５）テレパシー現象（精神感応現象）
「テレパシー現象」の特色
テレパシー現象は、精神感応・遠隔感応・思念（思想）伝達などと呼ばれることがあります。日本では昔から“以心伝心”と言われ、多くの人々がその存在を知っていました。“テレパシー”という言葉は、英国心霊研究協会（ＳＰＲ）のメンバーであったフレデリック・マイヤースが1882年に定めた用語です（＊マイヤースは他界後、霊界から通信を送り、それが霊界通信『永遠の大道』『個人的存在の彼方』として出版され評判となりました）。
テレパシーは、人間の心の状態・思考内容（考え）･イメージ・感情などが、肉体の感覚器官を介さずに他人に直接伝わる現象です。まさに“以心伝心”という言葉が、その特色を表しています。1920年代には、テレパシーは脳波によって発生するという「テレパシー＝脳波説」が主張されたことがありました。しかし脳波は物質的エネルギーであり、テレパシー現象が時空を超越して発生することを考えると、とうてい納得できる説明とは言えません。
テレパシーはどこまでも心霊現象であり、物質次元を超越した現象であることを前提としないかぎり、整合性のある説明は成立しません。テレパシーを正しく理解するためには、人間が「霊的存在」であることを認識することが必要です。人間は肉体だけの存在ではなく、肉体の他に霊体を持っていること、そしてその霊体にはさまざまな能力があることを知って初めて「テレパシー現象」を正しく理解することができるのです。
テレパシーは他の心霊現象と同様、霊体に備わった能力によって発生する現象です。霊体にある「コミュニケーション霊能力」がテレパシー現象の主役です。誰もが潜在的にテレパシー能力を持っていますが、肉体という物質の身体がこの霊体能力の発現を妨げています。霊界では、すべての霊がテレパシーによってコミュニケーションを取っていますが、地上世界では、ごく少数の人間（霊能者）だけが部分的にテレパシー能力を発揮しているにすぎません。そのため霊界では当たり前のテレパシー現象が、地上世界では稀に発生する不思議な現象とされています。
霊界における「テレパシー現象」――霊界では、すべての霊がテレパシーで交流
今述べたようにテレパシー現象は、人間の霊体に備わっている「コミュニケーション霊能力」によって引き起こされます。霊界では、テレパシーによって霊同士が完璧にコミュニケーションを取っています。離れた所にいる“霊”と“霊”が、言葉を用いずに思考・アイディア・喜怒哀楽の感情を伝達し合っています。
霊界でのテレパシーによるコミュニケーションは、すべてが完璧に、しかも瞬時に行われます。一人の霊が相手のことを考えたり意識するだけで、その思いや心の内容が、ただちに相手に伝わります。地上のような言葉による伝達とは違って、テレパシーには伝え違い・食い違い・勘違いというようなことは全くありません。心の内容が完璧に、正確に、しかも瞬時に相手に伝わるのです。そのため霊界では、相手の思考や感情を共有することができるようになり、文字通り“テレパシー”によって「心と心が一体化」するのです。
地上世界における「テレパシー現象」――ごく稀な地上人同士のテレパシーでの交流
霊界で霊と霊が行っているテレパシーによるコミュニケーションは、地上人同士の間でも可能です。ただし、それは霊界人同士の何百分の一程度のものです。地上人は肉体に覆われているため「テレパシー能力」（＊特に受信能力）が大幅に低下しており、ごく一部の特殊な霊能者を除いてテレパシーを受信することはできません。地上人同士の間にテレパシーによるコミュニケーションが成立する場合、両者を結ぶ“霊的パイプ（霊的絆）”は霊界サイドにつくられます。この霊的パイプを通じて、思念や感情が離れた所にいる相手に届くようになります。
霊界人と違って地上人のテレパシー能力は低く、テレパシーによって明瞭にコミュニケーションを取ることは不可能です。しかしそうした状況下でも、地上人の多くが程度の差こそあれ、テレパシーを体験しています。愛の絆で結ばれた友人・夫婦・仲間の間では、お互いが同じことを同時に考えていたというような出来事がしばしば発生します。「そうそう、私も今、全く同じことを考えていた」というような体験をします。また、ある人のことを思い浮かべると、離れた所にいる相手が、同じ時間に自分のことを思い浮かべていたというようなことも起こります。これらは低次元のテレパシー現象なのです。
