「精神的心霊現象」の特色

霊能者（霊媒）の精神次元に発生する心霊現象を「精神的心霊現象」と言います。霊視現象や霊聴現象・透視現象・テレパシー現象などは、その代表的なものです。

物理的心霊現象は霊能者の外部の世界で発生し、その場に居合わせた人々全員がその現象を認識することができます。それに対して、精神的心霊現象は霊能者の内部（精神次元）において発生するため、周りの人間が直接的に認識することは不可能です。霊能者が本人の霊能力で見たり、聞いたり、直感したものを間接的に知ることしかできません。この点が「精神的心霊現象」の特色ですが、それは同時に「精神的心霊現象」の最大の弱点にもなります。

ニセ霊能者は、他人には真偽の判断ができないのをいいことに、実際には霊の姿が見えていないのに見えた振りをします。霊の声が聞こえていないのに聞こえた振りをし、分かるはずがない相手の“前世が分かった”などとウソをついて人々を騙します。こうしたニセ霊能者は、口から出まかせを言う占い師と何も変わりません。テレビの心霊番組に出演してゲストの前世や背後霊を指摘するスピリチュアル・カウンセラーや、アーカシックレコードをリーディングできるなどと言う自称霊能者は、この手の“ニセ霊能者”です。

「精神的心霊現象」は、人間の霊体に備わっているさまざまな能力によって引き起こされます。「物理的心霊現象」の発生メカニズムを説明するキーワードは“エクトプラズム”ですが、「精神的心霊現象」の発生メカニズムを説明するキーワードは「霊体能力」です。霊能者は自分の「霊体能力」を発揮して、精神的心霊現象を引き起こします。しかし大半の現代人は、そうした霊体の能力が肉体の内に閉じ込められ、発揮できなくなっています。

太古には多くの人間が、精神的な心霊能力（霊体能力）を日常的に発揮していました。ところが時代が進み物質文明が発達すると、人々は物質への志向を深めていきます。そしてそれにともなって霊体能力を退化させ、やがて精神的心霊現象は特殊な現象になってしまいました。現在では「霊体能力」は、一部の霊能者だけが発揮しているにすぎません。しかし本来は、すべての人間が精神的心霊現象を引き起こす素質を持っています。誰もがその能力を潜在的に身につけており、霊能者になれる可能性があるのです。どのような人間でも訓練しだいである程度まで「霊体能力」を発揮できるようになり、霊能者になれるということです。

サイキック・レベルとスピリチュアル・レベルの「精神的心霊現象」

精神的心霊現象には、２種類あります。霊能者の「霊体能力」によって引き起こされる現象と、霊能者の霊体能力を霊界の“霊（スピリット）”が利用することで引き起こされる次元の高い現象です。前者を「サイキック・レベルの精神的心霊現象」、後者を「スピリチュアル・レベルの精神的心霊現象」と言い、両者には明らかな違いがあります。

例えばサイキック・レベルの霊視能力（＊正確にはこれを「透視能力」と言います）でも、普通の人間の目には見えない対象物（＊遠く離れた所にいる人物や遠方の建物・風景、あるいは人間の体内など）を見ることができます。しかし、霊界にいる霊（スピリット）の姿を見ることはできません。それに対して霊界からの援助を得た「スピリチュアル・レベルの霊視能力」では、霊の姿を認識することができます。スピリチュアル・レベルの霊視によって霊能者は、他界した人間の特徴や様子を地上の遺族に伝え、死後にも愛する人が生きていることを証明することができるのです。

サイキック・レベルの精神的心霊現象は、「人間には未知の能力がある」「唯物的人間観は間違いである」ということを示すことはできますが、霊魂や死後の世界の存在を証明することは不可能です。サイキック・レベルの精神的心霊現象の多くは、人々の好奇心を喚起することだけに終わってしまっています。その意味で“スピリチュアリズム”では、霊界サイドからの計画的な働きかけがないサイキック・レベルの精神的心霊現象には、ほとんど霊的価値を置いていません。霊体に備わっている能力の存在を証明することで、唯物的人間観（＊「人間は肉体だけの存在である」とする考え方）の間違いを明らかにすることはできても、肝心な霊魂説の証明にまで歩を進めることはできないからです。

スピリチュアリズム初期の心霊研究の時代に設立された「心霊研究協会（ＳＰＲ）」の流れをくむ超心理学研究（※１）では、長い間、ＥＳＰ（※２）に関する科学的研究を続けてきました。しかしその研究は、いつまでたっても霊魂説の証明に至ることはなく、ほとんど意味のない結果にとどまっています。

「スピリチュアル・レベルの精神的心霊現象」の目的――霊魂説の証明・死後の生命存続の証明

霊界人は地上の霊媒・霊能者に働きかけて、霊視・霊聴・テレパシー・未来予知といった「スピリチュアル・レベルの心霊現象」を演出しますが、その目的はどこにあるのでしょうか。何のために霊界サイドは苦労して、こうした精神的心霊現象を起こすのでしょうか。

