３）霊能者の「金銭問題」

霊能者は常に、この世の誘惑にさらされています。その最大のものが“金銭の誘惑”です。霊能者やヒーラーと呼ばれている人間の大半が、相談料や治療費として報酬を得ています。霊能者やヒーラーも肉体を持って地上で生活している以上、何らかの収入（生活費）が必要となるため、「霊能者やヒーラーが報酬を要求するのは当たり前・正当である」との主張がなされます。実際に、ほとんどの霊能者やヒーラーが、こうした意見を述べています。

この報酬が、しばしば大きな社会問題を引き起こすことになります。霊能者の報酬に共通する決まりはなく、人によってバラバラです。１回に100万円以上もの金銭を要求する霊能者もいれば、５万円～10万円を請求する者もいます。そうした多額の金銭を要求する人間がいる一方で、相手からの心遣い・お礼として数千円程度の金銭を受け取る霊能者もいます。現在では霊能者やヒーラーの報酬は、各人思い思いの判断のもとで決められています。

巷で評判を取るようになると、霊能者やヒーラーのところには多くの人々が集まるようになり、それにつれて報酬が引き上げられます。それでもなお人々がひっきりなしに寄って来るため、霊能者やヒーラーは徐々に金銭感覚が麻痺し、高い報酬を請求することに何の疑問も感じなくなってしまいます。“高くて当たり前”と思うようになってしまうのです。

霊能者やヒーラーが報酬を要求することは、霊的に見たとき無条件に正当なあり方と言えるでしょうか。地上で生きている以上、報酬を求めるのは当たり前のことなのでしょうか。先に「霊能者が持つべき精神」の箇所で、「この世の利益を得るために霊能力を利用しない」という内容を学んできました。報酬を手にすることは、明らかに霊能力を用いてこの世の利益を得ることです。

結論を言えば――「霊界の道具に徹している本物の霊能者は、相手に報酬を要求するようなことをしてはならない」ということです。霊的に見たとき、霊能者やヒーラーの報酬は自ら要求するものではない、ということです。“感謝の気持ち”として相手が自発的に提供してくれた礼金を受け取る、ということでなければなりません。世界的に有名なヒーラーであったハリー・エドワーズが、無料で治療をしていたことはよく知られています。そのため彼は、たびたび経済的に困窮するような状況に追い込まれました。しかし無料でスピリチュアル・ヒーリングをするという姿勢は、最後まで崩しませんでした。

では、ハリー・エドワーズほど有名ではない霊能者やヒーラーが報酬を要求せず、相手の自発的な謝礼や献金だけで生活を維持していけるのでしょうか。収入の道が途絶えて飢え死にしてしまうようなことにはならないのでしょうか。

そうした心配は無用です。実際に無報酬に徹してきた霊能者やヒーラーが“飢えて死んでしまった”というような話は、これまで一度も聞いたことがありません。「肉体を持って生きている以上、報酬を要求するのは当たり前」といった考え方には、霊的な根拠はありません。まして大金を要求するような行為には、一片の正当性もありません。

霊能者やヒーラーとしての活動は、どこまでも「霊界の道具」として行うものです。それは当然、「授かった霊能力を人助けのために役立てたい！」という純粋な動機から出発しなければなりません。そうした本物の奉仕精神の中には、報酬を期待するような思いは何もないはずです。

ところが現実には、大半の霊能者やヒーラーの出発点の動機には、残念ながら不純なものが含まれています。本当の利他愛から発した奉仕精神を持って出発しているわけではありません。口では“人々のため”と言いながら、報酬を得ることを前提としているのです。彼らの心の中には「お金儲けをしよう」という思いが、しっかりと存在しています。

