「霊視」と「透視」の違い

先の霊視現象の箇所で、「霊視」と「透視」の違いについて説明してきました。霊視も透視もともに、肉眼では見ることができないものを認識するという点では共通しています。しかし前者が「スピリチュアル心霊現象」であるのに対して、後者はその多くが「サイキック心霊現象」であるという点で大きな違いがあります。また見る対象が、霊視では霊界の存在物や霊であるのに対して、透視は物質界の存在物や人間という点でも異なっています。こうしたことから本サイトでは、従来ひとくくりにされてきた霊視現象を「霊視」と「透視」の２つに分類しています。

このような区別が可能になったのは、スピリチュアリズムの霊界通信によって霊的観点に立った見方が明らかにされたからです。「霊視」と「透視」の本質的な違いが示されたからです。それによってこれまで地上サイドから一面的に解釈してきたさまざまな現象を、初めて立体的に理解することができるようになったのです。

３種類の「透視現象」

もう一度、透視について復習します。「透視」とは、通常、肉眼では見ることができない地上世界の存在物や風景などを見る現象です。物質の壁を突き抜けて（透過して）対象を認識するのが「透視現象」です。透視としてよく知られているものの一つが、遠方にいる人間や何百キロも離れた場所の様子を見るという現象で、これを「遠隔透視」と言います。もう一つは、人体の内部を透かして見たり、物体に覆い隠された対象物を見透したりするもので、これを「人体透視・物体透視」と言います（＊一般に「透視」と言われる現象は、この「物体透視」です）。

透視には、これらとは別のケースもあります。それが“オーラ”や“チャクラ”を見るという現象です。オーラやチャクラは半物質次元に存在するものですが、透視によって認識することができます。これを「半物質次元の透視」と言います。このように「透視」は、見る対象によって大きく３つに分類されます。いずれの透視も、人間の霊体に備わっている「霊視力」を用いて引き起こされる現象です。

以上の内容を整理すると、次のようになります。

■透視の対象と、透視の種類

①遠く離れた所にいる人間や存在物を見る（遠隔透視）

②人体内の様子や、物体に隠されたものを見る（人体透視・物体透視）

③半物質次元（霊体と肉体にまたがる次元）の存在物であるオーラやチャクラやシンボルを見る（半物質次元の透視）

従来の心霊学では、霊能者が未来の様子を見る現象も透視に含め、「未来透視」と呼んできました。地上人の中には「霊視力」によって未来の出来事を視覚的に見るという人間がいます。本サイトでは、こうしたケースは未来透視ではなく「未来予知」に分類します。確かにこうした現象には透視の要素が含まれますが、その本質はどこまでも「未来を予知する」という点にあります。「未来予知が透視という方法でなされている」ということです。未来予知には透視のような視覚的な方法を用いるものから、霊聴やインスピレーションによるものなどさまざまあります（＊「未来予知」については４）で取り上げます）。

一方、未来予知とは反対に、過去世の様子を視覚的に見るという人間がいます。目の前の地上人の過去世が映像のように示される、というものです。結論を言えば、こうした“過去世透視”と言われているものは、例外なく“ニセモノ”です。あるいは霊能者が未熟さゆえに、他の現象によって見た映像を過去世と錯覚したものです。地上人が、他人の過去世を覗き見するようなことはできません。それは、霊界の高級霊であって初めてできることです。しかも摂理上、過去世を知る正当な理由がある場合にのみ許されることなのです。

したがって“過去世透視”なるものは、すべてウソであり、作り話です。「過去世を透視できる」と言う霊能者は、すべてニセモノです。そのため本サイトでは、過去世透視は心霊現象の項目には含めていません。霊界人には可能性があっても、地上人には全く可能性がないからです。もし、本当に過去世の映像を見たという人間がいるとするなら、それは“低級霊”がその人をからかうために、わざと“ニセの映像”をつくって見せたということです。

