霊界通信とは

「物理的心霊現象（＊第１系統の心霊現象）」は、科学至上主義時代の唯物論者（特に科学者）に、霊魂説の正当性を証明することを目的として、霊界のスピリット（高級霊）によって計画的に演出されました。人間は死後も霊魂として霊界で存在し続けること、それを認めない唯物論は間違いであることを明らかにするために起こされたのです。

一方「精神的心霊現象（＊第２系統の心霊現象）」では、死者と一面識もなかった霊媒が、死者についての正確な情報（身なり・風貌・クセなど）を遺族に伝えることによって、愛する人が死後も生き続けていることを示し、霊魂説の正当性を証明するために演出されます。

「スピリチュアル・ヒーリング（＊第３系統の心霊現象）」は、霊界にいる霊（スピリット）が霊的エネルギーを用いて地上人の病気を癒します。霊による治療を通して霊魂説を証明すると同時に、地上人に霊的覚醒をもたらすことを目的として演出されるものです。

このように３つの系統の心霊現象は、「霊魂説」の正当性を証明することを共通の目的としています。地上人に霊的世界への関心を喚起し、霊的覚醒を促すことも意図しています。「霊魂説」という最も基本的な霊的真理・霊的知識を理解することによって、地上人は死を恐れることがなくなり、死に対する姿勢が根底から変化するようになります。

しかし、こうした３系統の心霊現象の影響力が及ぶ範囲はそこまでです。人間は死後も霊界で存在し続けるという「霊魂説」を証明すること、それ以上のことはできません。「死後にはどのような生活が待っているのか」「霊たちはどのような思いで霊界での生活を送っているのか」「霊界における幸福とは何か」「人間は地上世界でどのように生きていくべきなのか」「従来の宗教で議論されてきた問題の正解とは何か」については、全く知ることはできません。３系統の心霊現象では、霊的思想（世界観・人生観・価値観）・霊的知識・霊的教訓といった霊的真理を地上人に示すことはできません。その霊的真理を地上にもたらすために演出される心霊現象が、第４系統の心霊現象――「霊界通信」なのです。

スピリチュアリズムの目的は、地上世界に霊的真理をもたらすことによって、地上人が地上世界にいながらにして霊的人生を歩めるようにすることです。霊的人生を送るための意識的な真理実践の努力を通して、人間は霊的成長の道を歩むことができます。実は、これこそが人間に最高の幸福をもたらす源であり、霊的救いなのです。地上人に生き方の根本変革をもたらし霊的成長を促すためには、霊的真理・霊的思想が不可欠です。スピリチュアリズムを主導する高級霊たちは、「霊界通信」によって霊的真理を地上世界にもたらそうとしたのです。

スピリチュアリズムの大目的である地上人類救済という観点から心霊現象を見るとき、「霊界通信」は他の３系統の心霊現象とは重要度において全く異っています。霊界通信は、スピリチュアリズムの最終目的に直接的に関わってくる最も重要度の高い心霊現象であり、最大の使命を担っている心霊現象なのです。

物理的心霊現象、精神的心霊現象、スピリチュアル・ヒーリングは、いずれも「霊魂説」という基本的な霊的真理の正当性を証明して、地上人が「霊界通信」を受け入れやすくするために演出された前座的な心霊現象と言えます。霊界通信によってもたらされる霊的真理・霊的思想・教訓を受け入れやすくするための露払いを担っていたのです。

霊界の高級霊は、３系統の心霊現象で霊的真理の受け入れの準備をし、そこへ霊界通信によって高次の霊的真理をもたらすという形で人類救済計画を進めてきました。スピリチュアリズムの歴史を俯瞰するとき、こうした霊界側の意図が明確に見てとれます。３系統の心霊現象による霊的真理の受け入れ準備の推進と、霊界通信による霊的真理・思想の啓示という２本立ての心霊現象演出の計画がはっきりと示されていることが分かります。

