５）本物のスピリチュアル能力を身につけるための“霊的修行”

「スピリチュアル能力を持っている95パーセント以上の霊能者が、結果的に低級霊に翻弄されその手足になってしまっている」――これがスピリチュアル能力者の現実であり、実態です。本物のスピリチュアル能力を身につけている霊能者は、全体のわずか数パーセントにも満たないということなのです。では95パーセント以上の“ニセモノ”と、ほんのわずかな「本物の霊能者」では、どこに違いがあるのでしょうか。

“霊能体質・霊媒体質”を決定づけるのは、霊体から肉体へ流れ込む「霊的エネルギー」です。霊能体質者・霊媒体質者は、この霊体から肉体へ流入する霊的エネルギーの量が多いのです（＊「霊媒体質者」は霊体から肉体へ流れ込む霊的エネルギーの量が多いだけでなく、体外へ放射する“オーラ”の量も多いのです）。霊体から肉体へ流れる「霊的エネルギー」は、誰もが同じではなく、人によって量も質も違っています。ここで問題となるのが、霊的エネルギーの「質」なのです。高次元のスピリチュアル能力を持った者と低次元のスピリチュアル能力しか持っていない者では、霊能力を発現させることになる霊的エネルギーの「質」が全く違っています。本物の霊能者の場合は霊的エネルギーの質が高く、ニセモノの場合はその質が低いのです。

では、そうした霊的エネルギーの「質」の違いは、どこに原因があるのでしょうか。肉体に流れ込む霊的エネルギーは「霊体」から発せられるものである以上、当然、霊体の状態が霊的エネルギーの質を決定することになります。実際、本物のスピリチュアル能力を持った者の霊体を霊視してみると、高い霊的な輝きがともなっています。それに対して低次元のスピリチュアル能力しか持っていない者の霊体は質が悪く、霊的な輝きがともなっていません。放射される霊体オーラにも、明らかな違いが見られます。

では、その「霊体」の質は、何によって決定されるのでしょうか。その答えは、霊体に霊的エネルギーをもたらす「霊の心（霊的意識）」の質ということになります。では、その「霊の心」の質の上下を決定するものは何かといえば、「霊の心」に霊的エネルギーをもたらす「霊」の質なのです。「霊」の質が優れていれば「霊の心」も高まり、「霊」の質が劣っていれば「霊の心」も低くなるのです。

「霊」の質が優れているということは――「霊的に成長している・霊性が高い」ということです。霊的に成長している人間・霊性が高い人間は、霊界の大気中から大量の霊的エネルギーを取り入れ、それを「霊の心」から「霊体」へとスムーズにステップ・ダウンさせ、身体全体に行きわたらせることができるようになります。十分に取り入れた霊的エネルギーを全身に循環させ、身体全体を活性化させることができるのです。

「霊体の質を決定するものは何か？」という最初の質問に戻りますが、その答えは「霊的成長度・霊性のレベル」ということになります。

「霊的身体はその霊の大海から養分を摂取し、存在を維持しています。物的身体が呼吸によって大気中から生命素を摂取して存在しているのと同じで、霊的大気と霊体との関係はまさに空気と肉体の関係と同じなのです。人間界の叡智もまたその霊的大気圏から得られるのです。（中略）受容性の高い者、霊性の高い者ほど多くを摂取するということです。」

「霊性」こそが、本物の霊能者とニセ霊能者を分けることになります。霊性を高めるとは、霊的成長をなすことに他なりません。霊的真理のエッセンスは、「霊的成長」という簡単な一言に集約されます。“スピリチュアリズム”は、霊的成長こそが人間にとって最も重要な内容であり、地上人生の目的はすべて霊的成長のためにあることを明らかにしています。私たちは霊的成長を達成するために、地上世界に生まれてきたのです。

では、その「霊的成長」は、どのようにしたら達成することができるのでしょうか。スピリチュアリズムの霊的真理は、それについての答えも明示しています。霊的成長は、霊能力を身につけるより遥かに重要な内容で、地上人生において最優先しなければならないことなのです。この事実は――「霊的成長」のための努力を優先しないかぎり本物の霊能者（高級霊を惹きつけることができるスピリチュアル霊能者）になることはできない、ということを意味しています。霊的成長のための努力こそが、「本物の霊能者」になるための修行法そのものと言えるのです。

スピリチュアリズムでは、「霊的成長」に関する２つの大原則を示しています。それは「霊主肉従の努力」と「利他愛の実践」です。この２つの実践を通して、人間の魂は成長するようになっています。前章（３）で示した霊能者になるための“瞑想”を中心とした訓練とは、「霊主肉従」を達成するための修行に他なりません。そして本章で述べる良き霊能者になるための訓練とは、「利他愛」を身につけるための修行です。その利他愛は、霊主肉従という条件を満たしたうえで、初めて持つことができるものなのです。したがって「霊主肉従の努力」の上に「利他愛の実践」を積み上げること――これが真のスピリチュアル霊能者になるための“霊的修行”ということになります。そしてそうした実践を積み重ねることによって、よりいっそう霊性は高められていくことになるのです。

