「霊視」についての従来の定義

昔から、肉眼では通常、認識することができない物体や風景などが見えるという不思議な現象がよく知られていました。これが「霊視現象」です。霊視の対象はさまざまで、何百キロも離れた所にいる人間や、はるか彼方の風景を見ることもあります（＊日本では古来、こうした現象を「千里眼」と呼んできました。現在では「遠隔透視」と呼んでいます）。また、人間の肉体の内部をエックス線のように見透して異常箇所を指摘したり、箱や封筒の中の紙に書かれた文字や紋様などを見透して言い当てたりすることもあります。さらには、霊界のさまざまな存在者・存在物（＊人霊や天使･妖精･霊的映像など）を見ることもあります。このように霊視によって、肉眼では決して見ることができない存在物や風景を認識することが可能となります。

「霊視現象」は、霊体に備わった「霊的視力（霊眼）」を用いることによって発生します。肉眼で見るわけではないので、目を閉じても、目に覆いをしても見ることができます。当然、目が不自由な人や視力を失った人であっても、霊視力・透視力によって対象を見ることができます。

では、霊視力で見る場合と肉眼で見る場合とでは、その見え方はどのように違うのでしょうか。結論を言えば、霊視力が完全に発揮されれば、肉眼で見るのと全く同じように対象を明瞭に認識できます。優れた霊視能力者には、まるで肉眼で地上の人間を見るように、はっきりと霊界の人間（霊）が見えるのです。もし霊能者の霊視能力が不十分な場合には、対象を薄ぼんやりとしか認識することができません。

霊視現象は、霊能者の霊体に備わっている視覚能力によって発生しますが、霊視には今述べたように、遠方の人間や風景を見る「遠隔透視（千里眼）」や、隠れた物体や人間の肉体内を見る「物体透視・人体透視」があります。また、霊界の霊や風景などを見る場合もあります。従来は、これらを一括りにして「霊視」と呼んできました。

以上を整理すると次のようになります。

■霊視についての従来の定義

肉眼では見えないものを見る現象

■従来の霊視の対象

①物質に隠された物や人間の体内（物体透視･人体透視）

②遠方の人間や風景など（遠隔透視）

③霊界の人間（霊）や風景など

「霊視」についての新しい定義と分類

このように、肉眼では見ることができない対象を見る「霊視現象」は多岐にわたります。従来の心霊学では、こうした現象をまとめて「霊視」と呼んできましたが、霊的観点から見ると、それぞれのケースごとに発生メカニズムや発生次元が異なっていることが分かります。地上サイドから見ると、どれも不思議な現象として一括りにされますが、内容の違いに注目して厳密に分類する必要があります。内容的にあまりにも異なっているものをひとまとめにすることは、正確な定義とは言えません。そこで「霊視」に関する“新しい定義”が必要となります。スピリチュアリズムの霊的知識によって、霊視についての新しい知見と理解がもたらされ、霊視の明確な定義が示されることになりました。

すでに述べたように「霊視現象」は、霊体に備わっている霊的視力を用いることで発生する現象ですが、そのレベルにはピンからキリまであります。“半物質次元”で発生する低いものから、純粋に“霊的次元”で発生する高いものまであります。高い次元の霊視では、霊界の存在者や存在物（＊人霊・天使・霊的映像など）を見ることができますが、低い次元の霊視では、地上世界の存在者や存在物しか見ることができません。

こうしたさまざまな霊視現象は、「肉眼では見えないものを見る」という点では共通していますが、霊視の対象によって大きく２つに分類することができます。霊界の存在者や存在物を見るという高次のケースを本当の意味での「霊視」とし、地上世界の人間や存在物、また人体の内部を見るというケースを「透視」とします。以上が「霊視」についての新しい定義と分類です。

スピリチュアリズムの観点から「霊視」について整理すると、次のようになります。

■霊視についての新しい定義

「肉眼では見えないものを見る現象」という点では従来の定義と共通するが、本当の意味での霊視は純粋に霊的次元において発生するものであり、「霊的世界の存在者・存在物を見る現象」である。

