２）遠い将来における「霊能力」と「霊能者」
シルバーバーチは――「人類の大半は、まだ霊的なものを求める段階まで達しておりません。言いかえれば、霊的波長を感受する能力を発揮しておりません。ごく少数の人たちを除いて、大部分の人々はそのデリケートな波長・繊細な波長・高感度の波長を感じ取ることができないのです。そこで私たちの方から、言わば階段を下りなければならないのです。そのためには当然、それまでに身につけた霊的なものの多くを、しばらく置き去りにしなければなりません。本当は人間側からも階段を上がってもらって、お互いが歩み寄るという形になればありがたいのですが、それはちょっと望めそうにありません」（『地上人類への最高の福音』・スピリチュアリズム普及会・p194）と述べています。
現時点での地上人の低い霊性では、霊界と地上の直接交流（“インスピレーション”による交流）の可能性は、ほとんどゼロに等しいと言っているのです。そのため霊界人が一方的に苦労を負担し犠牲を払う形で「霊媒現象」を演出し、ここまでやってきたのです。
しかし遠い将来には、「霊能者」が地球人類の当たり前の姿になっていきます。霊能者はもはや特別な人間ではなくなります。他の進化した天体では、住人は自由に霊界人と交わっていますが、遠い将来の地球人類もそれと同じように、霊界人と自由に交流することができるようになるのです。その時には、現在のような“死”を恐れる人間は誰ひとり存在しなくなります。
シルバーバーチは次のような興味深いことを述べています。
「私は、霊力が今日のように少数の特殊なチャンネルを通してではなく、当たり前の日常生活の一部として、無数のチャンネルを通して地上世界へ注がれる日の到来を、楽しみに待ち望んでおります。その時は“あの世”と“この世”との間の障害物がなくなります。（中略）私はそういう世界――地上世界が広大な宇宙の一部であることを認識し、すぐ身のまわりに高次元の世界の生活者を霊視できるような世界――の到来を待ち望んでおります。何と素晴らしい世界でしょう！」
『地上人類への最高の福音』（スピリチュアリズム普及会）p.247～248
では、遠い将来における霊能者（地球人類）は、具体的にどのような「霊能力」を持つことになるのでしょうか。
“インスピレーション”は、最高次元の霊能力
これまでも述べてきましたが「霊能力」とは、霊体に備わっている能力を肉体次元で発揮するようになったものです。現代人とは比較にならないほど霊的に発達した未来の地球人は、現在の霊能者が持つ霊視能力や霊聴能力を当然のこととして発揮するようになります。同様に、他の多種類のサイキック能力も、大半の人間が身につけることになります。
そうした中で、一番中心となる霊能力、最も重要視される霊能力が「インスピレーション能力」です。このインスピレーション能力は「テレパシー能力（＊サイキック霊能力の一種）」が高級霊に支配されることによって、霊界からの高次元の思想やメッセージやイメージを直接キャッチする能力のことです。霊的観点から見たとき、数ある霊能力の中で、このインスピレーション能力が最も高次元のものと言えます。現在でもインスピレーション能力に優れた霊能者はいますが、将来においては、それが今とは比較にならないほど次元と精度が高まったものになっていくのです。
「最終的には、いつの日か地上人類も、霊と霊とが自然な形で直接交信（※インスピレーション交信）できるまでに霊性が発達します。」
『霊的新時代の到来』（スピリチュアリズム普及会）p.111
「形式を超えた霊と霊との交渉、地上的障害を超越して、次元を異にする二つの魂が波長を合わせることによって得られる交霊関係――これが最高の交霊現象です。」
『地上人類への最高の福音』（スピリチュアリズム普及会）p.274
“インスピレーション”による霊界と地上界の交流
インスピレーションは、最高次元の交霊現象です。これまでは霊界人の思想やメッセージを地上人に伝えるために、霊界と地上との間に“霊媒”という霊能者が必要でした。霊媒は、霊界人の思想やメッセージを受け取ったり、代弁したり、スピーカーとなって、それを地上人に伝えます。
