“エクトプラズム”の合成――霊と霊媒の共同作業

エクトプラズムは、幽界下層にいる未熟霊（＊職人としての役割を担う霊）が地上の「物理霊媒」から幽質素と生体エネルギー（半物質エネルギー）を取り出し、これに自らの幽質素と霊的エネルギーを加えることによって合成されます。地上の霊媒がエクトプラズムの素材を供給し、霊界の職人霊がそれを加工してエクトプラズムをつくるのです。エクトプラズムは、霊媒の身体のさまざまな開口部（鼻・耳・口・眼・生殖器）から流出します。最も多いのは口からの流出です。

霊界の職人霊は、霊媒から取り出した素材にあらかじめ用意しておいた自分の幽質素と霊的エネルギーを加えてエクトプラズムを合成しますが、その際、地上人の目にはエクトプラズムが霊媒の体内から流出しているように見えます。霊媒からエクトプラズムが流出する背後では、霊界の職人霊によって、きわめて手の込んだ複雑な操作が行われているのです。

エクトプラズムのさまざまな状態

“謎の物質”エクトプラズム

エクトプラズムは自然界には存在しない特殊な物質であり、常識では考えられないような性質を持っています。そのため“謎の物質”と言われています。エクトプラズムは、蒸気のような状態で現れたり、粘りのある液体（流動体）のようになったり、固体のように硬くなったりします。時にはそれらのエクトプラズムが、一個の生き物のように動き回ることもあります。

最も特殊なケースとして、エクトプラズムが固体状態になって人間の手や顔や全身の複製をつくることがあります。これをエクトプラズムの「物質化現象」と言います。物質化したエクトプラズムは重量を持ち、計測することができます。面白いことに多くの場合、物質化したエクトプラズムの重量分だけ霊媒の体重が減少します。そして実験が終わると、エクトプラズムは徐々に消滅して霊媒の身体に戻り、霊媒の体重は元通りになるのです。

一方、エクトプラズムは強い光線によって傷つきやすく、カメラのフラッシュなどが当たると瞬時に霊媒の身体に戻り消滅してしまいます。こうした状況は、エクトプラズムを流出させた霊媒に大きなショックや苦痛をもたらすことになります（＊この問題は後に、赤外線写真の導入によってある程度まで解決されることになりました）。このことからエクトプラズムの物質化とは、エクトプラズムが霊媒の身体の一部分（分身）を形成する現象であることが分かります。

エクトプラズムを合成するための素材は、地上の霊媒の「幽質素」と「生体エネルギー」です。この２つが十分にないと、必要なエクトプラズムをつくることはできません。霊媒の「幽質素」と「生体エネルギー」だけでは足りないときには、交霊会の参加者から少しずつそれらを集めることになります。その際、参加者たちは脱力感を覚えたり、疲労を感じたりするようになります。また交霊会の会場が、物理的心霊現象を引き起こすためのエネルギー操作によって急激に冷気に包まれるようなこともあります。

エクトプラズムを着色する必要がある場合には、部屋のカーテンやジュータン・生け花・参加者の衣服などから色素を取り出します。一度に多く取り過ぎると物体が崩壊してしまうため、少しずつ取り出すようにします。同じ部屋で何度もエクトプラズムを合成すると、その部屋の物体（カーテンやジュータン）は早く分解してしまうようになります。

エクトプラズムは、一般の物質の定義には全く当てはまらない特殊な物質です。エクトプラズムは、物質の範疇に組み込むことができないものなのです。強いて言うなら、「物質と霊質の中間物質」「謎の半物質」としか表現のしようがありません。当時の科学者たち（クルックス博士やリシェ博士など）はエクトプラズムに関心を持ち、時間をかけて実験・研究を行いましたが、最終的には「一般の物質とは根本的に異なる半物質」ということが明らかにされただけで、依然として多くの謎が残されています。現在ではエクトプラズムの存在自体は世間に広く知られるようになりましたが、エクトプラズムに関する認識は、一世紀前と同じレベルにとどまっています。