■本当の霊視の対象

霊界の存在者・存在物・風景など

今後は、霊界の霊や存在物や風景などを見るものを「霊視」とし、地上界の存在物や風景を見るものを「透視」として扱います。「霊視現象」と「透視現象」を明確に区分することにします（＊「透視」については、次の２）で詳しく取り上げます）。これまで霊視の分類が曖昧だったのは、正確な霊的知識がないために霊的な背景が分からなかったからです。地上サイドから見ることしかできず、霊的視点に立って理解することができなかったのです。そのため「霊視」と「透視」の本質的な違いが分からず、混同することになってしまいました。

しかしスピリチュアリズムの霊的知識によって初めて、「霊視」と「透視」の明瞭な区分と定義が明らかにされることになりました。

「スピリチュアル・レベルの霊視力」と「サイキック・レベルの霊視力」――霊視と透視の違い

これまで肉眼では見えない対象を見る現象をひとまとめにして「霊視」としてきましたが、それは「スピリチュアル能力」と「サイキック能力」の区別ができなかったからです。ここで霊視と透視の違いについてもう少し説明します。「霊視」では霊界の様子を見ることができますが、「透視」では地上世界に属するものしか認識できません。この事実は、「霊視」と「透視」に関わる「霊的視力」が異なることを意味しています。霊体に備わっている視力を「サイキック霊視力」と言いますが、「透視」はこのサイキック霊視力によって引き起こされます。それに対して霊界の様子を見ることができる「霊視」は、「スピリチュアル霊視力」によって生じます。

一般的に「透視」と言われている心霊現象は、「サイキック霊視力」が低い次元で発揮されたときに発生する現象です。したがって、そのままでは霊界の様子を見ることはできません。サイキック霊視力の次元を高めて「スピリチュアル霊視力」にまで引き上げないかぎり、霊界の霊や存在物を見ることはできません。「スピリチュアル霊視力」とは、サイキック霊視力が霊界からの働きかけを受けて質的にレベルアップしたものなのです。

「サイキック霊視力」に霊界からの働きかけが加わると「霊視能力」が質的にレベルアップし、「スピリチュアル霊視力」に引き上げられることになります。すると、サイキック霊視力では見ることができなかった霊界の様子や、霊・天使などの霊的存在者が見えるようになります。これが本当の「霊視現象」です。霊界の様子や霊の姿を見るためには、「透視」の段階を越えることが必要となります。霊視力が「サイキック・レベル」から「スピリチュアル・レベル」にまで高められなければなりません。

霊界人と地上人の「霊視力」の違い

霊界ではすべての霊が肉体の束縛から解放されているため、霊体の能力を自由自在に発揮することができます。同じ霊界にいる他の霊の姿を見、お互いを認識し合っています。遠く離れた所にいる霊の存在も、瞬時に認識することができます。また物質は障壁とはならず、地上世界の様子を完璧に認識することもできます。このように霊界人は、「サイキック霊視力」と「スピリチュアル霊視力」の両方を縦横無尽に使いこなしているのです。

これに対して地上の霊能者は、霊界人が持つ「サイキック霊視力」と「スピリチュアル霊視力」の何十分の一、何百分の一かを発揮しているだけです。地上の霊能者に霊視力があると言っても、それは霊界人と比べるなら、ほんのわずかなものにすぎません。物質（肉体）に覆われているということは、それほどまでに霊的能力を鈍らせることなのです。

霊界人は「サイキック霊視力」と「スピリチュアル霊視力」を同時に完全に発揮できますが、地上の霊能者の場合は普通、どちらか一方に偏っています。「サイキック霊視力」はあるが「スピリチュアル霊視力」はない、「スピリチュアル霊視力」はあるが「サイキック霊視力」はないというような傾向が見られます。「透視」はできても「霊視」はできない、反対に「霊視」はできても「透視」はできないといったケースが多いのです。

こうした霊視力の偏りは、地上人が霊界人の何十分の一、何百分の一しか霊能力を発揮できないところに由来します。霊界では、霊視力と透視力の区別はありません。これらが同時に、しかも地上人の何百倍もの正確さ・完璧さをもって発揮されます。もちろん地上でも特別に優れた霊能者の場合には両方の能力を同時に発揮することがありますが、それはきわめて稀なケースです。またその場合でも、発揮できる能力は霊界人の何十分の一程度にすぎません。霊界人と地上人では、霊視力の発揮度において天と地ほどの違いがあるのです。