いま述べたように霊界通信は、現象演出の目的という点で他の３系統の心霊現象と本質的に異なります。さらに霊界通信が対象としている人間が、他の心霊現象とは根本的に違います。ここにも霊界通信の特色があります。霊界通信以外の３系統の心霊現象が対象としているのは、目の前の人間とその関係者、あるいはデモンストレーション会場で現象を目にする人々です。物理的心霊現象では霊魂説を否定する唯物論者や科学者、精神的心霊現象では死別の悲しみの中にいる人間、スピリチュアル・ヒーリングでは病気で苦しむ人間を特に対象としています。

それに対して霊界通信は、初めから人類全体を対象としています。霊界通信は他の心霊現象のように、現象の威力・不思議さによって人々を啓蒙しようとするものではありません。霊界通信で届けられた思想そのものの威力によって人類全体に働きかけ、霊的覚醒をもたらそうとするものなのです。心霊現象の現場を見せつけることよりも、メッセージの内容によって地球人類の救いを達成しようとしているのです。交霊会で霊界から伝えられるメッセージや霊的知識・情報は、時の経過とともに時期のきた地球人に受け入れられ、霊的覚醒をもたらすことになります。霊界通信はそうした将来の状況を想定して演出されているのです。

霊媒現象は古来、死者との交信方法としてよく知られ、広く行われてきました。入神状態（トランス状態）に入った霊媒（シャーマン）に死者の霊が憑依し、その霊が地上人にメッセージを伝えるという現象です。古代宗教の代表であるシャーマニズムとは、この霊媒現象を行う信仰のことです。霊媒現象は古代から現在まで現出し続けてきた最も歴史の長い心霊現象、そして地球上で最もポピュラーな心霊現象です。霊媒現象は古代の日本では至るところで行われていました。物質文明を謳歌する現代の大都市でも見ることができます。霊媒現象は日本では口寄せとか口切りと呼ばれ、青森のイタコやゴミソ、沖縄のユタなどが霊媒（シャーマン）としてよく知られています。

霊媒を通して語られる言葉や内容が、死者の生前の特徴やクセを示しているとき、遺族は死んだ当事者が霊媒の口を借りて語っていることを確信し、愛する人（死者）が今もあの世で生き続けていることを実感するのです。このように霊媒現象は「精神的心霊現象」と同じく、死者の死後存続の証拠を提示し、霊魂説を証明することになります。そして、愛する人との死別を悲しむ遺族に、癒しと慰めを与えることになるのです。

スピリチュアリズムにおいて展開してきた霊界通信は、この霊媒現象を洗練してレベルアップしたものです。霊界にいる霊（スピリット・死者）が、地上の霊媒（シャーマン）を通してメッセージを送るという形式は同じですが、その目的と内容が全く違います。スピリチュアリズムの霊界通信と一般の霊媒現象とでは、通信霊のレベルと質に格段の差があるのです。一般の霊媒現象で通信を送ってくるのは、死後間もない地上臭の抜けていない霊や、幽界の下層に居座り続けている未熟霊がほとんどです。時には悪質な低級霊である場合もあります。それに対してスピリチュアリズムの霊界通信では、通信霊は高度に進化を遂げた“高級霊”に限定されています。

また、霊媒現象を現出させる交霊会の霊的背景にも大きな違いがあります。スピリチュアリズムの霊界通信では、霊界サイドに高級霊を中心として数多くの霊が結集してグループ（霊団）をつくり、一糸乱れぬ協力体制の下で現象が演出されます。一般の霊媒現象では、そのようなグループがつくられることはありません。一般の霊媒現象と霊界通信は、見かけ上は同じ現象のように見えますが、霊的背景が全く異なっているのです。何万人もの労働者が働く大工場と、数人の労働者が働く町工場ほどの違いがあります。

一般の霊媒現象は、死者の家族や知人などのごく限られた地上人を対象としています。それに対してスピリチュアリズムの霊界通信は、出発時点から全人類を対象としています。初めから地球人類全体にメッセージを送ることを意図しています。すなわちスピリチュアリズムの霊界通信は、出発時点からその対象が地球人類全体に置かれているのです。