エクトプラズムは一般の物質とは異なるため、その存在を科学的に証明することはできません。しかし実際には、多くの人々がエクトプラズムを目の前で見て、その存在を確信しています。科学では実証できない“謎の物質”が存在するという事実は、科学の限界と科学が対象とする世界の狭さを、逆に証明することになっています。科学的に証明できなくても事実は事実である以上、否定のしようがありません。当時、研究に携わった科学者たちは皆、“エクトプラズム”をどのように理解したらよいのか分からず途方にくれ、「不思議なことだが事実である」との言葉を残しています。

何より科学者たちを困惑させたのは、エクトプラズムという謎の物質が存在することに加え、それ（エクトプラズム）を目に見えない「知的存在（霊）が操っている」という事実でした。

“エクトプラズム”の作用――物体を霊的活性化し、霊の意念に反応させる

エクトプラズムは、地上の物体を霊的活性化し、霊界人の意念に呼応したさまざまな動きをさせます。エクトプラズムの主な役割は、霊界から送られる意念（思念エネルギー）通りに物体を動かすことです。エクトプラズムが物体を霊的活性化することによって、物体を動かしたり空中に浮き上がらせるといった「物理的心霊現象」が起きるのです。

これまでもエクトプラズムが「物理的心霊現象」と深い関わりを持っていることは知られてきましたが、それがどのようにして現象を引き起こすのかについては、正確なことは分かっていませんでした。心霊現象に関心のあるほとんどの人が、物質化して固体状態になったエクトプラズムが物体を押して移動させたり、テーブルや人間を下から支えて空中に浮き上がらせると考えてきました。

しかし、それは厳密に言えば間違った解釈です。確かに多くの場合、外見上は物質化して固体状態になったエクトプラズムが、テーブルなどの物体を下から押し上げているように映ります。物質化したエクトプラズムの杖が、物体を叩いて音を立てているように見えます。時には物質化によってつくられた人間の手が、物体を動かしたり楽器を奏でているかのように見えることもあります。しかしこうしたエクトプラズムの動作は、地上人の常識に合わせて霊界人が演出したものです。地上人が理解しやすいように、わざわざそうしているのです。実際には、物質化したエクトプラズムが物体を持ち上げたり動かしたりしているのではありません。エクトプラズムが物体を叩いたり、楽器を演奏して音を発生させているわけではないのです。

エクトプラズムが物体に接触することで、その物体は“霊”の一部分のようになります。こうした状況を霊界サイドの視点で表現すれば――「霊媒の身体とつながった（霊媒の）分身を“霊”が支配する」ということになります。これが霊界の霊がエクトプラズムを用いて物体を支配する実態で、「霊的活性化」と言います。エクトプラズムによって物体が霊的活性化すると、物体が霊の意念に反応して、霊の思い通りに動くようになります。私たちの肉体が、私たちの意思に反応して動くのと同じようなことが起きるのです。

エクトプラズムが物体を霊的活性化すると、その物体は霊の意念に反応して、一時的にまるで生き物のようになってさまざまな動きをすることになります。あるいは精妙なロボットのようになって動き回ることになります。物体の「霊的活性化」については、現時点の地上世界の知識レベルでは、これ以上の詳しい説明はできません。古い時代の人間に、現代の物理学や情報システムについて解説しようとしても、不可能であるのと同じことです。地上人は、自分の意思がどのようなメカニズムで肉体を動かすのか、よく分かっていません。しかし動かそうとすれば、意思に反応して肉体は動きます。エクトプラズムによる物体の霊的活性化でも、それと同じことが起きるのです。

霊界では、思念によって大気中からさまざまなモノをつくり出すことができます。欲しいモノを思い浮かべるだけで、即座にそれが目の前に出現します。そしてつくり出されたモノは、霊の思念に従ってロボットのように動くことになります。このように霊界では誰もが、自分の意のままに動く“分身ロボット”を自由につくり出すことができるのです。