オーラの「霊視」と「透視」

「スピリチュアル霊視力」によって霊の姿や霊界の風景を見たり、霊がつくったスクリーン映像などを見る現象が「霊視」ですが、霊視の対象として他にも重要なものがあります。それが“オーラ”や“チャクラ”です。オーラやチャクラについては、これまでヨーガや神智学などで盛んに取り上げられてきました。「オーラは肉眼では見えない」という点から考えると、その認識は「霊視現象」か「透視現象」であることが分かります。

“オーラ”とは、人間が発する生体エネルギーのことですが、これにはさまざまな次元があります。なかでも「霊の心」から放射されるオーラは高次元で、そこにはその人間に関するありとあらゆる霊的情報が含まれています。霊界では霊同士がお互いの心から放射されるオーラを見て、お互いを知り尽くしているのです。そのため霊界では、ウソや隠し事は一切できません。この「霊の心」から発する高次元オーラの情報を読み取るには、霊体に備わっているサイキック霊視力では不可能です。スピリチュアル霊視力にまで至らないかぎり、それはできません。多くの霊能者が“自分はオーラを見ることができる”と言っていますが、彼らが見ているものは高次元オーラではありません。「霊の心」から放射される霊的次元のオーラを読み取るのは「スピリチュアル・レベルの心霊現象」であり、本当の霊視力の持ち主でないかぎりできないことなのです。

“オーラ”にはこうした純粋に霊的次元のものとは別に、「霊体」から放射される半物質次元のもの、「肉体」から放射される物質次元のものがあります。霊視能力のない霊能者であっても透視能力があれば、半物質次元の低いオーラ（霊体オーラ）を認識することはできます。また、霊体オーラが肉体に流れ込んでくる接点（＊これが従来“チャクラ”と呼ばれてきたもの）を見ることもできます。世の中では、オーラやチャクラを見ることが大きな関心を呼んでいますが、それには「スピリチュアル霊視力」によるものと「サイキック霊視力」によるものの２種類があるのです。すなわち“オーラ”の認識には、「本物の霊視能力」によるものと「透視能力」によるものがあるということなのです。

霊能者が「スピリチュアル霊視力（本物の霊視能力）」を持っていると言っても、地上人である以上、その認識能力は霊界人の何百分の一程度でしかないことを忘れてはなりません。「霊の心」のオーラを見るということは、そこに含まれるさまざまな情報を読み取るということであり、そのためにはきわめて高次の霊能力が要求されます。実際には「霊の心」から発する高次元オーラを読み取ることは、大半の地上の霊能者には不可能です。霊能者が「霊の心」のオーラの情報を入手したという場合、その多くは霊界の“霊”が情報を読み取り、それを地上の霊能者に伝えたものです。

サイキック霊視力を「スピリチュアル霊視力」に高めるためには

ここまでの内容を、もう一度整理します。霊界の霊的存在者や風景・映像・霊の心のオーラなどを見るのが「霊視現象」であり、地上の離れた所にいる人間や風景・霊体のオーラ、あるいは人体内を見るのが「透視現象」です。

世の中には、素晴らしい透視能力を発揮する行者や霊能者がいます。彼らは優れたサイキック霊視力の持ち主です。しかしそうした人間であっても、霊界の“霊”の姿を見ることはできません。サイキック霊視力のレベルにとどまっているかぎり、霊界の存在者や存在物を認識することはできません。サイキック霊視力をスピリチュアル霊視力のレベルにまで引き上げなければ、「霊の姿」や「霊的スクリーン」や「霊の心のオーラ」を見ることはできないのです。

霊界の霊を見ることができる本当の霊視でなければ、「霊魂説の証明」に貢献することはできません。霊体に備わっている能力（サイキック霊視力）を開発しただけでは、霊の姿を見ることはできません。霊界にいる死者の特徴を語ることができなければ、死後の生命の存続を証明することは不可能です。このため高級霊は、霊体の能力だけを研究対象とし、狭い世界にとらわれている心霊研究には批判的です。研究対象が「スピリチュアル心霊現象」にまで高められなければ、霊界側は価値は認めないのです。