この「霊媒現象」では、談話形式や書記形式が主に用いられてきました。入神談話や自動書記が、スピリチュアリズムにおいて最も一般的な方法でした。これらは霊界からのメッセージを、霊媒の“潜在意識”の中にある音声や文字といった地上人の言語に変換して表現するものです。霊界の通信霊は、このプロセスを成立させるために並々ならぬ苦労を背負い犠牲を払ってきました。そうした努力の結果、高級霊界からの「霊界通信」が成功し、地上に初めて霊的真理・霊的知識がもたらされることになったのです。
しかし実はこうした“霊媒”を用いての方法は、霊界人にとっては不本意なものでした。あまりにも多くの障害やエネルギーの損失があるからです。霊界人は、本当はもっと別の方法を用いて地上人との交信を行いたかったのです。その方法とは“インスピレーション”によるものでした。
「私たちは物的外皮の下に埋もれている永遠の実在を見出させてあげようと努力しているのです。それを、できることなら霊的な方法で行いたいのです。すなわち強烈なインスピレーションに触れさせるとか魂の琴線に触れさせるという形の方が望ましいのです。また、そう努力してみました。が、その方法では、反応を見せる人間は情けないほど少ないのです。」
『霊性進化の道しるべ』（スピリチュアリズム普及会）p.32
霊界人は、できることなら霊媒を用いずに「インスピレーション方式」で、霊界からストレートに地上人にメッセージを送りたいと思っていたのです。インスピレーションは、霊媒という仲介者を用いずに霊界と地上界を結ぶ「最高の交霊現象」です。古来より「神からの啓示」と言われてきたものは、実はこのインスピレーションのことだったのです。インスピレーションによる高級霊からの通信・メッセージのことだったのです。
しかしこれまで、高級霊からのメッセージを直接受け取ることができる地上人は、全くと言ってよいほど存在しませんでした。高級霊と地上人との間に「インスピレーション通信」が成立するためには、何よりも地上人に高い霊性が要求されますが、その点でこれまでの地上人（霊能者）はことごとく失格でした。そこで仕方なく“霊媒”を通して地上にメッセージを送るという手段を採用することになったのです。
しかし今後のスピリチュアリズムの進展にともない、地球人類全体の霊性が高まり、それに並行して高級霊からのメッセージを直接受け取ることができる高次元の霊能力を持った地上人（霊能者）が次々と現れるようになります。これが「インスピレーション霊能者」です。霊性が高く、同時にテレパシー受信能力の優れた人間（インスピレーション霊能者）によって、高級霊界からの思想やメッセージがストレートに地上に届けられるようになっていくのです。
- ●これまでの交霊現象………霊―→霊媒―→地上人……霊界通信
- ●遠い将来の交霊現象………霊――――――→地上人……インスピレーション
（質問）――“インスピレーション的能力”というのは具体的にどういうものですか。
「思想を言語に置き換えずに直接的に受信する能力のことです。これは霊能者の存在全体が霊の支配に浸りきれるようになって初めて可能な、最高の交霊手段です。この場合、霊との交信は精神的に行われ（※テレパシーとして行われ）、言語は必要としません。もともと霊界の上層においては、声も言語も存在せず、霊と霊とが直接的に認識し合うのです。その交信は完璧であり、聞き落とすということがありません。」
『続霊訓』（潮文社）p.144
「正常な霊的能力というのは、霊が潜在的資質を開発し、それが背後霊からのインスピレーションによって一段と高められ補強されるという形のものを言います。そこには霊を退去させて入神状態へ導く必要はなく、魂がその霊的才能を補強されて、背後霊団との協議に参加することさえ可能となるのです。（中略）霊的感覚を全開させてインスピレーションの鼓吹を受け入れます。かつては異常手段によって苦痛の中に伝えられたものが、今や、ごく自然な形で流れ込みます。本来の霊力が阻害されることも阻止されることもなく、のびのびと成長し豊かになっていくのです。」