霊能者やヒーラーが携わる霊的活動は、そのほとんどが霊界サイドによって行われます。霊界の人々が主役である以上、それは無償の奉仕活動でなければなりません。もしそれでは“生計を立てられない”というのなら、霊能者やヒーラーとしての活動を収入を得るための仕事にすべきではありません。余暇に“ボランティア活動”として行えばよいのです。自分の生計を支えるための仕事を他に確保したうえで、手の空いた時間や休日に奉仕活動をするということです。また、手技療法などの資格を持っている治療師なら、その手技療法と同時にスピリチュアル・ヒーリングを無料でしてあげればよいのです。霊能力を職業にする必要性など、全くありません。

霊界の道具として行う霊的活動である以上、地上的時間の長短は何の障害にもなりません。たとえ短時間であっても、霊界の人々が最大限に活用してくれます。報酬目当てで霊能者やヒーラーとしての活動をしている人たちに言うべき言葉は――「あなた方が霊能者やヒーラーをしなくてはならない理由は、どこにもありません。もし“無報酬では霊的活動ができない”と言うのなら、別の人がやるので心配する必要はありません」というものです。“お金を取ってでも自分が霊能者として働くことが人類のためである”と考えるような傲慢な姿勢では、霊界の道具としての仕事はできるはずがありません。そうした人間が霊能者やヒーラーを辞めたからといって、スピリチュアリズムの発展にとって何の損失にもなりません。代わりとなる人間は、次々と現れてきます。

霊能者やヒーラーとしての霊的活動は無償の奉仕活動であるべき、ということが分かりましたが、それを仕事の片手間ではなく、人生のすべてを懸けて行うことはできないものでしょうか。実は、その人が真の意味で「霊界の道具」に徹することができるなら、本当に「深い信仰心」を持っているなら、それが可能になるのです。

シルバーバーチは次のように言っています。

「あなたのおっしゃる物的側面での問題ですが、霊的な側面をきちんと整えておけば、物的な面もきちんと整います。なぜならば物質は霊の反映にすぎないからです。（中略）あなたも人間として生きていくうえでの必需品のことにかまけて、つい、その事実を忘れてしまいがちです。現代の生活は特に、経済的要素が厳しくなっております。

しかしバイブルには“まず神の王国とその義を求めよ。さらば、それらのものはおのずから整うべし”とあります。（中略）こうした言葉は、優先させるべきものを優先させ、霊的摂理と物的法則にかなった生き方をしていれば、すべてがきちんと整うことを教えているのです。」

大半の霊能者やヒーラーは、決まった報酬がなくては生活していくことはできない、と考えています。しかし実は、こうした考え方自体が「霊界の人々の導きを信じていない」ということなのです。信仰がない・霊の道具になっていない、ということを自ら証明しているのです。

物質世界で生きている以上、お金も食べ物も衣類も住居も必要となります。そうした物質世界ならではの必需品を“無視せよ”と言うような霊界人は、一人もいません。それどころか霊界人は――地上人が「霊の道具」として歩むなら「物質的なモノに不自由することがないように保証します」「生活に困らないように必要最低限のモノは霊界側が用意します」と言っているのです。霊能者やヒーラーは、こうした霊界人の言葉を心の底から信じなければなりません。

自分の利益を忘れ、ただひたすら「人のために役立ちたい、人類のために奉仕したい！」という思いから霊的活動に携わる地上人には、霊界から強力な援助がもたらされるようになります。自分の利益ではなく人類全体の幸福・他人の幸福を優先するとき、霊界からの援助を得て地上生活に必要なモノは与えられるようになるのです。

ところが大半の霊能者やヒーラーは、霊界の道具になろうとするのではなく、まず自分の生計を心配し、自分の利益を優先します。自分の物質的条件を確保したうえで、霊的活動をしようと考えるのです。それは優先すべきものを優先しない、本末転倒したあり方です。これでは到底、霊界からの援助を受けることはできません。

自分の人生・自分のすべてを「霊界の道具」として捧げる決心がつかない者は、霊能者やヒーラーとしての活動をすべきではありません。霊能者やヒーラーを職業としてはなりません。自分の利益を求めるところからの活動は、自らの魂を汚し、霊的成長を妨げることになってしまいます。

