３）入神談話現象（間接談話現象）

「直接談話現象」では、霊界の通信霊がエクトプラズムの発声器を操って、直接、音声メッセージを地上人に送ります。地上人は“霊の言葉”を直接、聞くことになります。それに対して通信霊が地上の霊媒の発声器官を用いて、間接的に地上に音声メッセージを送る通信方法があります。この場合、地上人は“霊媒の音声”によって、霊の言葉を間接的に聞くことになります。こうした霊界通信を直接談話に対して「間接談話」と言います。

「間接談話現象」では、通信霊が一時的に霊媒の潜在意識を支配し、霊媒の発声中枢を操って地上人にメッセージを送ります。その際、霊媒が入神状態（トランス状態）に入ることが多いため「間接談話」を「入神談話」と言うこともあります。例外的なケースとして霊媒が入神状態に入らず、通常意識を保ったまま語ることがあります。こうしたケースを含めて考えると、「入神談話」よりも「間接談話」の方がより正確な表現と言えます。しかし一般的には「入神談話」という用語を用いることが圧倒的に多いので、ここではそれに合わせて「入神談話」を優先的に用います。

入神談話現象（間接談話現象）は歴史的に古くから存在してきた霊媒現象で、日本では口寄せとか口切りと呼ばれてきました。古代の原始宗教であるシャーマニズムでは、シャーマン（霊媒）が霊界の“霊”と地上人の間を媒介します。入神状態に入ったシャーマンに“霊”が乗り移って語る託宣は、典型的な入神談話現象です。

「スピリチュアリズムの入神談話」は、歴史的に広く見られる「一般的な入神談話現象」を洗練し、レベルアップさせたものです。両者とも、外見上は同じように映りますが、その内容・質において天と地ほどの違いがあります。次元の高い入神談話が「スピリチュアリズムの入神談話」であり、その意味で特殊な入神談話現象と言えます。

物理的心霊現象のともなう霊界通信（「直接談話」や「直接書記」）と比べ、「入神談話」は消費するエネルギーが少なくてすむため、その分、長時間の通信が可能になります。スピリチュアリズムの優れた霊界通信の多くが、入神談話形式を採用しているのはそのためです。スピリチュアリズムの霊界通信は、個人的な慰めを目的としているのではなく、地球人類全体の救済とそのためのメッセージ伝達を目的としています。入神談話はその目的に適った霊界通信なのです。こうした入神談話による霊界通信の最高峰が「シルバーバーチの霊界通信」です。シルバーバーチの交霊会では、初期にはメガホンを用いた直接談話も行われていましたが、途中から入神談話形式で行われるようになりました。シルバーバーチは、５０年もの長い期間にわたって霊界から通信を送ってきました。

幽界下層にいる未熟霊のオーラが、無意識のうちに地上人（霊媒体質者）のオーラと接触してしまうことがあります。すると霊は蜘蛛の巣に引っかかった昆虫のように身動きが自由にできなくなり、地上人のオーラの中に閉じ込められてしまいます。“霊”にとっては何かに包まれたような感じになります。それと同時に霊的意識が薄らいで、地上人の肉体感覚が自分の感覚であるかのように錯覚してしまいます。このように霊のオーラと地上の霊媒体質者のオーラが融合することによって、地上人と“霊”が霊的に一体化した状況が生じます。これが“憑依状態”です。

このとき“霊”は地上人になってしまったかのような意識状態になります。“地上人”も自分が自分でなくなったかのような意識状態、自分の中に２人の人間がいるかのような感覚に陥ります。憑依現象がもたらすこうした意識状態は、地上人と“霊”の双方にとって、自己の個別性の一時的喪失状態と言えます。霊がオーラの融合状態（憑依状態）から抜け出すと、それまでの混乱した意識は消え失せ、霊的意識と霊的視野が回復するようになります。

すべての霊媒現象は、霊と霊媒のオーラの融合（憑依現象）によって発生します。入神談話現象も霊と霊媒のオーラの融合によって演出されます。通信霊がオーラ融合の意味を正しく理解し、霊媒をコントロールするコツを覚えると、通信霊は自らの意識をしっかり保ったまま霊媒の言語機能を使用できるようになります。霊媒の口を通して、自分のメッセージを地上に伝えられるようになります。

