使・妖精など）がいる」「こうした霊的存在者が物質世界に住む人間に働きかけ、さまざまな霊的現象を引き起こす」「人間は死とともに、霊界にいる霊的存在者の仲間に入る」「いったんあの世（霊界）に入った霊が、霊媒（シャーマン）といわれる特殊な地上人を通してメッセージを送ってくることがある」という素朴な霊魂観に基づく信仰に他なりません。
人々は、「シャーマンが呪術などによって霊的存在者に働きかけると、これに霊的存在者が反応したり、シャーマンの身体を一時的に支配（憑依）してその存在を表したり、シャーマンの身体を借りて意志を伝えたりする」といった「心霊現象（霊媒現象）」が発生することを日常的に体験していました。現在の地球上に見られる“チャネラー”とか“巫女”と呼ばれる人間も、皆“シャーマン（霊媒）”と同類の霊能者です。アニミズム・シャーマニズムという原始時代の宗教は、霊的観点から言えば――「霊魂説に忠実な信仰」であったということなのです。
（注１）シャーマニズムは“アニミズム”を基盤または素材として成立する宗教形態で、著名な宗教学者エリアーデは、これを「原初的・太古的な要素を備えた宗教である」と定義しました。
アニミズム・シャーマニズムは、地球上で最も広範に存在した宗教
アニミズム・シャーマニズムという「霊的存在への信仰」と、それにともなう「心霊現象（霊媒現象）」は、地球上のいずれの地域でも見られました。地域や民族によって多様なバリエーションをとりながら、世界各地に存在していました。そしてアニミズム・シャーマニズムは、過去の時代ばかりでなく現代においても、物質文明の後進地域では“生きた信仰”として引き継がれています。また日本のような物質文明の先進国においても地方の田舎（東北地方・沖縄・南西諸島）では、昔ながらのアニミズム・シャーマニズム信仰が行われています。こうした事情を考えてみると“アニミズム・シャーマニズム”は、地球上で最も古くて広範に受け入れられてきた宗教・最も多くの地域で共有されてきた宗教と言えます。
しかしアニミズム・シャーマニズムは、近代西欧では「ダーウィニズム（唯物論的進化論）」の観点から、宗教の原初形態・未発達な原始宗教と位置づけされ見下されるようになりました。現代の多くの知識人も、アニミズム・シャーマニズムに対して同じような見方をし、無知と迷信からなる低俗な風習・原始的宗教と考えています。