「霊媒はやむにやまれぬ献身的精神に燃えなければなりません。その願望そのものが霊格を高めていくのです。それが何よりも大切です。」

「そうした優先すべき事柄をきちんと優先させた生き方をしていれば、あとはおのずと収まります。霊的に正しければ、精神的にも物的にもきちんと整います。その優先順位を間違えたら最後、すべてが狂ってきます。」

『シルバーバーチの霊訓』（潮文社発行）の中から、霊能者やヒーラーの生計についてのアドバイスを列挙します。その言葉を通して、霊能者としての「金銭問題」への正しい対処の仕方を確認してください。

「霊が王様で物質は従者です。霊は物質に先んじるものです。霊的に正しければ物的な面もおのずと整います。要はどちらを優先させるかの問題です。お金が不足したからといって大義が台なしになることはありません。霊性が発揮されるにはまずお金がなくてはいけない、という発想から金儲けを優先させても、事はそうは運びません。」

「心から人のためという気持ちになれば、必要なものはそのうち必ず揃うものです。霊的なものを優先した仕事をする人は、必ず私たちが援助の手を差し伸べていることを知ってくださるはずです。」

「私たち霊界の者は、人のために役立つことをしている人の努力を無駄に終らせたことは一度もありません。必要なものは必ず手に入ります。それは私たちがこれまでに数知れず試されてきていることです。霊的なものも物的なものも、必要なものは必ず手に入れてさしあげます。」

「霊が正常であれば、つまり霊と精神と身体とが調和して機能しているかぎり、物的生活に必要なものは必ず手に入ります。霊が主人であり物質は従僕です。霊は殿様であり物質は家臣です。霊の方が物質に勝るのです。地上生活に必要な物的必需品まで無視しなさいと言うのは愚かなことですが、それに心を奪われて精神と霊にとって必須のものをおろそかにするのも同じく愚かしいことです。（中略）大半の人間が物質を優先させ、霊に関わることにはほとんど関心を向けておりません。」

「私たちには皆さんの霊的な必需品、精神的必需品、および物質的必需品は先刻承知しております。その時点においてぜひとも必要とみたものは必ず用意してあげます。ただし、それは私たち霊界側の法則にのっとって私たちの判断でタイミングを計って行います。人間界の都合に合わせて行うわけにはいかないのです。」

「背後霊の存在を信じることです。機が熟した時に必要な援助があります。条件が整い、正当な必要性がある時は、背後霊は地上に物的な結果を生じさせる力があります。私たちもそれを何度もお見せしてきました。これからも必要に応じて行使します。（中略）

お金が足りなければ工面してあげます。せっかくの奇特な行為のチャンスが、資金がないために失われるようなことには決してなりません。その点をあなたはどう思われますか。必要なだけの資金は、不思議にどこからか入るものだと思われたことはありませんか。霊の道具としての仕事に励んでいる者は、物的生活の必需品に事欠くことには決してなりません。こちらから用意してあげます。飢えに苦しむようなことにはなりません。渇きに苦しむようなことにはなりません。きっと何とか切り抜けられるものです。」

「私たちは決して見殺しにはしません。援助を届ける通路さえあれば、奇特な心がけを無為に終らせることはいたしません。必要とあらば、いかなる援助でもいたします。このインフレの時代にも皆さんに不足の思いをさせないように配慮しております。」

霊能者やヒーラーとして人気を得、大金（たいきん）を手にしている者が、霊界から「真の道具」として認められることは決してありません。この世の人気や大金は、その人間が“ニセモノ”であることを示しています。あり余るお金が、霊能者やヒーラーの霊的な実態を端的に反映しているのです。

霊能者やヒーラーが「霊の道具」として真摯に歩むとき、その生活は必ず霊界から保障されますが、大金が転がり込んだり、裕福な暮らしを送るようなことには決してなりません。本物の霊能者やヒーラーは皆、質素で慎ましやかな生活をしているのです。