霊的能力をサイキック・レベルからスピリチュアル・レベルにまで引き上げるためには、霊性の向上・霊的成長が必要となります。スピリチュアル霊視力は、霊界の霊の働きかけによって持つことができるものであり、それには地上の霊能者の「霊性の向上（霊的成長）」が不可欠です。霊能者が「霊主肉従の努力」と「利他愛の実践」に励むなら、霊性が高められて霊界人の援助を受けられるようになります。その結果、スピリチュアル霊視力が身につくのです。スピリチュアリズムを主導する高級霊が地上人に望むことは、何よりも「霊的成長」です。地球人類の霊的救済に関係するのは霊体能力の開発ではなく、霊性の向上だからです。

「霊視現象」の実例

ここでは本物の「霊視現象」の実例を、Ｍ・バーバネル著『これが心霊の世界だ』（潮文社発行）から２つ紹介します。１つ目の実例は、霊の肖像画を描くフランク･リーア氏です。霊視によって霊界にいる霊を認識し、それを肖像画として描くのです。死者についての事前情報が一切ないところで描かれた肖像画は、家族が一目見て本人と分かるものでした。

フランク・リーア氏には、生まれつき「霊視能力」がありました。生まれついての霊能者の多くがそうであるように、リーア氏は他の人には見えないものが自分にだけ見えることで子供心を痛めていました。初めのうちは、自分の目に見える人物が誰だか分からず戸惑いましたが、やがてどうやら“死んだ人”らしいと気づきました。成人してからは画才と霊視能力を結びつけることを思いつき、霊界にいる霊の肖像画を描くという独特のスタイルができ上がりました。

電話で死者の家族から申し込みを受けると、“霊の姿”が現れます。彼はそれを絵にしていくのですが、霊はしばしば死の床の苦しみや地上生活の最後の状態を再現します。すると、その苦しみを霊能者であるリーア氏も同じように体験することになります。霊が初めて地上に戻ってきた場合には、たいてい地上を去った時の状態（死の間際の状態）が再現されます。霊は自分の身元を証明するために、地上の家族だけが知っている印象的な出来事をわざと演出してみせるのです。他界者が強烈な個性の持ち主であった場合には、その個性をあえて表情に出してもらって、本人を知る地上人がすぐにその人だと分かるように描きます。顔のシワやホクロ、目や髪の色、歯の欠けたところなど、証拠になるものを正確に描写するようにします。

ある時、一組の夫婦が６歳で他界した女の子の肖像画を依頼してきました。両親は匿名でリーア氏に電話をかけてきましたが、その瞬間にリーア氏は少女を霊視し、両親に少女の性格や容貌・髪型・肌の色を正確に伝えました。その後、リーア氏の仕事場（スタジオ）を訪れた母親は、そこで生前の少女そっくりの肖像画を見ることになります。両親は６歳の時の娘の写真を持っていなかったため、大喜びすることになりました。

もう１つの霊視の実例は、バーバネルが英国最大の霊視家の一人と絶賛するＴ・ティレル氏です。バーバネルは、「彼の霊視力のあまりの完璧さに、ペテンの疑いを抱いたほどだった」と述懐しています。ティレル氏の霊視の内容は、それほどまでに正確だったのです。そうした完璧な霊視が実現したのは、ティレル氏と霊界の指導霊との間に特別な取り決めがあったからです。

その取り決めとは、指導霊がカードに書いたメモを、ティレル氏が霊視力で読むというものでした。ティレル氏は自分に「霊視能力」が開かれ始めたとき、完璧な霊視を期して、指導霊と一つの約束をしました。それが、他界者に関する情報を指導霊がきちんとカードに書き、彼が霊視力によってそれを読み取ることだったのです。指導霊が霊界にいる他界者本人から、氏名や地上時代に住んでいた町の名前、さらには死亡時の年齢や死亡年月日を聞き出して、それを地上の霊視能力者ティレル氏に文字で示したのです。こうした手の込んだ霊的背景があって、疑いの余地がない正確さで霊の身元を実証することが可能となったのです。

子供の「霊視能力」について

子供が霊視能力を発揮するようなことがあるのでしょうか。霊視能力は、大人の霊能者だけが持つものなのでしょうか。実は子供の中には「霊視能力」を、ごく自然に発揮しているケースがあります。しかし多くの場合、親や周りの大人が、それを病気ではないかと思って無理やり押さえ込もうとします。生まれつき霊視能力を持った子供の大半は、成長とともに霊視力が自然に消滅していきます。また、無理をして霊視力を押さえ込み、霊能力のない一般人としてその後の人生を歩み通すようなこともあります。スピリチュアリズムでは、子供の「霊視能力」がしばしば話題になってきました。