「透視能力」に関する基本的な霊的知識

透視能力は、訓練によって一定のレベルまでは開発することができますが、それを開発しようとする際には、必ず知っておかなければならない基本的な霊的知識があります。「透視」に関する基本的な霊的知識とは、次のようなものです。

「透視現象は、すべての人間の霊体に備わっている霊視力によって発生する」、その意味で「誰もが透視能力者になる可能性を持っている」「透視能力は、スポーツによって肉体の能力を伸ばすことができるのと同じように、訓練によって開発することができる」「透視能力は、霊体から肉体に流れる霊的エネルギーが増加することで発揮されるようになる」「瞑想や精神統一などによって霊体から肉体に流れる霊的エネルギーの通路が拡大するようになる。これが古来 “チャクラを目覚めさせる”と言われてきたことの実態である」「地上人がどれだけ霊体能力を伸ばしても、肉体という物質によって覆われている以上、霊界人の何十分の一、何百分の一しかその能力を発揮することはできない」――こうした霊的知識は、透視能力を開発しようとする者が知っておくべき不可欠の知識なのです。

霊界では霊体の能力は縦横無尽に発揮され、透視能力は当たり前のものとなっています。霊界人は離れた所にいる霊や霊界の風景を明瞭に認識することができるだけでなく、地上界の人間や地上の風景も完璧に認識することができます。霊界人にとって物質は、霊視をさえぎる障壁にはならないのです。こうした霊界人が持つ霊視能力と比べたとき、地上の霊能者が発揮する霊視能力は、ほんのわずかなものにすぎません。

「透視現象」の実例〈１〉――遠隔透視

透視の対象となるものは、さまざまです。透視は見る対象によって「遠隔透視」「物体透視」「人体透視」「半物質次元の透視」に分類されます。以下では、それぞれの透視の具体例を見ていきます。

まず、昔から日本で“千里眼”と呼ばれてきた「遠隔透視」についてです。「遠隔透視」という言葉は、アメリカのスタンフォード研究所（＊現在はＳＲＩインターナショナルに名称変更）の２人の研究員（プットホフとターグ）によって1972年につくられた用語です。彼らは遠隔透視を、「通常の知覚手段を使わずに遠距離から情報を取得する現象」と定義しました。

２人による透視実験は、実にシンプルな方法で行なわれました。彼らのうちの１人が無作為に選んだ場所へ行き、もう１人が透視能力者と一緒に研究所に残ります。そして、遠方にいる１人が示す映像（絵）を透視能力者に述べさせる、というものでした。この実験で、何人かの透視能力者の存在が確かめられることになりました。発見された透視能力者たちは、遠く離れた場所について正確に描写することに成功しています。

1974年、２人は科学誌『ネイチャー』に彼らが発掘した透視能力者の能力に関する詳細を発表しました。この論文をきっかけとして、ＣＩＡ（アメリカ中央情報局）が２人に注目するようになりました。そしてＣＩＡは、内部の科学者やスタッフをスタンフォード研究所のセミナーに参加させるようにし、さらにＣＩＡ自身も加わって、透視の実験研究は進展していきました。やがて地図上で示した場所を透視させるという、新しい透視実験が行われるようになりました。

こうした動きが刺激となって、アメリカ国内にいくつかの透視に関する研究機関が設立されました。また、当時のソビエト連邦（モスクワ）にも、遠隔透視の研究グループがつくられました。ソ連では軍事利用を目的とした実験が盛んに行われ、そうした中から優れた透視能力者が次々と発掘されることになりました。

日本では大正６年、福来友吉博士が三田光一を用いて透視実験をしています。三田光一は優れた「念写能力」によって日本中にその名前が知られ、「透視」にも卓越した能力を発揮しています。実験は次のようにして行われました。まず、福来博士が乾板（＊写真の感光板のことで、フィルムの働きをする）が入った箱を小包で三田に送ります。三田は、浅草観音堂の裏に掲げてある山岡鉄舟の書いた額面の文字を神戸で透視し、透視した文字を箱の中の乾板に念写します。実験は、見事に成功しました。三田は、山岡鉄舟による額面の「南無観世音」の５文字を透視し、さらにそれを念写によってはっきりと乾板に表わしました。この実験によって、三田光一の「遠隔透視能力」と「念写能力」が同時に実証されることになりました。