地上人は肉体に覆われているため、霊体に備わっている「テレパシー能力」のごく一部分しか発揮することができません。しかしこのテレパシー能力は、他の霊能力と同様、訓練によってある程度まで伸ばすことができます。地上人同士における「テレパシー現象」の成立は、ひとえに受信者側の霊能力の有無にかかっています。「受信能力」は正しい霊的訓練によって向上し、それにともなってテレパシーによる伝達内容も明瞭に認識できるようになります。特定の人との間で繰り返しテレパシーが用いられると“霊的パイプ”が太くなり、霊的絆が強化されるようになります。それによって、明瞭にテレパシーをキャッチできるようになるのです。テレパシー通信に対する確信度が高まるにともない、「あの人からテレパシーが送られてきた」と断言することができる段階にまで至るようになります。
遠方にいる人間の思念を“テレパシー”としてキャッチし、それを潜在意識が言語化して顕在意識（脳）に送り込むと、「遠方にいる人の声が聞こえた」ということになります。これが、すでに説明した「霊聴現象」です。しかしテレパシー受信能力が高まり、伝達内容を潜在意識に強く印象づけられるようになると、あえて言語化のプロセスを経なくても、相手の心の内容を認識することが可能となります。言語化された声を聞かなくても、相手の思念や感情を受け取ることができるようになるのです。
霊界人と地上人との間の「テレパシー現象」
霊界にいる“霊”と地上人との間にも「テレパシー現象」は成立します。霊界の“霊”がある地上人に意識を向けると、それが“テレパシー”として地上人に届きます。このとき地上人が、それをどの程度までキャッチできるか、どのように認識するかによって、さまざまなケースが発生します。大半の地上人は、霊界からのテレパシーを受けることができません。あるいはテレパシーを受けても、それを自覚できません。稀に霊的に敏感な人間がテレパシーの一部分を受け取り、認識することになります。これが“インスピレーション・霊的ひらめき”です。
インスピレーションを受け取ると、地上人の心の中に突如、素晴らしい考えが思い浮かぶようになります。実際は霊界から送られてきた思考やアイディアをキャッチしただけなのですが、大半の地上人はそれを自分の考えだと思ってしまいます。こうしたインスピレーションによって、優れた芸術や音楽、偉大な発明や発見が地上にもたらされました。
高級霊や守護霊が地上人を導く際には、しばしばテレパシー（インスピレーション）が用いられます。テレパシーを通じて地上人に人生の方向を示して導いたり、アイディアを送ったり、慰めや心の安らぎをもたらしたりします。実は大半の地上人が、こうした霊界からのテレパシー（インスピレーション）による導きを受けているのです。
一方、地上人の方から霊界にいる知人や家族にテレパシーを送ることもできます。地上人が霊界の知人や家族に思いを馳せた瞬間、その思念や感情はテレパシーによって相手に届きます。地上人が送るテレパシーには強弱の程度の差はありますが、深い霊的絆があるような場合には、間違いなく相手に届きます。ただし地上人には、自分の思いが霊界にいる人に届いていることが実感できないため、ついそんなことはないと考えてしまいます。
しかし“霊”を呼んで聞いてみると、確かに地上人の思いが届いていることが分かります。大半の地上人は、地上から霊界人にテレパシーを送ることができるという事実を知りませんが、地上時代に親しくしていた地上人のテレパシーは、確実に霊界にいる相手に届くのです。そして、それに応じて地上への応答が試みられることになります。また、地上人の死別の悲しみは他界した相手にストレートに届き、しばしば混乱を引き起こすことになります。
このように地上人から発したテレパシーは、霊界にいる“霊”に届きますが、地上時代に関係のなかった者には届きません。地上でも見知らぬ人から突如声をかけられたときには当惑するように、地上で縁のなかった人との間には、テレパシーによるコミュニケーションは成立しません。当然のことながら、面白半分や単なる好奇心からテレパシーを送っても、霊界人は無視するだけです。“愛の絆”こそが、霊界人と地上人との間に、テレパシーによる交流を実現させることになるのです。
２種類のテレパシー霊能力と、テレパシー受信能力の向上
霊界にいる霊界人との間に、あるいは離れた所にいる地上人との間に「テレパシー現象」が成立するかどうかは、ひとえに受信者となる人間の「テレパシー受信能力」の有無にかかってきます。テレパシー現象は、通信を送る側とそれを受ける側があって成立しますが、実際にはそのほとんどが、受ける側の能力によって決定されます。「テレパシー受信能力」とは、相手（霊界の霊・地上人）からのテレパシーを受け、それを認識する霊能力です。テレパシー受信能力も他の霊能力と同様、霊体に備わった能力です。