ここでは、歴史的に有名な２人の霊能者が子供時代に発揮していた「霊視能力」について紹介します。一人は英国人霊媒オズボン･レナード夫人です。レナード夫人は、英国が誇る世界的物理学者オリバー・ロッジの息子レイモンド（＊第一次世界大戦で死亡）からの霊界通信を受けたことで、一躍世界中に名前が知られるようになりました。ロッジによって霊能力の信憑性が認められたレナード夫人は、“英国女性霊媒の女王”とまで言われるようになりました。

レナード夫人の「霊視能力」は、彼女がまだ幼い頃に開かれました。彼女には、誰にも見えないものが見えたのです。朝、目を覚まして着替えをしていたり、子供部屋で朝食をとっているときなどに突如、眼前に美しい景色が展開しました。そしてそれが毎日のように続きました。そのときは壁もドアも天井も消え失せ、代わってなだらかな坂、美しい土手や樹木、さまざまな形をしたきれいな花が咲き乱れる谷のある風景が現れます。そうした風景が、何マイルも先まで続いているように見えるのです。

ある日、父親がスコットランドへ出張することになりました。その朝のことです。普段と違って家族全員が揃って朝食をとることになりました。彼女は目が覚めると、うれしくてすぐに飛び起きて着替えをし、テーブルにつきました。そのとき正面の壁に目をやると、彼女が“幸福の谷”と呼んでいるいつもの光景が広がり始めました。普段は内緒にしていたのですが、その朝はつい気軽にそれを父親に言ってしまいました。彼女の言葉を聞いて、父親が聞き返しました。彼女は壁を指さしましたが、その壁には２丁の銃が掛けてあるだけでした。「お前はいったい、何のことを言っているのかね」と、父親が尋ねました。そこで彼女は、自分に見えるありのままを説明しました。家族は最初、「それはみんなお前の作り話だろう」と言いましたが、彼女はその光景を詳しく説明して「間違いない」と言い張りました。そのため父親は、これは普通のことではないとは感じつつも、「二度とそんなものを見るんじゃない」と言いつけました。

しかし父親の厳しい言いつけにもかかわらず、彼女はその後も同じ光景を見続けました。そしてその光景の中に出現する人物（霊）と親しくなっていきました。この人物（霊）こそ、レナード夫人の指導霊“フィーダ霊”であることが、大人になってから明らかにされることになったのです。

もう一人は、英国屈指の女性霊媒へレン・ヒューズです。彼女の幼児期における「霊視体験」を紹介します。ヒューズ女史も、子供の頃から霊視能力がありました。いつも彼女が、人には見えないものが見えると言うため、両親は“この子は少しおかしいのではないか”と心配していました。へレンが、肉眼では見えない遊び友だち（霊界の子供たち）の話をしたり、その友だちが玄関から入ってきて裏口から出ていくと言ったときには、「作り話を言うのもいい加減にしなさい」と叱りつけました。しかしいくら叱られても、ヘレンには見えるし、声も聞こえました。彼女は実際に、その子供たちと一緒に遊んでいたのです。

ヘレンは学校でも、先生から同じようなことで叱られました。ヘレンが校舎に入りかけたとき、教室の窓際に一人の生徒（霊）の姿が見えました。そこへ先生が来て、ヘレンが指さす方を見ましたが、先生の目にはその生徒の姿は見えません。「本当にいたんです」と彼女が言っても、先生は聞き入れてくれません。そしてヘレンは、悪ふざけで“幽霊を見た”と言った罰として、窓際に立たされることになってしまいました。

へレンが大人になると霊能者としての名前が英国中に知れわたり、デモンストレーションのために英国各地を回るようになりました。ある日のデモンストレーションには、何と子供時代に罰を与えた先生が参加して、ヘレンとその時の思い出を語り合うことになりました。

子供の「霊視能力」の具体例として、歴史的に有名な２人の英国人女性霊媒の幼少期の話を紹介しました。この例から分かるように、生まれつき霊能者としての使命が与えられている場合には、霊界からの働きかけの中で、幼少期から自然な形で霊視能力を発揮するようになります。そうした子供にとって「霊視」によって認識する“霊”は、地上人と何も変わらないリアルな存在です。そのため霊界があることを当たり前として幼少期を過ごすことになります。

