これまで人類の宗教史を“アニミズム・シャーマニズム”と“神秘主義”という２つの霊的系譜を中心軸として鳥瞰してきました。人類の歴史には、無数と言ってよいほどの霊魂と霊的世界に関する信仰（宗教）が存在してきました。いつの時代にも、こうした信仰がなくなることはありませんでした。それは人間が霊的要素を持った「霊的存在」として創造されているため、常に霊的世界や霊的存在との関係を求めるようになっているからです。人間と霊的世界は切っても切れない関係にあり、霊的世界への関心は、地上人類の意識の中を地下水脈のように流れ続けてきました。霊魂への信仰は、外部から圧力を加えられると一時的に地下に潜行することもありますが、時間がたつと再び表面上に現れるようになります。

シャーマニズムや神秘主義といった「霊的信仰」は、人類の歴史の中で少しずつその姿を変化させながら生き延び、19世紀半ばに至って“スピリチュアリズム”に到達しました。スピリチュアリズムは人類史上、最も知的に整理された高次元の神秘主義思想であり心霊学です。スピリチュアリズムは思想面・知識面において、これまでの神秘主義や心霊学を圧倒しています。また演出される心霊現象の多様性と強烈さにおいても、人類史上類例のない神秘主義と言えます。スピリチュアリズムは、霊的信仰の系譜の到達点として出現したものであり、人類史上のあらゆる神秘主義思想の集大成と言えます。この章ではそうした観点から「スピリチュアリズムの心霊現象論」を見ていきます。