霊から送られてくるメッセージは、一般の霊媒現象では個人向けのものが大半で、霊的に高い内容はほとんどありません。それに対して霊界通信では、全人類の霊的成長を目的とした高次元の内容となっています。地球人類の救済という歴史的使命の下に計画され、そのための霊的メッセージを送るために演出された霊媒現象が、スピリチュアリズムの「霊界通信」なのです。

スピリチュアリズムは、地球人類の霊的成長を促し霊的救いをもたらすために計画された、霊界を挙げての大プロジェクトです。霊界通信はその一環として演出されます。霊界通信を開始するに当たって霊界では、周到な準備が行われます。通信霊や霊媒の選定から交霊会のメンバーの選定に至るまで、すべての点において徹底した吟味がなされます。霊界通信の通信霊が高級霊であるのは当然ですが、一口に高級霊と言っても一人一人には霊性・知性・性格などの違いがあります。それらをすべて考慮した上で、“最適な霊”が選ばれます。

一方、高級霊からの通信を受けるには、地上の霊媒も優れていなければなりません。霊性・霊能力・人間性・性格といった点でより優れた人間が霊媒として選ばれます。時には霊媒が受胎した瞬間から霊媒養成のための働きかけが始められ、徹底した導きの中で高級霊界通信を受信するに相応しい霊媒に育て上げられていきます。交霊会の参加者も厳しく選別されます。霊界から送られてくるメッセージを正しく理解して、地球上に広めることのできる人間が集められます。

こうした準備がどの程度まで徹底されるかで、霊界通信のレベルが決定されます。スピリチュアリズムでは多くの霊界通信が受信されてきましたが、その中で特に優れたものが世界３大霊訓と呼ばれています。フランス人アラン・カルデックの編集による『霊の書』、英国人牧師ステイントン・モーゼスを霊媒とする『霊訓』、同じく英国人モーリス・バーバネルを霊媒とする『シルバーバーチの霊訓』です。これらはまさに地球人類の霊的救いを達成するために霊界からもたらされた霊的宝、地球人類史上最高の霊的叡智と言えます。

一般の霊媒現象と違って、全人類へ向けたメッセージを送ることを使命とするスピリチュアリズムの霊界通信は、大規模な霊的組織体制の下で演出されます。霊界通信も心霊現象である以上、その演出には霊的エネルギーの活用が不可欠ですが、長時間にわたる霊界と地上界の通信には莫大な霊的エネルギーが必要になります。霊界通信という心霊現象は、霊界サイドの霊たちと地上サイドの霊媒や参加者から構成される交霊会に現出しますが、霊界通信を演出するための霊的エネルギーは、この三者から調達されます。霊界サイドで用意する霊的エネルギー、霊媒の持っている霊的エネルギー、そして参加者から取り出すエネルギーが、交霊会の運営のために活用されるのです。霊界サイドから供給される霊的エネルギーは無限ですが、地上の霊媒の受容能力によってその量と活用範囲が限定されることになります。

こうして準備された霊的エネルギーを用いて霊界通信が行なわれますが、霊的エネルギーを使い切ると通信はできなくなります。シルバーバーチはしばしば「霊的エネルギーがなくなったので、もうこれ以上、通信を送ることはできません」と言って、通信を閉じています。このシルバーバーチの言葉は、霊界通信を維持するために、霊界サイドでは想像もつかないような複雑なエネルギー操作が行われていることを示しています。