こうした子供は、21世紀の現在でもまだ特別な存在と見なされていますが、今後、スピリチュアリズムの普及によって地球人類全体の霊性が高まるにともない、世界各地で次々と現れるようになります。

「霊視現象」の問題点

本当の霊視とは、霊の姿や霊界の様子を認識する現象であることが明らかになりましたが、「霊視現象」にはいくつかの困った問題が発生することがあります。その一つが“低級霊”の介入です。本来「霊視能力」は、霊能者本人の霊性の向上にともなって自然発生的に発揮されるようになるものです。これが霊能開発の自然なプロセスであり、そこには常に背後の霊による導きと守護がともなっています。

ところがこうした正常なプロセスを踏まずに、霊界の低級霊の働きかけを受けて「霊視能力」が一時的に発現するようなことがあります。“低級霊”の働きかけによって、霊界の低級霊の姿や化身霊・想念霊を見てしまうような事態が引き起こされるのです。こうした低級霊の関与による「マイナスの霊視」は、憑依現象の中でしばしば発生します。

“憑依”によって低級霊の餌食になるような人間は、往々にして霊性が低く霊的知識もありません。「霊視現象」が発生すると、何か特別なことが自分に起きたと有頂天になり、自惚れるようになります。自分の身に起きている現象が低級霊によるものであることが分からず、困った問題を次々と発生させることになります。こうした“低級霊”の介入による一時的な霊視現象は、かなりの数にのぼります。世の中で語られる霊視現象の多くが“低級霊”の働きかけによるものであることを、しっかりと認識しておかなければなりません。

低級霊の介入以外に、霊視現象には別の問題もあります。それがニセ霊能者によるニセの霊視です。本当は霊の姿など見えないのに、さも見えているかのように語るニセ霊能者が世の中には数多くいます。残念なことにスピリチュアリストを自称する人間の中にも、そうしたニセ霊能者がいるのです。ニセ霊能者は、霊や死者の魂について話せば、たいていの人間は強い関心を寄せることを知っています。特に愛する人と死別したばかりの人間は、死後の世界の情報を切望していることを知っています。そしてそうした人の弱みに付け込んで、いい加減な作り話やウソを言って喜ばせたり不安を与えるのです。

ニセ霊能者の中には、他界者の生前の情報をこっそりと集めて、“ニセ霊視”に信憑性を持たせようとする者もいます。こうした手の込んだ不正は、テレビの心霊番組でたびたび行われています。死別の悲しみの中にある人間の心理を弄び、それを利用して名声や利益を得ようとすることは最も卑劣な行為です。

霊視現象をめぐっては、さらに次のような問題もあります。それは熱心な信仰者に、しばしば見られる現象です。信仰者が祈りをしている最中に、一時的に霊視能力が発現して、霊界のさまざまな存在物を見ることがあります。その存在物の一つに、信仰的信念やドグマからつくり出された“想念霊”があるのです。

例えば、この世では神とサタンが対峙して激しい戦いをしており、信者は常にサタンの誘惑にさらされ攻撃を受けているという教義（ドグマ）を固く信じていると、その信念が霊的次元にサタンの想念霊をつくり出すことになります。また、霊界下層の“邪悪霊”が地上の信者をからかうために、わざとサタンの想念霊をつくったり、自らがサタンを装って（化身霊となって）姿を見せることもあります。一方、熱心なクリスチャンは常に、イエスに思いを馳せています。その強烈な思慕の念が、霊的次元にイエスの想念霊をつくり出すことになります。

こうした「想念霊の形成」という現象は、霊界ではごく当たり前のことですが、地上においても本人の強い思いが“想念霊”をつくり出すことになるのです。そして自分がつくり出したサタンやイエスの想念霊を霊視して、「サタンを見た」「イエスに会った」と錯覚することになります。熱心なクリスチャンにとってイエスに会うということは最高の願望であり、これまでも多くのクリスチャンが「イエスに会った」と告白しています。

しかし、その実態は“想念霊”を霊視したものです。イエスに会ったといっても、それは本人が想像するイエスの姿であり、教会で教えられたイエス像です。そうした自分自身が考えるイエス像を、自らの思念がつくり出し、それを見て「イエスに会った」と錯覚しているのです。