最近、日本において、透視能力者としてその名前が知られるようになったアメリカ人がいます。過去にＦＢＩと関係があったとされる、マクモニーグル氏です。日本のテレビ番組の中で、彼の透視の真実性と驚異的な能力がはっきりと示されました。彼の透視能力は、唯物論者や懐疑派の人間がケチをつけようがないほど優れたものであり、その能力は公明正大な条件下で遺憾なく発揮されました。これは正当な心霊研究から見てもきわめて価値のある実験と言えますが、結果的には大衆の好奇心を刺激し、驚きを与えただけに終わってしまいました。本当はこの事実から「唯物的人間観」が間違っていることを明らかにすべきだったのですが、視聴率稼ぎを至上目的とするテレビ局にそれを期待することは、しょせん無理な話です。

しかし、テレビという大衆メディアによって「透視能力」の事実が公に示されたことは、人類への大きな貢献と言えます。視聴率稼ぎのために“ニセ霊能者”を次々に登場させるというテレビ界の風潮の中にあって、マクモニーグル氏による透視能力の実験は画期的なものでした。

「透視現象」の実例〈２〉――物体透視

日本における心霊研究は、明治時代の後半からすでに始まっていました。当初は、透視と念写の実験研究がその中心でした。日本における学術的研究としての透視実験は、明治43年から福来友吉博士によって行われています。この実験研究によって、後世に名を残すようになる優れた透視能力者が発掘されることになりました。そして、御船千鶴子・長尾郁子・高橋貞子・三田光一といった透視能力者の名前が、当時の新聞紙上をにぎわすことになりました。最初の透視実験では、御船千鶴子が実験台になりました。福来博士のもとで数十回もの実験が繰り返され、御船千鶴子の「透視能力」は、一点の疑問の余地もないほど完璧に実証されました。

実験ではまず、名刺を封筒に入れて千鶴子に透視させました。次に名刺を錫製の茶壷に入れ、さらにこれを木箱に入れて透視させました。いずれの場合も、彼女はほぼ完璧に透視し、名刺の名前を正確に読むことができました。さらに福来博士は、文字を書いた紙を鉛管に入れて両端をハンダ付けして、透視させました。この実験では最初、的中率は高くありませんでしたが、実験に馴れるに従って、千鶴子は完璧に透視することができるようになりました。この実験では、博士は３つの漢字を選んで書いています。ランダムに選んだ３つの漢字が偶然に当たる確立は、10億回に１回しかありません。しかもそれが連続して当たるということは偶然ではなく、透視が事実であることを示しています。このようにして福来博士は、御船千鶴子を用いて「透視能力」の実在を証明したのです。

こうした物体に隠された文字などを透視するデモンストレーションは、最近のテレビでもしばしば取り上げられ、日本や海外の透視霊能者がスタジオで透視を成功させる様子が放映されています。好奇心を煽って視聴率を稼ぐことを目的にしているテレビ番組では、透視の現場に懐疑論者を立ち合わせてわざと難癖をつけるような演出をしますが、いくらケチをつけても透視の正当性は崩せません。誰が見ても、ケチをつける側に無理があることは明らかです。

霊界人は物質の壁をものともせず、地上世界の存在物や人間を完璧に認識することができます。地上の透視能力者は、そうした霊界人の「透視能力」の何十分の一、何百分の一かを発揮しているにすぎません。しかもその能力が発揮される度合いは、人によってさまざまであり、体調によっても大きく異なります。

「透視現象」の実例〈３〉――人体透視

「人体透視」とは文字通り、人間の肉体の内部を見透す現象で、先に述べた「物体透視」の一つです。肉体という物体の内部をまるで現代医学のエックス線検査のように見透して、異常な箇所を見つけ出します。こうした人体透視も、最近になってしばしばテレビで取り上げられるようになってきました。

