「サイキック・ヒーリング」の特色

スピリチュアル・ヒーリングとは、霊的・精神的エネルギーを用いて行う治療法です。現在の地球上には、スピリチュアル・ヒーリングに分類されるさまざまな治療法があります。それらのあるものは伝統医学や民間療法に、またあるものは新興宗教に、そして代替医療やホリスティック医学に属しています。

現代医学では、もはや打つ手がないと見放された患者が最後の頼みの綱としてスピリチュアル・ヒーリングを受けたところ、奇跡的に病気が治癒したというような話をよく耳にします。しかしスピリチュアル・ヒーリングは、現代医学からは正式な医学として認められてはいません。一方、20世紀後半に起こってきた「ホリスティック医学」においては、その価値が認められ、評価されるようになってきました。

スピリチュアル・ヒーリングで治療のために用いる霊的エネルギーは、大きく２つに分類されます。一つは霊界のスピリット（霊医）が開発した治療エネルギー（スピリット・エネルギー）、もう一つは地上のヒーラーの身体に存在する生体エネルギーです。前者の霊界のスピリットがつくり出した純粋な霊的治療エネルギーを用いる治療法を「スピリット・ヒーリング」と言い、これについてはすでに説明しました。スピリット・ヒーリングはきわめて特殊なスピリチュアル・ヒーリングで、全体の５％にも及びません。一般にスピリチュアル・ヒーリングと言われるものは、このスピリット・ヒーリング以外のものを指します。

95％以上を占める「一般のスピリチュアル・ヒーリング」では、地上のヒーラーの「生体エネルギー」を治療エネルギーとして用います。ヒーラーの生体エネルギーには、２種類あります。ヒーラーの霊体にある「サイキック・エネルギー」と、ヒーラーの肉体にある「マグネティック・エネルギー」です。サイキック・エネルギーを用いるものを「サイキック・ヒーリング」と言い、マグネティック・エネルギーを用いるものを「マグネティック・ヒーリング」と言います。

ここではサイキック・ヒーリングについて見ていきます。サイキック・ヒーリングの特色を一言で表現するなら、「ヒーラーの“霊体エネルギー”を用いる治療法」ということになります。

霊的エネルギーと病気の関係

大半の地上人は「霊的エネルギー」を枯渇させたまま生活しているため、人間を構成する「霊」「精神（霊の心）」「霊体」「肉体」が、不活性・不調和の状態に陥っています。現代人の多くが、肉体には異常が見られなくても、身体全体としてはすでに病気の前段階である“未病状態”に置かれています。その原因を一言で言えば――「霊的エネルギーの不足」と「霊的エネルギーの循環異常（不順）」ということになります。霊的エネルギーの摂取が十分でないうえに、その霊的（生体）エネルギーの循環が異常な状態にあるのです。

物欲に偏った意識、前世でつくったカルマ、霊性のレベル、さまざまなストレス、不自然なライフスタイルなどが、こうした霊的エネルギーの循環異常をつくり出しています。患者の大半が「生体エネルギー」――すなわち肉体の“生命力”を低下させているのです。

神は、人間が健康的に地上生活を過ごし、たとえ病気になっても健康を取り戻して地上人生を全うできるようなシステムを与えています。素直な目で観察するなら、誰もが人体に備わっている生命活動を維持するための仕組みの素晴らしさ・精妙さに感嘆するようになります。そこに、人智を超えた自然界（大霊・神）の叡智を感じざるをえなくなります。私たち人間の肉体には、健康的に地上生活を送るための、ありとあらゆる配慮がなされています。その中で特に重要なものが「３つの生体維持システム」です。これは“ホメオスタシス・自然治癒力・免疫システム”という３つの機能のことです。これらの働きによって人間は、健康を保って地上で生きていくことができるようになっています。

しかし実際には、地上世界には病気が蔓延しており、病人があふれています。そうした実情は、「地上人がいかに不自然な生き方をし、肉体を酷使しているか」ということを示しています。大半の地上人は「生体エネルギー」を枯渇させ、神が与えてくれた健康を維持するためのシステムを十分に働かせることができずに病気になっています。“病気”とは、生体エネルギーを長期にわたって枯渇させたために、元々備わっている生体維持システムが正常に機能しなくなった結果、発生するものなのです。

サイキック・ヒーリングの“治療メカニズム”

先に述べたスピリット・ヒーリングは、患者の「霊」を含むすべての構成要素に外部からエネルギーを与えて身体全体を活性化します。それによって全身の不調和状態を取り除き、病気を癒します。スピリチュアル・ヒーリングで用いる治療エネルギーの中で、患者の「霊」の領域にまで達し、そこを活性化して正常化することができるのは、霊界の医者によってつくられる「スピリット・エネルギー」だけです。