『続霊訓』（潮文社）p.143～144
「人間の側が霊のレベルまで霊性を高めるよう努力すべきです。そうすれば霊の証と真理の両方を手にすることができるでしょう。我々としては、できることなら物的な交信手段のすべてを排除してしまいたいくらいです。この方法（※自動書記）とてインスピレーション的交霊に比べれば至ってお粗末なものです。」
『続霊訓』（潮文社）p.152
「インスピレーション霊能者」による地球人類の知性の進展
遠い将来には、高級霊からのメッセージを受け取ることができる地上人（インスピレーション霊能者）が数多く現れるようになります。その結果、現在では想像もつかないほど膨大な霊的知識・霊的情報がもたらされることになります。“インスピレーション”を通して、地球人類の霊性レベルに相応した霊的知識が次々に与えられるようになるのです。当然、現時点では地上人には秘密とされている霊界の奥義も、徐々に明らかにされるようになっていきます。
今後は多くの「インスピレーション霊能者」を介してもたらされた豊富な霊的知識・霊的情報を照合・整理することによって、地球人類の霊的知識のレベルはさらに高められることになります。遠い将来における地球人類の知性は、現在とは比較にならないほど進歩し豊かになっているはずです。
「インスピレーションは霊界の者（※高級霊）が、ある共通の性質、関心、あるいは衝動を覚えて、自分がすでに成就したものを地上の人間に伝えようとする、はっきりとした目的意識を持った行為です。」
『古代霊シルバーバーチ 不滅の真理』（ハート出版）p.170
“イエス”は遠い未来の地球人の姿
今後は、地球人類の霊性より一歩進んだレベルの啓示・真理が霊界からもたらされるという形で、人類の霊性と知性は少しずつ上昇していくことになります。実は、２千年前に地上に誕生したイエスは、これから地球人類が長い期間をかけて至ることになる未来の人類の姿を表していたのです。生前のイエスが、あらゆる霊能力に卓越し、肉体を持ちながら自由に霊界人と交わることができたという事実は、まさにイエスの霊性が人類の中で抜きん出たものであり、「完全な霊主肉従」の状態を保っていたことを示しています。
高級霊の通信は、イエスが肉体を持ちながらも、それが霊界との交流に支障とならなかったことを明らかにしています。完璧ともいえる霊主肉従の実現によって、イエスの肉体はきわめて「大量の霊的エネルギー」を取り入れることが可能となり、それによって肉体は聖別され、霊界人と自由に交流することができたのです。イエスはすでに２千年前に、地球人類が今後、何百年、何千年とかけて至る霊性進化のレベルにまで達していました。遠い未来の地球人は「インスピレーション能力」によって霊界の人々と自由に交流し、高次元の豊富な知識・情報を知ることになりますが、イエスはそれを２千年前に実現し、多くの霊的真理・霊的知識を得ていたのです。
“ニセ霊能者”の完全追放――未来にはニセ霊能者の居場所・働き場はなくなる
現在では霊能者の数は人口全体のごく一部であり、また大半の人々が霊的真理を知らないために“ニセ霊能者”が横行しています。しかし「霊的真理」が地球上に広く行きわたり、それが人類の常識となり、さらには優れた「インスピレーション霊能者」が次々に現れるようになると、霊能力を悪用した不正はできなくなっていきます。ニセ霊能者による詐欺やペテンは、霊性が低く霊的に無知な人々が大半を占める現代であればこそ存在し得るものなのです。
スピリチュアリズムの普及によって「霊的真理」が地球人類の共通の指針となるにともない“ニセ霊能者”は存在することさえできなくなり、地球上から完全に駆逐されることになります。現代のニセ霊能者による詐欺やペテンの横行は、未来の地球においては遠い過去の出来事として語り草になることでしょう。