「スピリチュアリズムの入神談話現象」も「一般の入神談話現象」も、霊界の通信霊と地上の霊媒のオーラの融合によって引き起こされます。現象発生の基本的メカニズムには、両者の間に違いはありません。ただし通信の内容・質の点において、両者には天と地ほどの大きな違いがあります。

「スピリチュアリズムの入神談話」では通信霊が高級霊であるのに対して、「一般の入神談話」では通信霊のほとんどが低級霊・未熟霊の類です。「スピリチュアリズムの入神談話」では霊媒の霊能力・霊性・人間性が優れているのに対して、「一般の入神談話」では霊媒の多くが世俗的で霊性が劣っています。また交霊会の参加者にも違いがあります。「スピリチュアリズムの入神談話」の場合、参加者が真摯で誠実な動機から交霊会に臨んでいるのに対して、「一般の入神談話」の場合、参加者の多くが個人的な慰めや好奇心あるいは邪な思いから交霊会に出席しています。このため「スピリチュアリズムの入神談話」と「一般の入神談話」による霊界通信には、内容的に天と地ほどの違いが生じることになります。

「スピリチュアリズムの入神談話」では、霊界の高級霊によって地上人類の霊的成長を促すための高次元の霊的知識や思想・教訓が地上にもたらされます。「一般の入神談話」では、霊界の未熟霊や低級霊によってどちらでもいいようなメッセージや霊的価値のない知識しか送られてきません。

霊界では霊的に進化すればするほど、“霊”から地上的要素（物質性・肉体性）が無くなっていきます。高級霊は長年にわたる進化の歩みの結果、地上的要素が消え去り純粋な霊的存在になっています。そのため死後間もない未熟霊や幽界下層にたむろする低級霊のように地上人のオーラに接触することができません。物質世界との直接的コンタクトが難しくなるのです。

そこで高級霊は霊界の下層（地上近くの幽界）に通信を仲介する「霊界の霊媒」を立て、「地上の霊媒」との間に霊的通信経路を形成します。霊界と地上界の双方に霊媒を置いて、両霊媒を通して自分のメッセージを地上に送ろうとするのです。この「通信霊　→　霊界側の霊媒　→　地上の霊媒　→　地上人」という通信プロセスを、「２段階の霊媒システム」と言います。

人類史上、最も優れた霊界通信と評価されている『シルバーバーチの霊訓』は、こうしたプロセスを経て地上にもたらされました。シルバーバーチという霊界の高級通信霊は、幽界にいるレッド・インディアンを霊界の霊媒として立て、さらにＭ・バーバネルを地上の霊媒として立てました。シルバーバーチはこの２人の霊媒を通して地上にメッセージを送ってきたのです。「２段階の霊媒システム」という他に類のない通信メカニズムは、シルバーバーチの霊界通信の卓説性と歴史的使命の重要性を物語っています。

一般の入神談話（霊界通信）とシルバーバーチの入神談話（霊界通信）の違いを整理すると次のようになります。

霊界サイドから見た入神談話の様子やその背景の複雑さを、シルバーバーチは以下のように述べています。入神談話現象に関して霊界サイドからこれほど詳細な説明がなされたことは、これまでありませんでした。入神談話による霊界通信の霊的背景が、シルバーバーチによって初めて明らかにされたのです。

「霊界の通信者の伝えたいことが百パーセント伝わることは滅多にありません。あることはあるのですが、よほどの例外に属します。あなた方が電話で話を交わすような平面上の交信とは違うのです。その電話でさえ聞き取り難いことがあります。混線したり故障したりして全く通じなくなることもあります。地上という平面上の場合でもそうしたトラブルが生じるのですから、まったく次元の異なる二つの世界の間の交信がいかに困難なものであるかは容易に理解していただけると思います。

霊媒に乗り移った霊は意識に浮かんだ映像、思想、アイデアを音声に変えなくてはなりません。それは完全入神の場合でも百パーセントうまくいくとは限りません。霊媒も人間です。その霊媒のオーラと霊のオーラとがどこまで融合するか――完全か、部分的か、それとも全く融合しないか――によって支配の度合が決まります。支配霊は霊媒の潜在意識を占領し、そうすることによって潜在意識につながった肉体機能を支配します。その状態の中で通信霊から送られるイメージ、思想、絵画、あるいはアイデアを言葉に変えて伝えるわけですが、霊媒も人間ですから疲れていることもあるでしょうし、気分の悪い時、機嫌の悪い時、空腹または満腹の度が過ぎる時、アルコールの飲み過ぎ、たばこの吸い過ぎ等々、それはもういろいろとあるものです。そうしたことの一つひとつが支配霊と霊媒の融合の度合いに影響を及ぼします。