この霊能力は、「サイキック・テレパシー能力」と「スピリチュアル・テレパシー能力」に分けられます。サイキック・テレパシー能力とは、霊界人の協力・導きなしにテレパシーを受信する能力です。それに対してスピリチュアル・テレパシー能力は、霊界人の協力・指導のもとで発揮される能力です。
「サイキック・テレパシー能力」では、地上人からのテレパシーをキャッチするだけで、霊界の“霊”からのテレパシーをキャッチすることはできません。それは霊界とは無関係なところで発揮される、きわめて次元の低いテレパシー能力です。多くの人々が体験している地上人同士のテレパシーは、これに相当します。
一方、「スピリチュアル・テレパシー能力」にも、さまざまなレベルがあります。レベルに応じて、キャッチできるテレパシーの範囲が決まります。スピリチュアル・テレパシー能力のレベルは、霊能者の「霊性」によって決定されます。霊性の高い霊能者の場合には、高級霊からのテレパシーを受信することができますが、そうでない霊能者の場合には、その霊性に見合ったレベルの霊からのテレパシーを受けられるにすぎません。霊性が発達するにつれて、キャッチできるテレパシーの幅が広がるようになります。霊性の向上にともなって、より進化した霊からのテレパシーを受信することが可能となるのです。
このように霊能者の霊性と、テレパシーを受信できる範囲は比例しています。
テレパシー現象において、注意すべき点があります。それは上図の一番右に示した“憑依”にともなう“低級霊”からのテレパシーです。地上人は憑依状態に陥ると霊的感受性が敏感になって、テレパシーの受信能力が一時的に高まります。低級霊は、そうした状態を見逃しません。邪悪なテレパシーを送って地上人を混乱させ、トラブルを発生させるようになります。
“テレパシー”は、さまざまな心霊現象の土台
テレパシーは、他の心霊現象と深い関わりを持っています。なぜならテレパシーは、さまざまな心霊現象の土台を形成している不可欠な要素だからです。これは、テレパシーがなければ心霊現象の多くは発生しない、ということを意味しています。テレパシーは、霊界における霊と霊のコミュニケーションの手段です。これによって霊同士がお互いを知り尽くし、情報を完璧に伝達し合い、エネルギーを与え合い、感情と知識を共有しています。距離と時間を超越して、すべてが一瞬のうちに相手に伝わるのです。
こうした霊界におけるコミュニケーションのほんの一部分が、「テレパシー現象」として地上世界で発生します。霊界では“テレパシー”によるコミュニケーションによって、心の要素のすべてが一体となって伝達されますが、地上ではそれが部分に分かれて出現することになります。そして霊視・霊聴・インスピレーションといった異なる「心霊現象」として発生することになるのです。こうした意味で、地上世界で発生するさまざまな心霊現象は「霊界のテレパシー現象のバリエーション」と言うことができます。次にそのバリエーションについて見ていきます。
まず、一般的によく知られている現象に“インスピレーション”がありますが、これは霊界の高級霊から送られてくる“テレパシー”に他なりません。高級霊の心の内容・思考の一部分がテレパシーによって直接、地上人に伝達されます。すると地上人は突如、素晴らしいアイディアが思い浮かんだように感じます。インスピレーションは“霊感”とか“霊的ひらめき”と言われることもありますが、それらは高級霊から伝達されたものであって、地上人から出たものではありません。地上人はただ、高級霊からのテレパシーを受信しただけなのです。
霊界人からのテレパシーが地上人の「潜在意識」によって受け止められ、言語化されて“脳”に伝えられると、霊の思念やメッセージの内容が言葉として表現されることになります。すると地上人には、「霊の声が聞こえた」というように感じられます。これが、すでに述べた「霊聴現象」です。また、霊界からテレパシーによって送られた映像が地上人にキャッチされ、「潜在意識」を経て顕在意識化されたものが「霊視現象」です。また、霊界の高級霊から未来の出来事の情報がテレパシーで送られ、それをキャッチしたものが「未来予知現象」「予言」ということです。
一方、霊界の高級霊が、大量の霊的情報や霊的知識を地上の霊能者にテレパシーで送り、これを地上の霊能者が地上の言語に変換したものが「テレパシー式霊界通信」です（＊これについては後で説明します）。
また、遠く離れた所にいる患者に、ヒーラーが治療エネルギーを送って病気を癒すことがあります。ヒーラーが患者に意識を向けると、その瞬間にテレパシー通路（霊的パイプ）が形成され、それを通じて治療エネルギーが届けられることになります。霊的な治療エネルギーが瞬時に相手に伝わるのです。これが「遠隔ヒーリング」です（＊これについても後で説明します）。
「テレパシー現象」に関する実験・研究――〈１〉