一方、サイキック・ヒーリングは、地上のヒーラーの霊体にある「サイキック・エネルギー」を治療エネルギーとして患者に与えて治療をします。そのサイキック・エネルギーは、患者の霊体と肉体の接点から患者の身体に入っていきます（＊この接点が従来“チャクラ”と言われてきました）。患者の「霊体」と「肉体」に取り込まれたサイキック・エネルギーは、この２つの身体のエネルギーレベルを引き上げます。霊体に入ったサイキック・エネルギーの一部分は、上昇して「霊の心」に入っていきます。また、霊体を活性化させたサイキック・エネルギーは、霊体と肉体の接点を通って肉体にも流れ込みます。こうしてヒーラーから与えられたサイキック・エネルギーは、患者の肉体のエネルギーレベルを高め、活性化させることになります。これが「サイキック・ヒーリング」における治療エネルギーの流れです。

サイキック・ヒーリングを受けると、大半の人がこれまでに体験したことがないような身体の軽さやエネルギッシュな感覚を味わいます。また、人によっては長年患っていた病気が瞬時に癒されるようなことも起こります。これはヒーラーのサイキック・エネルギーが患者の肉体のエネルギーレベルを引き上げ、それまで低下していた生体維持システムが突如、活発に働くようになったためです。患者は奇跡的治癒が起きたと大喜びしますが、その状態は長続きしません。

「サイキック・ヒーリング」の“治療結果”と“治療効果”

ヒーラーから与えられたサイキック・エネルギーは、患者の「霊体」と「肉体」という２つの領域に入り、それぞれのエネルギーレベルを引き上げます。時にはサイキック・エネルギーの一部が、霊体から「霊の心」という一つ次元の高い領域に入っていくこともありますが、それはごく稀なケースです。

大半の患者は、霊体と肉体のエネルギーを枯渇させています。そこに外部からエネルギーが補給されるため、生体エネルギー（生命力）が高まった患者は不快な症状が消え、身体が軽くなったように感じるのです。生体維持システムがよく働くようになって、一時的に病気が癒されるようなことも起きるのです。そうした患者が現代医学の検査を受けると、治癒を示す結果が出ることもあります。

サイキック・ヒーリングによって、しばしば目覚しい反応が引き起こされますが、サイキック・ヒーリングでは「霊」と「霊の心」という上位の領域は活性化されないため、時間の経過とともにいったん良くなった症状が再び現れるようになります。病気のぶり返しが起きるのです。サイキック・ヒーリングでは身体全体を活性化させることはできないため、病気が完治することはありません。多くの場合、霊体や肉体の部分的治癒にとどまります。

「サイキック・ヒーリング」の実例

ヒーラーの「サイキック・エネルギー（霊体エネルギー）」を治療エネルギーとして用いる治療法が「サイキック・ヒーリング」です。この定義に従うならば、生体エネルギー療法として分類される伝統医学の療法や民間医療・代替医療の多くが、サイキック・ヒーリングに属することになります。その代表格が、中国の“気功”や日本人によって創始された“レイキ”です。また、世界各地で行われてきた“シャーマニズム治療”や日本の新興宗教で行われてきた“手かざし”や“除霊治療”、そしてアメリカ人Ｄ・クリガーによって考案された“セラピュータッチ”などもサイキック・ヒーリングに含まれます。

歴史的に最も有名な「サイキック・ヒーリング」として、イエスによる“奇跡治療”を挙げることができます。聖書には、病人がイエスの体に触れただけで病が癒されたという記述がしばしば登場します。これはイエスの奇跡の業が「サイキック・ヒーリング」であったことを示しています。また、中世ヨーロッパ（＊特に英国とフランス）で800年間にわたって行われてきた国王による“ロイヤル・タッチ”も、このサイキック・ヒーリングです。

さまざまなサイキック・ヒーリングがありますが、これらは形式は少々異なっていても、「ヒーラーのサイキック・エネルギーを患者に与えることで病気を癒す」という点では共通しています。ヒーラー自身が有する生体エネルギーには「サイキック・エネルギー」と「マグネティック・エネルギー」があり、状況によってはこの２つを同時に与えることもあります。

サイキック・エネルギーもマグネティック・エネルギーも、ヒーラーの身体内をめぐっているだけでなく、ヒーラーの体外にも放射されています。それがよく言われる“オーラ”です。手かざしなど患者の身体に直接触れない治療では、オーラを投射することで治療エネルギーを患者に与えます。

神のエネルギーを直接、治療に用いるというニセヒーラーのウソ

霊的知識の乏しいヒーラーは、しばしば「自分の治療は神のエネルギーを直接用いるため治療効果が高い」と宣伝します。しかしこの説明は、霊的事実に照らしてみたとき間違っています。明らかに“ウソ”の自己ＰＲです。“神のエネルギー”は宇宙に充満しており、人間をはじめあらゆる生命体はこれを取り入れて生命活動をしていますが、神のエネルギーをそのまま「治療エネルギー」として用いることはできません。神のエネルギーは「生体エネルギー」に転化して初めて、実際に治療エネルギーとして用いることが可能となるのです。神のエネルギーは確かにヒーラーに取り込まれますが、それは何もヒーラーに限ってのことではありません。

