３）地上の霊能者に対する霊界からの働きかけの現実

「私たちにとっての最大の難事は、進化した高級霊からの通信を受け取ることのできる霊媒を見つけ出すことなのです。そうした霊媒は、まず精神が受容性に富んでいなければなりません。受容性の限度以上のものは、どのようにしても伝えることはできないからです。次に、愚かな地上的偏見に捉われない人間でなければなりません。若い時代に身につけた誤った思想を潔く捨て去り、たとえ世間から受け入れられないものであっても、真理は真理として素直に受け入れる精神の持ち主でなければなりません。

さらにはドグマ（※間違った宗教の教義）や、この世的な思想から抜け出せる人間でなければなりません。（中略）常に捉われのない探究心に燃える魂の持ち主であって、新たな知識を求める人間、洞察力に富んだ人間でなければなりません。常により多くの真理の光と、より豊かな知識を求める人間、つまり真理の吸収に飽くことを知らない者でなければならないのです。

私たちの仕事は、頑固な敵対者の自己主張や高慢さ・でしゃばり・利己心によって頓挫するようなことがあってはなりません。そうした妨害に負けるような霊媒を使っては、私たちはまともな仕事をすることはできません。（中略）私たちが求めるのは、有能で真摯で、そして常に真理への探究心を持った無欲の心の持ち主なのです。そうした人材が発見困難であると述べた理由が、これでお分かりいただけたでしょう。それはまさに至難の業であり、ほとんど不可能に近いことなのです。

そこで私たちは、見出した中から最高の人材（※霊能者）を着実に鍛錬したうえで採用します。まずその魂に愛の精神を吹き込み、同時に、自己の知的性向にそぐわない思想に対する寛容性を養います。そうして独断的偏見を放棄させ、真理は多面性を持つものであること、一個人の所有物ではないことを徐々に悟らせていきます。魂の成長に合わせて知識を与え、知的基盤ができた後に、さらなる高次の知識を積み上げるように仕向けます。こうして霊的真理・霊的思想を形成し、私たちの目標とする人材に育て上げていきます。

しかしここに至って、多くの者たちが脱落していきます。私たちは、彼らは地上では霊的真理を受け入れるのは不可能であること、また古来からの地上的偏見や間違った信仰を拭い去るのが容易でないことを知ることになります。そしてもはや私たちにとっては用のない存在であることを悟って諦めるのです。

さらに私たちは、地上の霊媒（霊能者）が、真理に対して完全な忠誠心を持つように導き、同時に恐怖心や不安を宿すことのない信念を確立させるように教化します。私たちは地上の霊媒が、神とその使者である指導霊に全幅の信頼をおくように導いていきます。そして霊界からの働きかけと霊的教訓を、忍耐強く待つ心がまえを養います。こうした心がまえは、多くの霊媒に見られる苛立ちや落ち着きのなさや不満を取り除くことになります。

しかしこの段階において、また多くの霊媒が脱落していきます。恐怖心と不安に駆られ、疑念に襲われるようになります。神が自分の破滅を見ているかのように思い込み始めます。また悪魔が自分を騙そうとしているかのように思い込むようになります。間違ったキリスト教に対するそれまでの信仰心は揺らぎ始めてはいるものの、まだ霊的真理に基づく新しい信仰基盤はできていません。そのスキを狙って邪悪霊が侵入し、揺れ動く心を誘惑するようになります。そしてついに恐怖にたまりかねて脱落し、もはや私たちにとっては用のない者へと堕ちてしまうことになります。

さらに私たちは、地上の霊媒の持つ利己心を払拭するために働きかけます。私たちの仕事には、利己的な行為は許されません。霊媒が利己的な行為に走るならば、私たちは地上に向けて働きかけをすることはできなくなります。霊界から地上人を指導する際、人間の身勝手・自己満足・自慢・高慢・自惚れほど致命傷となるものはありません。霊媒の小ざかしい考えは、霊界からの働きかけの妨げとなります。独断主義に傾いた知性は、使用したくてもどうにもなりません。ましてそれが高慢と自惚れに満ちているならば、私たちは近づくことさえできないのです。」

さらにインペレーター霊は、自らが自分の霊媒であるステイントン・モーゼスを計画的に導いてきた過程を次のように語っています。

「我々はあなた（※モーゼス）の教育を、まず物的レベルから始めました。物質にまさる霊の威力を見せつけ、あなたを通じて見えざる知的存在が働いている証拠を見せつけました。その初期の段階では物理的現象で十分でした。が、その後我々は徐々に我々自身の身元について語り、あなたの精神に新たな啓示の見方を吹き込んだのです。それによってあなたは、神の真理が一民族、一個人、一地方、一時代に限られるものでないことを理解することができました。人間が勝手にこしらえたとは言え、いかなる宗教にも真理の芽が内蔵されていることを示したのです。我々の指導は二つの平行線をたどりました。一つは物質的ないし物理的現象であり、我々が使用する隠れた霊力の目に見える証拠です。もう一つは我々が届けるメッセージの内容とその意義です。人間が肉体という物質に包まれている以上は、現象的証拠に関心が行き過ぎるのもやむをえないことです。だからこそ我々は、それがあくまで副次的なもの――我々の本来の使命の証に過ぎないとの見解の理解をあなたに要請してきたのです。（中略）