テレパシーは、スピリチュアリズム初期の心霊研究の時代から、すでに研究対象とされてきました。1880年代には、テレパシーの研究は当時の一流の科学者たちによって盛んに行われました。マイヤースがこの不思議な現象を“テレパシー”と名づけた背景には、こうした動きがあったのです。
テレパシーの研究は、物理学者として世界中に名前が知れわたっていたオリバー･ロッジによって進められました。彼は、次のような手順でテレパシーの実験を行っています。目隠しをした一人の被験者の周りに、複数の参加者が集まります。その参加者から少し離れた所にロッジがいて、ある品物（カギ・本・ペンなど）を示します。参加者がそれを見てそのイメージを心の中に描き、それが被験者に伝わるように念じます。被験者はまず、自分が感じたことを口頭で説明し、次に目隠しを取ってから用紙にそれを描きます。こうした実にシンプルな実験によって、参加者の思い描いたイメージが、被験者の心に伝わっていることが明らかにされました。それと同時に、被験者は必ずしも伝達情報を映像の形で受信してはいないことも明らかにされました。
参加者が“カギ”を思い描き、それを“テレパシー”で被験者に送ると、被験者は“カギ”を感じたと言いますが、それを用紙に描かせると必ずしも送信者（参加者）が思い描いたカギと同じ形にはなりません。これは「テレパシー現象」には、送信者がイメージしたもの（送信者の印象）を被験者の「潜在意識」が受け取った後に、受信したイメージ（印象）を潜在意識が具体的な形につくり変えるというプロセスがあることを示しています。「イメージの受信→潜在意識による再構成→イメージの顕在意識化」というプロセスを踏んでいることが分かります。
これは、すでに見てきたテレパシーによる言語伝達のケースである「霊言現象」と同じプロセスです。ある人間が抱く一つのイメージ（心の内容）は“テレパシー”によって相手の心に直接伝わること、同時に、伝わったイメージは受信者の「潜在意識」によって加工されて“脳”に伝わり、顕在意識化されるということです。
ロッジは、物体だけでなく図形や色彩、そして感情や感覚といった人間の心の内容・心理現象のすべてが、心から心へと“テレパシー”によって伝わる事実を突き止めました。図形や色彩の伝達だけでなく、思念や感情もテレパシーによって相手に伝達されることが明らかにされたのです。
「テレパシー現象」に関する実験・研究――〈２〉
現在、テレパシー研究者としては、オリバー・ロッジやマイヤースよりも、Ｊ・Ｂライン博士（米国デューク大学・1980年没）の方がよく知られています。彼は、テレパシーに関して初めて科学的な実験研究をした人物として知られていますが、スピリチュアリズムの観点から見ると、「内容的にはロッジから大幅に後退した」と言わざるをえません。ライン博士は、自らの研究を科学的手法を用いて進めようとしましたが、それが逆に「科学として認められない」という結果を招くことになってしまいました。
ライン博士は、1930年代からテレパシーの研究を始めています。ライン博士は自分の学生を対象として、肉体の五感を用いずに直接、他人の心を読み取る能力（テレパシー能力）があるのかどうかを確かめようとしました。研究は４年にわたり、延べ10万人の学生の協力を得て行われました。この点では、科学研究としての条件を十分に満たしていると言えます。ライン博士は研究の結果、テレパシーは確かに人間の精神能力の一つであることを突き止めました。しかしこの結果が、現代科学にそのまま認められることはありませんでした。
ライン博士は、ＥＳＰカードによる実験を通じて、テレパシーの存在を科学的に実証しようとしました。しかし人間の心は物体とは異なり、環境や体調に影響され、厳密な意味での「科学的再現性」を実証することはできません。結果的に、テレパシーの存在を科学的に証明することはできませんでした。“テレパシー”という心理現象―「精神的心霊現象」を科学という物質的な方法で証明することには、初めから無理があります。厳密な「再現性」がないかぎり、科学はそれを科学的真実とは認めないからです。これまで偶然に発生したテレパシーの実例は数多くありますが、“唯物科学”の反論に対してテレパシーの存在を科学的に証明することはできませんでした。
その後の紆余曲折の過程を経て、超心理学は一応「学」としての立場を獲得することになりましたが、現在に至っても、ライン博士の実験がそのまま科学界に認められるようにはなっていません。その最大の理由は、「再現性」という科学的手法の大原則・条件を満たすことができない点にあります。
「テレパシー現象」に関する実験・研究――〈３〉
