３）いったい何のために霊能者・ヒーラーになろうとするのか

世間には、霊能者になりたい、スピリチュアル・ヒーラーになりたいと思っている多くの人間がいます。「霊能力を身につけたい、霊能者になりたい」という思いの根底には、他人にはないものを手に入れて自慢したい、偉い人間と思われたい、お金儲けをしたい、人気者になりたい、というさまざまな醜い感情が潜んでいます。低俗な物欲・名声欲・自己顕示欲・虚栄心が深く根を下ろしています。

こうした人間にとって大切なものは、富や名声がもたらすこの世的な満足であり、自分の家族の物質的幸せです。自分自身の利益のために霊能者やヒーラーになりたいと思っているのであって、本心から人々のために役に立ちたい、手助けをしたいと考えているわけではありません。表向きは“霊能力を身につけて人助けをしたい”と殊勝なことを口にしますが、その本心は“エゴ”であり、自己中心的な欲望であることは言うまでもありません。

何が何でも霊能者になりたい、ヒーラーになりたいと思っている人の本当の動機は、自分自身の欲望の満足に他なりません。当事者はこの事実をなかなか認めようとしませんし、どこまでも“人助けのため、人々の幸福のために役に立ちたい”と主張します。しかしそれが本心であるなら、徹底して自己を犠牲にし、いっさいの見返りを期待せずに、ただ与え尽くすことに徹するべきなのです。報酬を求めずに、無償の奉仕として事にあたるべきなのです。それだけの覚悟があったとき初めて「純粋な人助けの行為」と言えるのです。

「利他愛」という霊的真理の本質を深く考えてみれば、霊能者やヒーラーにならなければならないという理由はありません。ただ人助けのために尽くすことが、すべてなのです。「どのようなことでもいいから、無償で人のためになることをする」――これが本当の利他愛であり、摂理にかなった奉仕です。見返りをいっさい期待することなく無償の奉仕に専念できる人間であってこそ、「人々のため」と言うことができるのです。そうでないかぎり結局は、すべて「自分の利益のため」ということになってしまいます。

霊能者になりたい、ヒーラーになりたいという人は、その動機を厳しくチェックしてみなければなりません。それが本当に人々のためを思う純粋な利他愛からのものなのかどうか、自分の内面を見つめてみることです。おそらく霊能者やヒーラーになりたいと思っている人の大半が、自分の心の奥底に“利己性”が潜んでいることに気がつくはずです。この世の富や利益を追い求めていたにすぎないことに思い至るはずです。

自分の心のうちに存在する“エゴ・利己性”を直視し、その事実を認めたとき、人は初めて利他愛の意味を真に理解し、謙虚な気持ちを持つことができるようになるのです。この世的な欲望の満足を追い求めるなら、魂は醜さを増し、人間にとって最も大切な永遠の宝を失うことになってしまいます。

自らのエゴを直視し、動機の不純さに気がついたとき、人は本当の意味で“謙虚な心”を持つことができるようになります。実はこれが霊能者やヒーラーに要求される最も重要な内容なのです。謙虚さを持てない者は、その醜い欲望のために自らを滅ぼすことになってしまいます。人間にとって何より大切な“霊的宝”を失うようなことになるくらいなら、霊能者やヒーラーになる必要性など全くありません。

私たちのところ（スピリチュアリズム普及会）にはしばしば、「私もヒーラーになりたいのですが、どうしたらよいのでしょうか。どのような訓練をすればヒーラーになれるのでしょうか？」といった質問が寄せられます。それに対して私たちは――「ヒーラーになれるかどうかは、生まれつきの霊能力によります。スピリチュアル・ヒーラーに固執するのではなく、与えられた今の環境の中で、できるかぎり純粋な奉仕をすることが大切です。霊能者やヒーラーになるより、縁あって出会った人々に霊的真理を伝えてあげることの方が真の奉仕・人助けになるのです」とお答えしています。

そして「何が何でもヒーラーになりたいと思っているなら、本当は諦めた方があなたのためになるのです。“何が何でもヒーラーになりたい”との願望は“エゴ”から生じたものであり、本当の利他愛からは最も外れた思いなのです。エゴからの醜い願望を追及すれば、霊的成長という一番の霊的宝を失うことになってしまいます。霊能者やヒーラーに固執することは、真の人助けにならないだけでなく、あなた自身の霊的成長にとって大きなマイナスを招くことになってしまうのです」とお伝えしています。

何ひとつ見返りを求めず、誰からも賞賛されず、人々から馬鹿にされるようなことがあっても「神の道具」として淡々とやっていける人間だけが、本物の霊能者・ヒーラーになることができるのです。こうした心境を持てないなら、人のために役立つ奉仕はいくらでもあるので、まずはそれに専念することです。「霊界の道具」としての心がまえができていない人間が霊能者やヒーラーになろうとすれば、必ず身を滅ぼすことになります。一生を台なしにすることになります。「何も霊能者やヒーラーでなくてもいい。そんなことより純粋な奉仕・利他愛の実践をする方が大切である」「自分にできることなら、どんな奉仕でもいい」と思える人間であってこそ、本当の意味で霊能者やヒーラーになる資格を持っていると言えるのです。