霊界の高級霊が、わざわざスピリチュアル・レベルの精神的心霊現象を発生させるのは、そこに特別な目的があるからです。その目的とは――「人間は死後もあの世で生き続ける」という事実を証明することです。すなわち“死後存続の証拠”を地上人に示して、「霊魂説」の正当性を証明することが精神的心霊現象の主な目的なのです。

霊能者が一切知るはずがない死者に関する情報を地上の遺族に伝えることで、死者が死後も生き続けていることが明らかになります。遺族が「まさに死んだ本人に違いない」と思うような証拠を提示するなら、“死”は一般に信じられている永遠の別離ではなく、住む場所が替わるだけの出来事であることが理解されるようになります。それによって遺族は、死別の悲しみが癒されるようになります。「霊魂説の証明」には、愛する人との死別を悲しむ遺族の心を癒すという霊的な意味もあるのです。

こうした「霊魂説の証明」「死後の生命存続の証明」という目的を達成することは、サイキック・レベルの精神的心霊現象では不可能です。「霊魂説」を証明するためには、どうしてもスピリチュアル・レベルにまで引き上げなければなりません。死者の姿を見てその特徴を伝え、死者の声を聞いて当事者しか知り得ない情報を地上の遺族に伝えるためには、スピリチュアル・レベルの精神的心霊現象でなければならないのです。精神的心霊現象は、霊界からの働きかけによってサイキック・レベルからスピリチュアル・レベルに高められたとき初めて、その目的を達成することができるようになります。その意味で霊魂説の証明に結びつかない心霊現象や心霊研究には、ほとんど霊的価値はありません。

初歩的な段階の「精神的心霊現象」は、半物質次元で引き起こされます。これが「サイキック・レベルの精神的心霊現象」ですが、そこに霊界のスピリットの働きかけが加わることによって「スピリチュアル・レベルの精神的心霊現象」へと質的にレベルアップします。精神的心霊現象はスピリチュアル・レベルにまで至ったとき、真の意味で人類の霊的成長に貢献することになるのです。

スピリチュアリズムの到来によって、今後、地球人類の霊性が向上するにともない、「スピリチュアル・レベルの精神的心霊現象」が当たり前の現象になっていきます。それを通じて「霊魂説」が、地球人類の常識になっていくのです。

死別の悲しみを利用した“魂の救済”

精神的心霊現象の目的は「霊魂説の証明」にあります。それを別の言葉で言えば、精神的心霊現象は「死別の悲しみを利用して、地上人の魂を救済しようとする手段である」ということになります。愛する人との死別は、地上の遺族に人生最大の悲しみとショックを与えますが、それは同時に、霊的世界への関心を喚起するきっかけになるのです。

神は人間に対して、一時的な地上人生を歩むための道具として物質の身体（肉体）を与えました。“死”とは、その肉体を脱ぎ捨てることにすぎません。死によって肉体を脱ぎ捨てることは、ごく当たり前の自然現象なのです。こうした人間についての基本的知識を知っている人がきわめて少数であるという事実は、地球人類全体が恐ろしいほどの「霊的無知」の状態にあることを意味しています。知っていて当然の「霊的知識」がないために死を恐れ、愛する人との死別を悲しむことになります。死別を悲しむことは現在の地球上では常識となっていますが、その常識自体が実は、真実から大きくかけ離れているのです。

死別の悲しみや苦しみは、人間が「霊的存在」であることを自覚させるうえで、またとないきっかけになります。多くの地上人が“死”という厳粛な自然現象、避けられない宿命を前にして霊的世界に関心を向けるようになります。“死”は、霊的なものに目を向けさせる良いチャンスになるのです。死別の悲しみが、それまで自覚することのなかった「霊的意識」を目覚めさせることになるのです。それが「霊的覚醒の時」です。

霊界から見ると死別の悲しみは、物質世界の中にどっぷり浸かって、霊的世界のことを全く知らなかった地上人に「霊的覚醒」をもたらすとても貴重な体験と言えます。霊界サイドは精神的心霊現象を通して死者が死後も生き続けていることを証明し、地上人に「霊的覚醒」をもたらそうとします。まさにその点にこそ、精神的心霊現象が存在する意味があるのです。スピリチュアリズムでは、「霊魂説の証明」という大目的の達成に貢献しない心霊現象には価値を認めません。霊界からの働きかけを受けて発生する「スピリチュアル・レベルの精神的心霊現象」は、サイキック・レベルの精神的心霊現象とは、その重要性において天と地ほどの違いがあるのです。

「精神的心霊現象」の啓蒙効果

スピリチュアリズムの初期に盛んに演出された「物理的心霊現象」には、唯物論者で知識人の代表である当時の科学者たちに「霊魂説」を認めさせるという目的がありました。それを通して「霊的真理の伝道」の支援体制を整えようとしたのです。当時の科学至上主義の風潮の中では、物理的心霊現象は「霊魂説」の証明法として非常に有効でした。「霊魂説」という最も基本的な霊的真理に対する啓蒙効果は絶大でした。