ある番組では「人体透視」ができるというロシアの少女をスタジオに招いて、初対面の日本人の透視をさせました。番組を見るかぎり、常識的に判断すれば「人体透視は、ほぼ成功」と言える状況でしたが、決定的な事例を示すことはできず、懐疑論者に言いがかりとも思えるようなケチをつけられることになりました。とは言え、テレビを通じてこの透視実験を客観的に見ていた多くの人々は、「人体透視」という通常ではあり得ない不思議な現象が実在することを認めることになりました。その意味で、こうしたテレビの透視デモンストレーションには大きな意義があります。ただし残念なことに、せっかくの人体透視のデモンストレーションも、視聴者の好奇心を喚起するだけに終ってしまっています。そこから発展して、霊的世界や霊魂説にまで関心を引き上げることはできません。

霊界人にとって、地上人の肉体の内部を見るのは容易なことです。異常箇所も簡単に知ることができます。スピリチュアル・ヒーリング（心霊治療）では、霊界の医者が地上人の肉体の異常を見つけ出し、治療エネルギーを作成します。こうした“霊”が主役となる心霊治療の現場では、人体透視は当たり前のこととして行われています。霊界人が持つ人体透視の能力に比べるなら、地上の霊能者が発揮する能力は、ほんのわずかなものにすぎません。

一口に「人体透視」と言っても、その内容は霊能者によってさまざまです。ある者は、患者の“オーラ”を見ます。地上人は霊体と肉体が一体化しているような状態にあるため、そのオーラを見ることによって肉体の状態を判断できるのです。一方、地上人の幽体（＊霊体と同じ）には肉体の臓器のコピーが形成されていますが、その幽質の“コピー臓器”の様子を見る霊能者もいます。コピー臓器を見ると、肉体の異常は一目瞭然です。また別の透視能力者は、全身の“霊的エネルギー”の状態を見ます。霊的エネルギーが枯渇した部分を見れば、悪い臓器を知ることができるのです。

かつて日本に、玉井康道という人体透視家がいました。彼は自分の人体透視について、その様子を著書に記しています。玉井は開業医でしたが、霊的修行によって33歳のときに人体透視ができるようになり、それを自分の診断と治療に活用しました。精神統一の後、患者の身体を凝視すると、しばらくして急に透視が始まります。患者の幻影（＊患者の「幽体」のこと。地上人の場合、幽体には肉体の臓器のコピーが形成されています）が現れます。ちょうど影法師のように、少しぼんやりした状態で映ります。

透視による身体の映像は、基本的に白く見えます。健康で生命力が充実した部分は白く、反対に病気で生命力が欠乏した部分は黒っぽく映ります。白さの度合いによって、その人の体質の強弱を知ることができます。黒い部分を見つけ出すことによって、どこが悪いのか、どの程度まで悪いのか、どのような病気なのか、慢性か急性かといったことが判断できるのです。

こうした「透視」による診断の後に、現代医学の検査を受けると、その診断にほぼ間違いのないことが証明されました。

「透視現象」の実例〈４〉――半物質次元の透視

地上人の場合、霊体と肉体の接合部分に半物質の中間体が形成されます。この中間体に関係する“オーラ”や“チャクラ”を見るのが「半物質次元の透視」です。また地上人の幽体（霊体）には、肉体の臓器のコピーが形成されています（＊手術で肉体の臓器を摘出したような場合でも、幽体にはその臓器のコピーがそのまま残っています）。“コピー臓器”は、本体である肉体の臓器の状態を忠実に反映しています。したがってこのコピー臓器を見ると、患者の異常な部分が分かります。これも「半物質次元の透視」です。