これとは別に、霊媒の精神をしつこく支配している潜在的観念があって、それが強く表現を求めていることがあります。そんな時はとりあえずその観念を吐き出させておとなしくさせるしかないことがよくあります。時として支配霊が霊媒の潜在的観念を述べているにすぎないことがあるのはそのためです。」

「霊の世界では言語は使用しません。従って思念なり映像なりシンボルなりを霊媒に憑っている霊を通じて、あるいは直接霊媒へ伝える操作がまた大変です。これを霊視力を使ってやるとなると実に入り組んだ操作となります。私がこうして楽にしゃべっているからといって、それが楽にできると思ってはいけません。こうしてしゃべっている間、私は霊媒との連携を保つために数え切れないほどの“糸”を操っているのです。そのうちの一本がいつ切れるともかぎりません。切れたが最期、そこで私の支配力はおしまいです。

このように霊界と地上との交信を理解していただくうえで説明しなくてはならないことがたくさんあります。簡単にできることのようにだけは決して想像しないで下さい。必要条件が全部そろえば簡単にできることは、いちおう理屈では言えます。しかし実際にはそこにいろいろと邪魔が入るのです。」

「私が皆さんに霊的真理を伝えようとするときは、高度なバイブレーションに反応できる意識の回路を開き、霊界からのメッセージを表現しなければなりません。そうすることで高級霊は、私を道具として用いることができるのです。

その際、私はこの霊媒の語彙（記憶している言葉）の制約を受けるだけでなく、霊媒の魂の進化の程度による制約も受けます。霊媒が霊的に成長すればその分だけ、それまで表現できなかったことが表現できるようになるのです。

今ではこの霊媒の脳のどこにどんな単語があるのかが分かっていますから、それらを何とか駆使して、私の思ったことやここへ来るまでに用意した思想を百パーセント表現することができます。

この霊媒を通じて語り始めた頃は、霊媒の脳の中にある一つの単語を使おうとすると、それとつながった不要な単語まで出てきて困りました。神経、特に脳の中枢全体をコントロールする術を身につけなければなりませんでした。それによって必要な単語だけを用いることができるようになりました。現在でも霊媒の影響をまったく受けていないとは言えません。時々、霊媒の言葉が私のメッセージをわずかに着色することがあります。しかし、私の言おうとする内容が変えられることはありません。

（中略）霊媒をうまく使いこなせるようになるには、相当の年数を要します。霊媒的素質を持った者の睡眠中に、その霊的身体を使って実験を繰り返します。そうした訓練の末に、ようやくこうして霊媒を入神させてその口を使って語ることができるようになるのです。

（中略）霊媒の心臓をいつものように鼓動させ、血液を循環させ、肺を伸縮させ、適度な刺激によって脳の機能を正常に保つ一方で、彼の潜在意識の流れを止めて、その間に私たちの考えを送り込みます。それは容易なことではありません。

初めのうちは、そうした操作を意識的にやらなければなりません。それが上達の常道というものです。赤ん坊が歩けるようになるには、最初は一歩一歩、足を運ぶことをマスターしなければなりません。そのうち意識しなくても自然に足が出るようになります。私がこの霊媒をコントロールできるようになるまでには、やはり同じような経過をたどりました。しかし、今では自動的にできるようになっています。

他界したばかりの霊が霊媒を通してしゃべるときは、そこまでする必要はありません。霊媒の潜在意識に霊の思念を印象づけるだけでよいのです。それでもかなりの練習が要ります。その練習をこちらの世界の者同士で行いますが、それほど簡単なものではありません。こうして霊媒の口を使って語るよりは、メガホンを使ってしゃべる方がずっと楽です。

人間の潜在意識には、それまでの長年の生活によって決まったパターンが形成されています。考え方や表現方法や用いる概念に、一定の傾向ができ上がっています。その潜在意識を使ってこちらの思想やアイデアや単語を伝えるためには、潜在意識の流れ（回路）をいったん止めて、新しい回路をつくらなくてはなりません。もしも同じような考えが潜在意識にあれば、その回路に切り換えます。それはレコードプレーヤーのようなものです。レコード板のトラック（溝）の上に針を置けば、自動的に曲が出てくるのと同じです。