とは言っても、誰もが気軽に交霊会に参加できたわけではありません。交霊会の対象となったのは、一部の人間に限られていました。しかも「物理的心霊現象」を引き起こすには、かなりの霊的エネルギーが必要とされるため、それにふさわしい霊媒を確保すること自体が大変だったのです。こうした点から、驚異的な物理的心霊現象による「霊魂説」の啓蒙範囲は、さほど広くはありませんでした。

それに対して「精神的心霊現象」は、物理的心霊現象のように膨大な霊的エネルギーを使用することなく、死者の死後存続の証拠を示すことができます。また霊能者の確保においても、物理的心霊現象ほど難しくはありません。そのため精神的心霊現象を用いれば、より広範囲の人々に向けて「霊魂説」の啓蒙を進めることができるのです。

次章（３）で「スピリチュアル・ヒーリング」について説明しますが、スピリチュアル・ヒーリングは地上人の病苦を利用して霊魂説を証明し、人々の「霊的覚醒」を促そうとするものです。「スピリチュアル・レベルの精神的心霊現象」も、それと同じ目的（＊霊的覚醒を促す）を持っています。物理的心霊現象は、一部の専門家を対象として霊魂説の啓蒙運動を展開してきましたが、精神的心霊現象とスピリチュアル・ヒーリングによって、さらに広範囲の人々を対象とした啓蒙運動が可能となったのです。

「精神的心霊現象」にともなう、さまざまな問題

霊的真理が行きわたっていない現在の地球上では、精神的心霊現象に関わるさまざまな問題が発生するようになっています。それは“ニセ霊能者”による不正・詐欺という問題です。

ニセ霊能者は、実際には死者の姿が見えていないのに適当にその様子を語り、死者の声が聞こえていないのに死者からのメッセージと称してデタラメを伝えます。一般の人々は霊能者が語る言葉の真偽を判断できないのをいいことに、口から出まかせの“ウソ”を並べ立てるのです。

困ったことにニセ霊能者のもとに集まる人々も、自称霊能者同様にいい加減な人間であることが多いのです。彼らはニセ霊能者のウソをまともに信じ込み、崇拝するようになります。ニセ霊能者が不正を行う目的は、金銭や名声・人気といったこの世の利益を獲得することにあります。ニセ霊能者は、物欲に駆られて心霊現象を悪用しているのです。

ニセ霊能者のウソは、丹念に検証すればすぐに明らかになるのですが、一般の人々がそこまでするようなことはありません。霊視や霊聴などの「精神的心霊現象」は、霊能者が語る死者に関する情報が“客観的事実”と一致するかどうかによって、その真実性が決まります。精神的心霊現象に対しては、常にこうした観点からの検証がなされなければなりません。しかし実際には、主導権は決まって霊能者側が握っており、相談者が霊能者の言葉の真偽をチェックするようなことはほとんどありません。「相手に失礼ではないか」と気をまわしたり、相手の反応を恐れて「悪く思われはしないか」などと考えてしまいます。その結果、ニセ霊能者に騙され続けることになるのです。

ニセ霊能者を見抜く簡単な方法は、報酬に対する姿勢を観察することです。霊能者の仕事は本来、神から与えられた“神聖な能力”を人々の幸せのために用いる純粋な奉仕の行為であるべきです。利他愛に基づく「無償の奉仕活動」でなければなりません。奉仕精神のない霊能者は必ず、自己の欲望に翻弄され道を誤ることになります。多額の報酬を要求するような霊能者は、すべて“ニセモノ”と断じて間違いありません（＊こうした「ニセ霊能者の不正」については、第５部「霊能力と霊能者」で詳しく取り上げます）。

現在、霊能者に対する当たり前のチェックが行われていないため、ニセ霊能者は野放し状態となっています。テレビなどのマスメディアや出版社は、詐欺師を摘発するどころか、ニセ霊能者を利用して自分たちの利益を追求しています。自ら率先してニセ霊能者と結託し、大衆を騙しているのです。その結果、ニセ霊能者の不正行為は社会の隅々にまで蔓延してしまいました。こうした不正をなくすためには、一般の人々に「霊的真理」が広く普及することが必要です。それと同時に、霊能者を検証して不正を摘発する公的な研究機関の設置が求められます。

「精神的心霊現象」の種類

霊能者が霊体の能力を用いて、通常では知ることができないさまざまな霊的情報を得ようとするのが「精神的心霊現象」です。霊体には、肉体の五感に相当する感覚器官（目・耳・鼻・触覚など）や、コミュニケーション能力が備わっています。霊能者は、こうした霊体の能力を肉体次元でも発揮することができるのです。

霊体には多種類の能力があるため、「精神的心霊現象」は当然、それに相応した数だけ存在することになります。最もポピュラーな精神的心霊現象は、霊視現象です。それ以外にも透視現象や霊聴現象・未来予知現象・テレパシー現象・サイコメトリー現象などがあります。