「霊力は無限です。尽きることがないのです。通過する道具（※霊能者）によって制限されるだけです。道具（※霊能者）なしには霊力は地上に発現されません。ですから、道具となるべき霊能者は受容能力を少しでも広く深くする努力をしなくてはいけませんし、そうすることによって霊性も発達させなければなりません。霊性こそが霊力の分量を決することになるからです。霊性が高まればそれだけ多くの霊力が流入するようになります。」

「個人としてあなた方にできることは、その霊力の流れる一個の場としてできるだけ純粋であるよう心がけ、できるだけ多くの霊力が顕現されるようにする――つまり人のために役立つようになることです。」

「治療家にかぎらず、霊能者と呼ばれている人が、常に心の修養を怠ってはならない理由はそこにあります。霊的に向上すれば、それだけ仕事の範囲が広がって、より多くの価値ある仕事ができるようになります。そのように法則ができ上がっているのです。」

利他愛の実践は、「本物のスピリチュアル霊能者」になるための不可欠な条件ですが、利他愛の実践にはさまざまなレベルが存在します。利他愛の本質は――「自分の利益・幸福よりも、全体や周りの人々の利益・幸福を優先する」ということです。この世を支配している利己主義・自己中心主義とは正反対のあり方です。「利他主義」を徹底しその内容を高めていくと、「滅私的奉仕」というきわめて純粋な次元にまで至ります。自分という存在は大義のため・全体のためにあるのであって、自分自身のためにあるのではない、という心境に至ります。利他主義は、神の定めた摂理であり、人間の霊的成長と真の幸福を決定する重要な法則です。

霊界の高級霊たちは、すべての行動と日常生活を、この「神の摂理（利他主義）」にそって営んでいます。“スピリチュアリズム”とは、高級霊の利他愛・無私の愛による地球人類救済計画です。地球上に「霊的真理」を普及し、人類に霊的成長と真の幸福をもたらそうとする純粋な利他愛から発した大計画なのです。高級霊の利他愛は、自分という存在を「神の道具」と位置づけする「道具意識」にまで高められています。「自分は神の道具である以上、人生のすべてを神に捧げ、ただ神のためだけに生きよう」とします。そして人類全体の幸福のために喜んで自分自身を捧げたいと願い、自ら犠牲を買って出るのです。高級霊は利他主義を徹底して深め、利他愛を「道具意識」と「犠牲精神」にまで高めています。こうした完全な利他愛の持ち主が、霊界の高級霊たちなのです。

高級霊のこの姿勢は、本物の霊能者を志す人間にとって、まさに生きた手本・見本と言えます。霊能者は、「道具意識」と「犠牲精神」にまで高められた利他愛の実践を通して霊性を引き上げ、初めて「真のスピリチュアル霊能者」になることができます。地球人類の救いのために献身的に歩む高級霊の良き道具を目指すことによってサイキック能力をスピリチュアル能力へと向上させ、彼らの導きと協力を得られるようになるのです。「道具意識」と「犠牲精神」こそが、まさに高次元のスピリチュアル能力を身につけるための最大の秘訣なのです。

シルバーバーチは「高級霊の良き道具」となるための心がまえ（利他愛の実践）について、次のように述べています。

「いちばん大切なことは、他人のために己を捨てるということです。自分の能力を発達させること自体は結構なことです。が、開発した才能を他人のために活用することの方がもっと大切です。」

（質問）――どうすれば霊媒や霊視能力者になれるのでしょうか。

「大霊のために自分を役立てようとする人間はみな大霊の霊媒です。いかにして魂を向上させるか――これはもう改めて説くまでもないでしょう。これまで何回となく繰り返して説いてきたことではないでしょうか。自分を愛するごとく隣人を愛することです。人のために役立つことをすることです。自我を高めるよう努力することです。（中略）内部に宿る神性を発揮させることです。それが最高の霊媒現象なのです。こうすれば霊視能力者になれるという方法はありません。が、大霊の光が見えるように魂の目を開く方法なら教えられます。それは今述べた通りです。」

（質問）――治癒力を磨くにはどうすればよいのでしょうか。

「我欲を捨て、人のために役立ちたいという心がけで生きることです。霊的能力を開発するための最大の要素は、その“人のために役立ちたい”という欲求です。それは病人だけでなく、同胞すべてに対する愛であり、その愛の中において治癒力が増してまいります。」