中間体上には、霊体と肉体を結ぶ接点があって、この接点を通じて霊体と肉体はエネルギーの交換をしています。接点を通じて霊体から肉体へ大量の霊的エネルギーが流入するときの様子を地上サイドから見ると、水道管から水が勢いよくあふれ出てくるように映ります。霊的エネルギーの流入が少ないときには、水が枯渇したように映ります。この水道管に相当する部分が、古来“チャクラ”と呼ばれてきたものなのです。

ただし“チャクラ”とは、古代インド思想で言われてきたような固定した霊的器官ではありません。それは、どこまでも霊的エネルギーの流入点です。この霊体と肉体の接点（チャクラ）から、大量の霊的エネルギーが肉体に流入するようになることが「チャクラの開眼」の本当の意味なのです。サイキック霊視力によって、こうしたチャクラの様子を認識することができます。

また中間体には、霊的エネルギーの流れがあります。その流れは、これまで言われてきた“気の流れ”に相当します。中間体の生体エネルギーの流れは、肉体のエネルギーの流れと連動しています。中間体と肉体の同じ箇所を、別々の生体エネルギーが流れているのです。気功の達人は「人体内の気の流れが見える」と言いますが、それはこの中間体のエネルギーの流れを透視したものです。

このように「サイキック霊視力」を用いて半物資次元の人体の様子を透視することができます。もちろん霊能者によって、その透視能力の程度は異なります。

「透視現象」に関する科学的な実験研究――“超心理学”の課題と限界

初期の心霊研究やその後の超心理学研究では、「霊視能力」の存在をさまざまな実験研究によって確認しようとしました。この種の実験研究としては、米国デューク大学のＪ・Ｂライン博士によるものがよく知られています。現在“超心理学”と呼ばれている研究分野は、1930年代にライン博士によって基礎が築かれました。

ライン博士が“超心理学”研究を始めたきっかけは、当時ヨーロッパで流行していた「心霊研究」への関心からでした。ライン博士は、心理学の先輩で心霊研究協会の会長を務めたこともあるマクドゥーガルとともに、デューク大学に超心理学研究所を設立しました。このようにライン博士の超心理学研究は、スピリチュアリズムの系譜に端を発しています。ライン博士の超心理学研究は、心霊研究と超心理学を区別して進められました。すなわちライン博士は心霊研究の本来の目的であった「霊魂説の証明」「霊魂存続の問題」を初めから放棄して、超常現象のメカニズムを明らかにすることだけに研究対象を絞ったのです。

ライン博士が研究対象としたのは、“ＥＳＰ”と“ＰＫ”の２つの現象でした（＊ＥＳＰとは超感覚的知覚のことで、具体的には透視とテレパシーを指します。またＰＫとは念力のことです）。こうした現象は昔からよく知られていましたが、ライン博士はそれを学問的な対象とし、実験科学的な手法によってその実在を証明しようとしました。博士は自分の実験結果を、統計学的な手法を用いて定量的に示しました。この研究は、さまざまな分野、特に科学界において大きな反響を呼ぶことになりました。しかし当時は、“超心理学”を科学的研究として承認する学者はほとんどいませんでした。「そうした研究は科学にはなじまない」「それは科学が対象とするものではない」というのが、その理由でした。なかには頭から“トリック”の類として決めつけ、反対するような学者もいました。

やがて1960年代になって、それまでの反対一色の科学界の様子は変化し、学問的研究として超心理学を承認しようとする動きが生まれるようになりました。そして1969年には、アメリカ科学振興協会が超心理学の加盟を認めるに至りました。これによって超心理学は一応、科学界から承認を受けたことになり、各地の大学や研究機関などで研究が行われるようになりました。現在、研究機関は全米で数十箇所を超え、西洋諸国やロシア・中南米・インドなどの大学や公的機関でも研究が行われるようになっています。最近では、中国においても政府公認のもとで多くの大学や研究機関が設立されています。