（※あなたは）神は、神を求める子等すべてを等しく好意の目を持って見つめ給い、信仰と信条よりも正直さと誠実さの方を嘉納されることを学びました。またあなたは、神はバイブル以外のいずこにおいても、また他のいかなる形でも人間に語りかけておられることを学びました。神は信条よりも誠心誠意を嘉納されることを学んだのです。あなたの心の中で、プラトンの思想が芽を出し、その言葉が甦ったことがあります。が、その時はまだ、神の言葉はプラトンを通じて啓示されても、あるいはイエスを通じて啓示されても、その価値に変わりはないとの理解ができていなかったのです。その後、あなたは教父たちの教理や信仰が本質的にいかなるものであったのかを学びました。真相を理解し、それに背を向けました。初期の教会時代の神学を精神的に超えたのです。型にはまった神学に満足し、アタナシウス教義の害毒に喜びさえ覚えていた段階から一段と向上したのです。不合理なもの、神人同形・同性説的な幼稚なものを思いきって棄てました。あなたにしてみれば、自らの思索によってそうしたと言いたいところでしょう。が、それは違うのです。我々が手引きしてその結論を固めさせたのです。やがて我々は、もはやあなたの知的ならびに宗教的水準に合わなくなった教会での牧師としての職から身を引かせるのが賢明と判断しました。所期の目的を果たした場所より身を引かせ、地上における使命の次の段階のための準備へと歩を進めました。幾度かあった身体的病気も、それによってあなたの気質を調節する効果を目的としたものであり、それは実は我々にとっては霊力のエンジンの調節だったのです。それによってあなたの健全なるコントロールを維持してきたのです。（中略）

我々は唯一その目的のために計画し導いてきたのです。何とかして十分な準備を整えた霊媒を確保したかったのです。まず精神が鍛えられていなければなりません。それから知識を蓄えていなければなりません。そして生活そのものが真理の受け皿として進歩的精神を培うに相応しいものでなければならなかったのです。そのあげくにあなたは、ある時我々にとって最も接触しやすい人物（※スピーア夫人）によってスピリチュアリズムへの関心を持つように手引きされました。その折の我々による働きかけは強烈でした。計画を積極的に進めていきました。それまでの教説よりはるかに進んだ神の福音を直接的に教えていったのです。（中略）

このたびあなたを監視し守護し指導してきたのも、あなたがそうした（※霊界の）指導者のメッセージを受け入れ、それを広く人類一般に伝えてくれること、ひとえにそれを目標としてのことでした。あなたをその仕事にふさわしい人物とすることが、これまでの我々の仕事だったのです。これからは神の福音を受け取り、機が熟せばそれを世界の人々へ伝えることが次の仕事となるでしょう。」

一方、アラン・カルデック編の『霊媒の書』の中にも、地上の霊能者に対する霊界からの導きに関して、次のような興味深い内容が述べられています。

「霊団側としては、あらゆる種類の霊能者に正しい道を歩ませるべく指導します。が、それに耳を傾けず、堕落の道を歩み続ける者には見切りをつけます。そして霊能そのものは劣っても、少しでも徳性の高くある者を、渋々ですが、使用します。それ以上の人材が見当たらないのですから、やむを得ません。偽善者を通して真理が正しく伝えられることはありません。（中略）モラルの感覚に欠ける霊媒でも、能力的に良いものを持っていれば、今も述べた通り、他にこれといった人材がいないという特殊事情にかんがみて、取りあえずその者で間に合わせます。が、そのうち他に適切な霊媒が見つかれば、すぐに見捨てます。」

「（※霊媒が）ふざけ半分にやり始めたり野心が度を超し始めたら、すぐに見放します。また、その能力を霊的真理の普及のために使用するという奉仕の精神を忘れ、指導を求めてくる人や研究・調査という学術的な目的で現象を求めにくる人を拒絶するようになった時も、高級霊は手を引きます。

大霊は霊媒自身の娯楽的趣味のために能力を授けるのではありません。ましてや低俗な野心を満足させるためではありません。あくまでも本人および同胞の霊性の発達を促進するために授けているのです。その意図に反した方向へ進み始め、教訓も忠告も聞き入れなくなった時に、霊団側はその霊媒に見切りをつけ、別の霊媒を求めます。」

シルバーバーチもまた、霊媒に対する霊界からの導き・働きかけの困難さを述べ、それが成功して霊界の道具となる「本物のスピリチュアル霊能者」を確保したときの喜びを次のように語っています。

「潜在的な霊能者を探し出し、それを指導して“使いものになる霊媒”――つまりこちらから伝達する知識や叡智を純粋な形で受け止めてくれる段階にまで持っていくには、たいへんな時を要します。そして、その段階にきてから、今度は内的な成長を成就する段階が始まるのです。そういう献身的な霊媒、つまりこちらからの指導を素直に受け入れてくれる有能な人材を確保した時の喜びは、ひとしおです。その霊媒を通してさらに大きな霊力を地上へ送り込み、それだけ多くの成果が成就されるからです。」

地上に優れた霊能者をつくり出すために、霊界人がどれほど苦労し、多くの犠牲を払ってきたのかを実感されたものと思います。優れた霊能者を確保してスピリチュアリズムの大計画を遂行するために、霊界人は懸命に働きかけ、言葉に尽くせないほどの苦労と犠牲の道を歩んできたのです。