治療エネルギーの素材である神のエネルギーは“蒸留水”に、治療エネルギーはその蒸留水に治療効果のあるさまざまな成分を加えた“薬”に譬えることができます。スピリット・ヒーリングの場合には“神のエネルギー”を原料として、スピリット（霊医）による“薬の調合”のような高度な知的作業を通じてつくられるのです。

それに対してサイキック・ヒーリングでは、ヒーラー自身の「生体エネルギー」を治療エネルギーとして使用します。サイキック・ヒーラーが他のヒーリングとの差別化をはかるために、「自分は神のエネルギーを治療エネルギーとして使っている」と豪語しても、実際に用いられるのはヒーラーの生体エネルギー（＊霊体の「サイキック・エネルギー」か、肉体の「マグネティック・エネルギー」）にすぎません。サイキック・エネルギーもマグネティック・エネルギーも、元をたどれば“神のエネルギー”ということになりますが、それがそのままヒーラーを通過して治療エネルギーとして用いられるようなことはないのです。

世の中には、特殊なペンダントなどをヒーラーに持たせ（高額で買わせ）、それが「神のエネルギーの受容を可能にする」というような全く根拠のない子供騙しの理屈をつけて、自分たちの特別性・優秀性を主張しているスピリチュアル・ヒーリングのグループがあります。そしてそこに集まる人間の多くが、その幼稚な理屈を鵜呑みにして、自分が本当に神の治療エネルギーを中継するヒーラーになったかのように思い込んでいます。

しかし、それは事実ではありません。「神のエネルギーを用いたヒーリングによって病気が治った」と、どれほど声高に主張しても、それは神のエネルギーをストレートに流したのではなく、ごく普通のサイキック・ヒーリングをしたにすぎません。

サイキック・エネルギーを与えすぎて、へとへとになるヒーラー

サイキック・ヒーリングの場合、ヒーラーは自分の「生体エネルギー」を患者に与えて治療をするため、エネルギーを消耗してへとへとになってしまうことがあります。「何とか病気を治してやりたい、早く治してやりたい」と気負って無理をしたりすると、自分の生体エネルギーを一度に与え過ぎて破綻してしまいます。ヒーラーは常に“神のエネルギー”を自らの内に取り入れる努力をしていないと、治療によって生体エネルギーを使い果たし、すり切れてしまうのです。

ヒーラーや治療師には、大気中から“霊的エネルギー（神のエネルギー）”を取り入れるための瞑想や祈りが不可欠です。霊的エネルギーをしっかりと補給し、自分の健康を維持するのに必要な生体エネルギーを確保したうえで、余ったエネルギーを患者に与えるというのが「サイキック・ヒーリング」や「マグネティック・ヒーリング」の鉄則です。

実はこれはヒーラーや治療師だけでなく、病人や老人を相手にする仕事に携わっている人たち全般に当てはまることなのです。医者や看護師・介護福祉士・カウンセラーなどは、相手（患者）と接する際に、自分の「生体エネルギー」を無意識のうちに与えることになります。特に霊的に敏感な体質を持っている人の場合には、生体エネルギーを相手に奪われるような状況に置かれ、自分自身の生命力が急速に枯渇することになってしまいます。医者や看護師・カウンセラーといった人たちは絶えず、精気を失うような状態にあるのです。相手が精神病患者や衰弱した老人などの場合には、より多くの生体エネルギーを消耗することになります。まさに“身を削って相手を癒す”ことになっています。医者や看護師やカウンセラーは、ある意味でサイキック・ヒーラーと言えるのです。

無意識のうちに「スピリット・ヒーリング」をしているケース

「サイキック・ヒーリング」は霊界にいる霊の援助を受けずに、地上のヒーラーの能力だけを用いて行う治療です。この点でサイキック・ヒーリングは、「スピリット・ヒーリング」とは根本的に異なっています。

サイキック・ヒーリングを行うヒーラーのほとんどが、ヒーリングによって生活の糧を得ています。商売としてヒーリングを行っているのです。それに対してスピリット・ヒーリングは、商売としてではなく“純粋な奉仕活動・無償の利他愛の実践”として行われています。スピリット・ヒーリングの目的は、金儲けではありません。金儲けが目的のヒーラーは、サイキック・ヒーリングはできてもスピリット・ヒーリングはできません。霊医の応援を得られないからです。