私がこの部屋に入ってくるのに壁は障害にはなりません。私のバイブレーションにとって壁は硬い物質ではないのです。むしろ霊媒のオーラの方が硬い壁のように感じられます。霊媒のオーラが私のバイブレーションに影響を及ぼすからです。霊媒のオーラは私にとっては牢獄のようなもので、私は霊媒の肉体によって制約を受けます。そのため私はバイブレーションを下げ、霊媒の方はバイブレーションを高めなければなりません。それがうまくいくようになるのに１５年もかかりました。

霊媒のオーラの中にいる間は暗くて何も見えません。霊媒の肉体によって私の能力は制約を受けます。この霊媒は、子供のときから霊媒として必要なすべてのことを身につけなければなりませんでした。そして私は、この霊媒をどのように使用するかを学ばなければなりませんでした。」

シルバーバーチによる入神談話現象についての説明を聞くと、霊界通信がいかに難しいものであるかがよく分かります。霊界通信を実現するためにどれほどの準備と時間が必要とされるものであるのかが理解できます。大半の地上人だけでなくスピリチュアリストでさえも、入神談話現象を演出するために霊界サイドでどれほどの努力がなされているのか全く気がついていないのです。

「スピリチュアリズムの入神談話」による霊界通信の通信霊はいずれも高級霊ですが、高級霊による霊界通信であってもさまざまな問題が発生します。その一つが通信内容の信憑性に関する問題です。高級霊が通信霊となる入神談話なら、通信内容は１００％信用できるものと言いたいところですが、現実にはそのようにはいきません。８０％ぐらいの正確さを持ったものから、３０～４０％程度の正確さしかないようなものまでさまざまです。「入神談話」による霊界通信の信憑性は、以下で述べる４つの内容によって左右されます。

入神談話現象の大きな問題の一つが、ニセ霊能者・詐欺的霊媒の存在です。ニセ霊能者は霊媒能力が無いにもかかわらず、霊媒のフリをしてニセのメッセージを語ります。どんなウソをついても、どんな作り話をしても、周りの者たちがそれをまともに信じてお金をもたらしてくれるため、不正はどんどんエスカレートしていきます。ニセ霊能者がこうしたニセの入神談話現象を演じるのは、金儲けや権威付けのため、自分の名声を高めるためです。特に宗教組織では、教祖の権威を高める手段としてこうした不正がよく行われています。歴史上の人物からの通信、あるいは神からの通信を騙ることによって、自分が神の代理者に相応しいことを見せつけようとするのです。（＊こうした問題については、第４部で詳しく取り上げます。）

一般の人であっても、入神談話（霊界通信）の通信霊の真偽を判別することはそれほど難しいことではありません。通信霊に直接、生前の情報を問いただし、答えた内容を確認するだけでいいのです。それだけで、相手の霊が本物かどうか分かります。当事者しか知り得ない内容を正確に述べてこそ、本当の通信者と判断できます。このようにして霊の身元を確認します。通信霊の身元確認は、霊媒現象（霊界通信）に臨む際の鉄則です。

ところが高級霊が通信霊の場合、状況はそれとは異なります。なぜなら高級霊は何百、何千年前に他界した霊であることが多く、彼らの生前の身元の証明を求めても、確たる証拠を示すことはほとんど不可能だからです。名前なら何とでも名乗ることができます。現に低級霊は、歴史上の人物の名を騙って地上人を煙に巻いています。地上時代の名前を聞いたところで何の証拠にもなりません。

では通信霊が高級霊かどうかを判定するよい方法はないのでしょうか。低級霊が高級霊を装って通信を送ってくるのを、どのように見抜いたらよいのでしょうか。結論を言えば、霊界通信で送られてきたメッセージの内容を厳密に検証して判断するということです。見知らぬ人間から手紙が送られてきた場合、その文面からその相手の人間性や霊性、精神性、性格、好みなどを推測することができます。どれほど文面を立派に飾っても、また内容を偽っても、おおよその実態は文章全体に表われるものです。それと同じで、霊界通信の内容が霊的真理と違っていないか、話の雰囲気が上品か、人類全体の霊的向上を目的としているかといった点から、通信霊が高級霊か邪悪霊かを判断することができます。言うまでもなく、霊的真理をしっかりと理解していない人間には、霊界通信の真偽の判別はできません。