高級霊の道具となる本物のスピリチュアル能力を身につけるには、どうしたらよいのか？――その答えは「霊性を向上させる」という単純な結論に至りました。霊性を高めようとする努力こそが、真のスピリチュアル能力を獲得するための“霊的修行”となるのです。そしてその努力とは、具体的には「霊主肉従の努力」と「利他愛の実践」です。霊的成長のためのこの２つの実践の次元を高めたものが、高級霊の道具としての資格を身につけるための努力なのです。すなわち無私無欲の「道具意識」と「犠牲精神」を持って他人のため・全体のために尽くす努力が、高級霊の道具としての資質をレベルアップさせることになるのです。

こうしたことは、霊的成長を求める“スピリチュアリスト”にとっては当たり前の実践内容です。「霊主肉従」も「利他愛」も「道具意識」も「犠牲精神」も、決して特別なものではありません。スピリチュアリストならば、誰もが日常生活の中で常に心がけていなければならない信仰実践の内容なのです。これは本物のスピリチュアリストを目指す日々の歩みが、そのままスピリチュアル能力を開発するための“霊的修行”になっている、ということを意味しています。

（質問）――立派な霊能者となるには日常の生活面でも立派でなくてはいけませんか。

「生活態度が立派であれば、それだけ大霊の道具として立派ということです。生活態度が高尚であるということは、それだけ内部に宿された神性が多く発揮されているということになるからです。日常生活で発揮されている人間性のレベルが霊能者としてのレベルを決定づけます。」

（質問）――ということは、霊格が高まるほど霊能者としても向上すると言って良いでしょうか。

「決まりきったことです。生活面が立派であれば、霊能も立派になります。自分を犠牲にする覚悟のできていない人間に、いい仕事はできません。このことは、こうして霊界での生活を犠牲にして地上へ戻ってくる私たちが身をもって学ばされてきた教訓の最たるものではないでしょうか。」

（質問）――霊媒現象の質を高めるための方法をお教え願えませんか。

「霊の道具である霊能者が自分の才能が神聖なものであるとの自覚を得た時から、重大な責任を背負うことになります。まず日常生活において、その才能を傷つけたり汚したりすることのないように心がけないといけません。次にその才能を最高の水準にまで高める努力を真剣に行わないといけません。そのためには手にした知識を日常生活の中で実践しないといけません。」

「霊の道具として少しでも完璧に近づくことを心がけることです。ご自分の人間性から人間的煩悩をすべてご法度にするくらいでないといけません。そう心がけただけ、その治療家を通して、より多くの霊力が流入します。治療力の質や量を決定づけるのは、その治療家の生活そのものです。」

「すべては治療家（※霊能者）の発達の程度にかかっております。私が霊媒を志す人、治療家になりたいと思っている人に対して、まず第一に経験豊かな指導者のもとで修行することが大切であること、それにプラスして――実はこのことが一番大切なのですが――高級な指導霊の協力を得ることができるように、人間性を磨くことが大切であることを繰り返し説くのは、そこに理由があります。（中略）あなたご自身としては、常に治癒力をより強く発揮したいという願望をもっていなければなりません。日常生活が清廉さと実直さにあふれたものであらねばなりません。身体も、霊の宮として、できるだけ清浄でなければいけません。」

真のスピリチュアル霊能者になるためには、日々「厳しい克己の努力」と「滅私の利他愛の実践」に励むことが不可欠な条件となります。常に自己犠牲を喜び、献身的奉仕に徹することが必要となります。自分の行為に“見返りを求める”という要素があってはなりません。純粋な霊界の道具として人生のすべてを捧げたとき、初めて霊界の高級霊は、その人間を信頼して用いることができるようになるのです。

本物の霊能者を目指す生き方は、実に厳しい霊的修行の道です。それほど本物の霊能者になることには価値がある、ということなのです。誰にも真似のできない奉仕・利他愛実践のチャンスが与えられる、ということなのです。価値があるものを手に入れるためには、それに見合った努力と犠牲が求められる――これはまさに「神の摂理」です。自分自身に厳しく臨むことができる人間であってこそ、「真のスピリチュアル霊能者」になることができるのです。

「こうして霊力の道具として役立つだけの資格を身につけるまでには、それなりのトレーニングが要ります。それは大変なことです。何となれば、その結果としてある種の鍛錬、ある種の確信を身につけなければならず、それは苦難の体験以外には方法がないからです。霊力の道具として歩む道は厳しいものです。決して楽ではありません。容易に得られた霊能では仕事に耐えきれないでしょう。魂の最奥・最高の可能性まで動員させられる深刻な体験に耐えるだけの霊性を試されて初めて許されることです。そうして身につけたものこそ本物であり、それこそ霊の武器と言えます。」

「霊性を磨く道は容易ではありません。困難の連続です。奥深く踏み入るほど、平坦な人生にはない体験ばかりとなり、孤独を味わうようになります。しかしその一方で、内面的にはそれに似合っただけの埋め合わせ――霊性の成長、悟り、背後霊との結束の強化、インスピレーションの増幅、直観的な価値判断力の向上、といったものが身につきます。霊的な成長の成就というのは、そうしたものを身につけることを言うのです。」