霊界通信をめぐるトラブルは、その原因が霊界サイドにあるものと地上サイドにあるものに分けられます。霊界サイドにある原因とは、通信霊が低級霊であるということです。低級霊は地上人をからかったり困らせたりするために、わざとニセの情報を地上人に送ります。一般の霊媒現象の通信霊は、その大半がこうした低級霊や未熟霊です。霊媒や参加者が不純な動機から交霊会を催すと、低級霊に付け込まれることになります。実際には霊界通信の多くが、低級霊の介入を受けています。低級霊の多くは知性が高く、地上人を有頂天にさせるような情報をわざと送って信用させ、最後はどん底に落として楽しもうとします。またスピリチュアリズムの本物の霊界通信の権威を下げるために、ニセの情報を送って混乱させるようなこともします。地上人が低級霊の霊界通信に騙されるのは、地上人側に霊的知識が無い（霊的無知）ことや動機が不純であることに、その原因があります。ニセモノに騙されるのは、地上人がそれに相応するような低俗さを持っているからなのです。

霊界の低級霊が引き起こすトラブルとは別に、地上の霊媒が引き起こすトラブルもあります。霊界通信における最大の問題は、地上サイドのニセ霊媒の存在です。ニセ霊媒は、霊媒能力など無いにもかかわらず、霊媒のフリをして架空の霊のメッセージを伝えます。精神的心霊現象においては、ニセ霊能者が霊が見えてもいないのに見えるフリをし、前世など分かりもしないのに分かるフリをして人々を騙しますが、それと全く同じです。ニセ霊媒は、霊のメッセージを取り次ぐことなどできないのにいい加減な作り話を、さも霊界の高級霊が送ってきたメッセージであるかのように語るのです。世の中にはこうしたニセの霊媒を演じる人間が実に多いのです。ニセ霊媒の中には、神や歴史上の人物の名を騙り、人々をひれ伏せさせようとする人間もいます。ニセ霊界通信やニセ霊言、ニセ啓示で人々を驚かし、自分を崇拝させようとする人間がいます。なかには宗教教団をつくって教祖に納まる人間もいます。こうしたニセ霊媒の中には、意図的にスピリチュアリズムの霊的真理を語り、さも自分が高級霊の霊媒であるかのように演じるきわめて悪質な者がいます。（＊ニセ霊媒が引き起こす問題については、第４部で詳しく説明しています。）

地上に霊的真理・思想・教訓を伝えるために、霊界の“高級霊”によって計画的に演出される心霊現象が「霊界通信」です。一口に霊界通信と言っても、メッセージの伝達方法にはさまざまな形式があります。その形式の違いから、霊界通信はさまざまな種類に分類されます。

霊界通信の中には、高級霊が地上人の話し言葉（音声）でメッセージを伝えるものがあります。霊界人が地上人に話しかけるような形式で、これを「談話形式」と言います。この談話形式は発声方法の違いから、「直接談話」と「間接談話（入神談話）」の２つに分類されます。「直接談話」とは、霊媒から流出したエクトプラズムでつくられた発声器を、通信霊が操って発話するというものです。それに対して「間接談話」は、通信霊が地上の霊媒の潜在意識を支配し、その発話中枢を操って語るというものです。その際、霊媒が入神状態（トランス状態）に陥ることが多いため、「入神談話」とも言われます。

一方、音声（話し言葉）ではなく文字（書き言葉）を用いて、霊界からメッセージを伝える形式もあります。これを「書記形式」と言います。この書記形式にも２つの種類があります。一つは通信霊が霊媒から流出するエクトプラズムを利用して筆記用具（鉛筆や白墨など）を操り、石やガラス盤などに直接メッセージを書くというものです。これを「直接書記」と言います。それに対して通信霊が霊媒の潜在意識を支配し、その筆記中枢を操って文字を書くという方法があります。この場合、見た目には、霊媒が筆記用具を用いて筆記をしているように見えます。これを「間接書記」または「自動書記」と言います。

また音声（話し言葉）や文字（書き言葉）以外の手段を用いたメッセージの伝達方法もあります。それがテレパシーを用いる方法です。通信霊がテレパシーによって直接、思想内容を地上の霊媒に送ります。それを霊媒が翻訳・解釈して、地上の言葉で表現します。これを「霊感書記（テレパシー式霊界通信）」と言います。

霊界通信には、こうしたさまざまな種類があります。以上を整理すると次のようになります。