しかしサイキック・ヒーラーの中にも、利他的な精神・純粋な奉仕精神を持った人間がいます。人々を病気の苦しみから救ってあげたいとの思いで治療にあたっている人間がいます。こうした良心的なヒーラーは、たとえ掲げている看板が気功や手かざしであっても、霊界の医者たちの関心を呼び、その応援を得られるようになります。ヒーラーの奇特な自己犠牲の精神が、いつの間にかサイキック・ヒーリングを「スピリット・ヒーリング」へと転換させることになるのです。

霊界には、スピリチュアリズムへの貢献に結びつかないサイキック・ヒーリングに価値を見いだすような霊は、一人もいません。心から人助けを願う奉仕精神に恵まれたヒーラーは表向きはサイキック・ヒーリングであっても、多くの霊たちの応援を得て、スピリット・ヒーリングを行うことが可能となるのです。

「サイキック・ヒーリング」の問題――悪質なヒーラー養成セミナーとニセヒーラーの存在

スピリチュアリズムでは、霊界の人々の援助を得られないような霊能力やヒーリング能力にはあまり価値をおきません。本物のスピリチュアル能力は、長年にわたる内面向上の努力と、日常の厳しい自己コントロールを通して初めて獲得されるものです。本物のスピリット・ヒーラーが少ないのは、そのためです。

世の中には霊能力の開発やヒーリング能力の養成を謳ったセミナーやワークショップが至る所で開かれています。少し前には気功がブームとなり、カルチャー教室は大盛況でした。こうしたセミナーのほとんどは、神秘的なものに対する人々の興味や好奇心に付け込んだ悪質な商業主義からの金儲けであり、それがさまざまな社会問題を引き起こしています。

超能力や霊能力に関心を持つことが悪いというわけではありませんが、問題は、大半の人間が好奇心レベルにとどまっているということです。そのため悪質なセミナーやニセ・ヒーラーに騙されることになります。世の中には異常なほど、“自分もヒーラーになりたい”と思う人間がいます。そうした野心を持った人間は、霊能者養成セミナーやヒーラー養成セミナーの“絶好のカモ”になってしまいます。彼らは、霊能力やヒーリング能力を身につけるためなら高額のセミナー料も厭いません。しかし多額の金銭を払っても、結局、本物の霊能力やヒーリング能力を身につけることはできません。

セミナーの参加者の中には、霊的に敏感な人間（霊媒体質者）が一定の割合でいるものです。そうした人間が普段したことのない瞑想や精神統一をして意識の集中をはかると、短時間で霊的反応が現れるようになります。また誰もが、一定の時間、興奮状態・極度の緊張状態の中に置かれると、日常味わったことのない霊的感覚を体験するようになります。こうした初歩的な「心霊現象」が次々と現れるため、参加者はますますセミナーにのめり込むようになり、洗脳が加速することになります。そして“霊能力が開発された”“ヒーリング能力が得られた”と本当に思い込むようになります。しかしこうした初歩的な霊的反応は、何も特別なことではありません。程度の差はあれ、誰にでも生じることなのです。そのセミナーやグループだからこそ発生するというものではありません。

一方、大半のセミナーにはさまざまなコースが設けられていて、セミナー料が違っています。高額のコースに参加すれば長時間の講習や実習を受けられ、特別な霊能力・ヒーリング能力が身につくといった説明がなされます。そしてセミナーが終わると認定書やペンダントやネックレスが与えられ、それが“神のエネルギーを受ける秘法である”などと告げられます。「霊的事実」に照らしたとき、こうしたセミナーはすべてインチキです。“霊能者になりたい”“ヒーラーになりたい”という低俗な野心・自己顕示欲を利用した人騙しにすぎません。お金をたくさん払えば霊能力がつくといった理屈は、ペテン以外の何ものでもありません。残念ながら現在、巷で見られるセミナーのほとんどがこうした悪質なものなのです。

先ほども言いましたが、「サイキック能力」は少し努力すれば簡単に発現させることができます。しかし本当の「スピリチュアル能力」や「ヒーリング能力」は、お金を払ってセミナーに参加するだけで得られるものではありません。簡単に身につけられるような能力には、何の価値もありません。それどころかそうしたセミナーに参加することで、自分の心をますます醜くし、エゴを増幅させてしまうようになります。それによって、人間にとって一番大切な「霊的成長」が妨げられるという最大の損失をこうむることになってしまいます。せっかくの地上人生を、すべてムダにしてしまうことにもなりかねません。

「ヒーラーになってカネと人気を獲得したい」というような醜い欲望に翻弄されるのは、実に愚かなことです。自分の心を貶めてまでヒーラーになる必要など、どこにもありません。古来、霊能者には人間性の劣る者・人品の卑しい者が多いと言われてきましたが、それはヒーラーについてもそのまま当てはまります（＊ヒーラーの問題については、本サイトの第５部で詳しく説明しています）。