実は地上人も、思念によってさまざまな“霊的存在物”をつくり出しています。地上人が熱心に寺社などにお参りをすると、その思念が幽界の下層域に信仰対象物（仏像・神像）の「想念霊」をつくり出すことがあります。ほとんどの地上人はこうした事実を認識していませんが、それと同様のことを霊界の霊が物質世界で計画的に演出しようとするのが「物理的心霊現象」です。ただし、霊界とは異なる物質次元の世界（地上）で物理的心霊現象を発生させるためには、特別な工夫が必要となります。

霊界では大気中のエネルギーから自分の欲するモノをつくり出し、それを自在に操作することができますが、霊界人が地上世界で自分の思い描くモノをつくり出して意のままに動かすためには“エクトプラズム”という半物質を合成しなければなりません。地上の物体を思い通りに操るためには、エクトプラズムという「エネルギー伝達物質」を用いて一時的に「物体を霊化するプロセス」が不可欠です。幽界下層に留まっている未熟霊の持つ「幽質素」と「霊的エネルギー」に、地上の霊媒から取り出した「幽質素」と「生体エネルギー」を混ぜ合わせて霊と物質の媒介物質・つなぎ物質をつくることが必要となるのです。地上の物体をこの“エクトプラズム”につなぐことによって「霊的エネルギー」が充電され、物体が一時的に生き物（霊の分身）のようになります。霊の意念に反応する“ロボット”に変化するのです。こうしたプロセスがうまくいくと、「物理的心霊現象」が発生することになります。

エクトプラズムによって物体が霊的活性化して“霊の分身”のようになると、物体は霊の意思に従って反応します。「浮き上がれ」と命じれば浮き上がり、「動け」と命じれば動きます。エクトプラズムを用いてわざわざ支えたり持ち上げたり押したりしなくても、物体が霊の分身として自動的に動くようになるのです。ただしエクトプラズムによって霊的活性化したといっても、物体を動かすためには、さらに大きなエネルギーが必要となる場合もあります。一人の職人霊の意念（思念エネルギー）だけでは足りないときには、同じレベルの霊（幽界下層にいる未熟霊たち）の力を結集して強い思念エネルギーをつくり出し、エクトプラズムに働きかけるのです。

エクトプラズムに関する以上の内容を整理して図示すると、次のようになります。

“エクトプラズム”に関する科学的研究

スピリチュアリズムの初期に盛んに行われた心霊研究において、科学者たちが最も関心を示したのが“エクトプラズム”という不思議な物質でした。クルックスやリシェをはじめとする当時の一流の科学者たちが、エクトプラズムの謎を解き明かすことに心血を注ぎました。

なかでも、シュレンク・ノッチングの研究がよく知られています。彼は霊媒の同意を得てエクトプラズムの標本を採り、それを顕微鏡で検査したり化学分析を行っています。その結果、エクトプラズムの中には多量の白血球や上皮細胞が含まれ、成分が膵液に似ていることを発見しました。しかしノッチングの発表した研究内容が、他の霊媒のエクトプラズムにも共通するものであるかどうかについての結論は、いまだに出ていません。

実は“エクトプラズム”は霊媒の身体が膨張したもの、言わば分身であって、その成分は霊媒の肉体成分の複製（コピー）です。このためノッチングが報告したように、エクトプラズムには霊媒の白血球や上皮細胞が含まれているのです。エクトプラズムには霊媒の肉体成分だけでなく、地上の物体から取り出された色素や繊維などが含まれていることもあります。