日本はこうした諸外国の動きに比べ、大きく遅れを取ることになりました。日本では、超心理学が対象としている現象は宗教的なもので、学問としての対象にはならないと考える研究者が大勢を占めていました。そして超能力の問題は学問的なレベルで議論されることはなく、テレビや雑誌などのマスメディアが大衆の好奇心に応える形で取り上げることになりました。最近になってやっと、一部の大学などで超常現象が学問的に論じられるようになってきましたが、大半の学者はＥＳＰやＰＫなどの現象は学問的常識に反するとの考え方を持ち続け、新しい試みを受け入れることに尻込みしています。

一方、アメリカでは、超心理学研究は学問として認められるようになったとは言え、依然として反対論も根強くあります。“超心理学はニセ科学である”と主張する科学者らによって、超心理学に反対する団体もつくられています。また『サイエンス』や『ネイチャー』といった科学専門誌も、超心理学の論文は受けつけず、それに批判的な論文だけを掲載しています。ライン博士は超心理学を心霊現象とは切り離し、科学の一員として公認されることを念願してきましたが、いまだにそうした理想には至っていません。

博士はゼナーカード（＊ＥＳＰカード）を用いて「透視」の実験を繰り返し、統計学的にその事実を証明しようとしました。しかし人間を被験者とする実験では、物質のような再現性を得ることは難しく、正式な科学的承認を得ることができない状態にあります。反対者が主張する理由の一つが、超心理学には「実験的再現性がない」というものです。実験による「再現性」という自然科学の基準に照らすかぎり、超心理学が正式な科学として認められることは不可能でしょう。しかし世の中には、科学的に証明できなくても実際に存在するものは数多くあります。科学的方法によらなくても、真実性を明らかにする道はあるのです。

超心理学は、無理に科学的な証明を図ろうとしたことによって、自らを追い詰めることになってしまいました。本来、超常現象や心霊現象は科学の対象ではなく、「宗教・信仰の対象」として考えるべきものです。科学的でなければ真実ではないということではありません。科学は、物質世界における真理の発見方法の一つで、実験の「再現性」によって真実性を認定しようとする限定的な証明方法です。再現性がないからといって、超常現象が存在しないということではありません。超常現象は従来の科学の定義には当てはまらない、科学の対象にはならない、というだけのことなのです。科学には、霊魂や心霊現象といった物質的でないものについての真偽を決定する資格はありません。

それにもかかわらず超心理学は、研究を権威づけようとして科学に依存し、自らの首を絞めることになってしまいました。超心理学研究は、科学ではなく思想的分野・信仰体験の世界としての姿勢を確立して進めるべきです。「信仰体験の正当性を証明する学問」としての立場を明確にすべきなのです。（＊「超心理学研究」に関する書籍は数多くありますので、ここでその詳細について述べることは省略します。）

「超心理学研究」にこだわり続けることの無意味さ

心霊研究を論じるについては、次のような点をしっかりと理解しておく必要があります。それは地上人がとかく過剰な関心を抱く「サイキック霊能力」には、霊界人は全く関心がない、価値を置いていないということです。地上世界ではサイキック霊能力がある人間を「超能力者」としてもてはやしますが、霊界人はそうした地上人の様子を見て、ある意味で軽蔑しているのです。超能力のようなどうでもいいことにこだわり、膨大なエネルギーをかけて研究していることを残念に思っているのです。

人間にとって大切なことは、霊体能力を研究することではありません。限られた地上人生において魂を成長させること、霊的成長をすることが重要です。地上人の「霊的成長」こそが霊界の人々の願いであり、スピリチュアリズムの目的なのです。「霊魂説」の正当性を証明することにつながらない心霊研究には価値はありません。霊魂説の入口にすら至れない“超心理学”のような心霊研究は、全く無意味なのです。

スピリチュアリズムの本流から外れて「霊魂説の証明」という大目的を捨て去り、心霊能力の研究だけに傾倒していった超心理学は、今やスピリチュアリズムとは無関係な立場にあります。心霊研究は、最も基本的な霊的知識である「霊魂説の証明」に寄与し、地上人の「霊的覚醒」に役立ったときに初めて存在価値を持つようになるのです。