1974年、米国の超心理学者チャールズ・ホノートンは、ガンツフェルト状態に置かれた被験者を用いて、テレパシーの実験研究を行いました。ガンツフェルト（＊ドイツ語）とは、通常の感覚的な情報入力を一切排除して、被験者を内面的な集中状態に置くことです。雑音を完全に遮断して深い瞑想に入った状態、座禅における精神統一の状態と同じようなものと言えます。トランス状態（催眠状態）や睡眠状態とは異なり、雑音から解放された精神の集中状態です。
研究により、こうした状態下でさまざまな幻覚が引き起こされることが発見されました。そしてガンツフェルト状態に置かれて受信能力が高まった被験者を用いて、テレパシーの実験研究が進められました。その結果、さまざまな情報が心から心へと伝達されている事実――すなわち「テレパシー現象」の実在が確かめられました。
しかしこの実験は、超心理学界内部に激しい賛否の論争を巻き起こすことになりました。
心霊現象としての“テレパシー”は実際に存在します。テレパシーが存在する以上、どのような反論があってもそれが事実であることには変わりありません。科学的に証明されなくても、事実は真実なのです。テレパシーの実験研究は、今日に至るまでずっと続けられてきましたが、テレパシーの本質が「心霊現象」であるため、科学的な認証を得ることができずにいます。しかし、それは大した問題ではありません。テレパシーの存在を科学が認証できないのは、「科学サイドの証明範囲が限定されている」ということにすぎないからです。
「テレパシー現象」に関する実験・研究――〈４〉
テレパシーの研究は科学分野だけでなく、他の分野でも進められてきました。特に軍事関係の分野で研究されるようになりました。唯物主義の社会主義国家でテレパシーが盛んに研究されていることが報道され、世界中の人々を驚かせることになりました。
ソ連が積極的にテレパシーの研究に乗り出した背景には、米国原子力潜水艦ノーチラス号によるテレパシーの実験があるとされています。1959年７月、ノーチラス号を潜航させて、２千キロ離れた米国のメリーランド州フレンドシップとの間で、ＥＳＰカードを用いたテレパシー送信実験をして、地上側の受信者がそれを70％の確率で受信したというものです。電磁波の通じない海中の潜水艦との通信実験の成功は、敵対関係にあったソ連にショックを与えました。この話が本当なら、まさにテレパシーの存在が軍事関係者によって証明されたことになります。
しかし後になって、この実験報告はある人間による作り話であることが発覚しました。軍事競争を背景とした陰謀だったのでしょうか？ あるいは単なる悪ふざけだったのでしょうか？ 真相は明らかにされていませんが、これが軍事関連分野のテレパシー研究を推し進めることになったのは事実のようです。
1960年代の初期、ソ連では超心理学研究が盛んに行われましたが、その中でワシリエフ教授（レニングラード大学）による研究がよく知られています。博士は、レニングラードと1700キロ離れた黒海沿岸のセヴァストポリとの間で「テレパシーによる催眠暗示が可能かどうか」を確かめる実験を行っています。結果は260回のテストで成功は194回、失敗は27回でした。この実験は電磁波の影響を遮断して、距離を少しずつ延長していきました。その結果、テレパシー現象の発生には距離は影響しないことが明らかにされました。この実験がきっかけになって当時のソ連国内に“超能力ブーム”が巻き起こりましたが、政治的なイデオロギーに抵触する可能性を持った研究に異義が唱えられ、下火になっていきました。
ソ連と同様、共産圏の中国でもテレパシーに関係する実験が行われています。中国では、気功における「テレパシー現象」を確認する実験が行われました。その実験は1988年、北京精華大学で、重慶中医研究所所属の気功師を被験者にして進められました。広州にいる気功師が、２千キロも離れた北京の精華大学の研究室に向けて外気を30分ずつ、数回にわたって送りました。そして精華大学の分析センターの酵母ＲＮＡ水溶液の変化が観察・測定されました。その結果、テレパシーによって外気を送られたサンプルの酵母ＲＮＡには、明らかな“紫外線の吸収量の低下”が観測されました。気功師から放たれた外気が、２千キロも離れた所にあった存在物に影響をもたらす事実が確認されたのです。これは“外気”というエネルギーが遠方にまで届き、対象物に影響を与えたということを示しています。
この実験結果が発表されると、唯物主義思想に反するものとして、研究自体を排除すべきという批判が巻き起こりました。こうしたテレパシーに関する超能力は中国では“特異功能”と呼ばれますが、それは中国国内で大きな波紋を呼び、現在に至るまで学界内部で激しい論争が繰り広げられています。