物質化した「エクトプラズム体（手や全身像）」は必ず、霊媒とヒモ状のもので結ばれています。ちょうど私たちの肉体と霊体がシルバーコードで結ばれているように、あるいは母親（母体）と胎児がへその緒でつながっているように、霊媒と物質化霊（エクトプラズム体）はエクトプラズムのコードで結ばれています。霊媒と物質化霊は、一体関係にあるのです。物質化霊は、霊媒の身体が膨張してせり出し物質化したもので、それを「霊が支配する」という仕組みになっています。地上人の目には物質化霊と霊媒は別々の存在として映りますが、実際には、物質化霊は霊媒の身体の一部なのです。そのため物質化霊の身体を傷つけると、霊媒の身体を傷つけたのと同じような反応を引き起こすことになります。

エクトプラズムの研究者として名高いもう一人の人物が、W・J・クロフォードです。クロフォードは、「物質化」にともなう霊媒の体重の変化を厳密に計測しています。それによって彼は、物質化を起こした際には霊媒の体重が減少すること、減少した重量が「エクトプラズム体（物質化霊）」の重さと等しいこと、そして時には霊媒の体重が半分以下にまで低下するようなケースがあることを明らかにしています。このように普通「物質化霊」の体重は霊媒の体重よりも少ないのですが、なかには霊媒の体重を超えるようなケースも存在します。その場合は、交霊会の複数の参加者から大量のエネルギーが供給されているのです。地上の人間（霊媒）の体重が見る間に減少し、現象が終わると直ちに元通りになるというようなことは常識では考えられません。しかしこれは、すべて現実の出来事なのです。

“エクトプラズム”は、科学的には依然として“未知の物質・謎の物質”のままです。現代科学は目覚しい発展を遂げましたが、物質についていまだに解明されていない面が多くあるのです。

“エクトプラズム”には霊媒の「霊性」が反映される

エクトプラズムに関するもう一つの重要な点は、エクトプラズムの内容（質）は常に同じではない、ということです。エクトプラズムの質は、霊媒の霊性・精神性・人間性・霊的体質（霊体の特質性）によって変化します。霊媒の人間的要素のすべてが、エクトプラズムに反映するのです。言いかえれば、霊媒ごとにエクトプラズムの質が異なり、一つとして同じものは存在しないということです。霊性・精神性の優れた霊媒のエクトプラズムは質が高くて精妙ですが、霊性の低い霊媒のエクトプラズムは質が低くて精妙度が劣ります。

こうした事実を通して、「物理的心霊現象」においても人間の「霊性」が重要な要素となっていることが分かります。霊性が高い物理霊媒は高次の物理的心霊現象を発生させ、霊性が低い物理霊媒は低次元の現象を発生させることになります。

“エクトプラズム”によって引き起こされる、さまざまな「物理的心霊現象」

霊界の“霊”がエクトプラズムをどのように用いるかによって、さまざまな「物理的心霊現象」が発生することになります。地上サイドからは、それぞれの物理的心霊現象は異なるメカニズムのもとで発生しているように見えますが、霊的観点から言えば、いずれの現象もメカニズムとしては同じものなのです。「エクトプラズムによる作用」という一つのメカニズムがあるだけで、すべて同じ現象・共通の現象ということになります。

例えば、エクトプラズムによって空気という物質が霊的活性化して霊界人の意のままに音がつくり出されると、「ラップ（霊的音）現象」が発生します。エクトプラズムによってテーブルやイス・花びんなどの物体が霊的活性化して霊の意思に従って動くようになると、「テレキネシス現象・物体浮揚現象・人体浮揚現象」が発生することになります。またエクトプラズムが地上の物体を包んで霊的活性化することにより、物体や人間が瞬間的に消滅して他の場所に移動する「アポーツ現象・テレポーテイション現象」が発生します。さらにはエクトプラズムが物質化して“霊の姿”をつくり出すと「幽霊現象」になり、それを写真フィルムに映し出すと「心霊写真」になります。また“発声器”を形成し、これを用いて霊が音声で通信を送ると「直接談話現象」になります。このように“エクトプラズム”をいろいろな形で用いて操作することによって、さまざまな「物理的心霊現象」が引き起こされるようになるのです。