１）生まれつきの霊能者とそうでない人の、霊能力開発の違い
霊能力開発の前にまず、「自分が霊能者として相応しい人間かどうか？」という根本的なところから、自分自身を客観視してみなければなりません。どのような人間なら霊能者を目指してよいのか、自分がそういう人間なのかどうかを、改めて確認しておく必要があります。
生まれつきの霊能者の、霊能力の発現
前章（１）の“霊能体質・霊媒体質”の箇所で、「霊能力」が発現するようになるメカニズムについて学びました。その内容を簡単に言うと、霊体から肉体に「大量の霊的エネルギー」がもたらされることで、霊体が持つさまざまな能力・機能が肉体レベルにおいて表面化するようになります。こうした霊体から肉体に向けて大量の霊的エネルギーを流すことができる身体的傾向を“霊能体質・霊媒体質”と言います。「霊能者」は、霊能体質・霊媒体質という特殊な身体を持っているために、霊能力を発揮することができるようになっているのです。
さて前章（１）では、霊能者としての人生を送るようになる人間は、生まれつき霊能者になる運命が決定していることを学びました。地上へ再生する前に霊界において、自らの霊的成長やカルマの清算・魂の強化、あるいは人類への奉仕といった目的のために霊能者になることを選択します。霊能者としての道を自己選択した人間は、摂理の働きによって地上人生のある時に、自然と霊能力が発現するようになります。時期が至ると再生前に決意した内容に向けて自動的に状況が展開し、霊能者としての道が開かれるようになるのです。霊能者になる運命を持った人間の場合には、「霊能力発現の時期」の大枠は決まっているのです。
霊能力の開花の時期が遥か先（人生の遅い時期）に予定されている人の場合には、若いときからいくら霊能開発の訓練を積んでも、なかなか霊能力は発現しません。これは霊能者としての素質を持っている人であっても、決して無理な訓練をしてはならない、ということを意味しています。
霊能力の開花の時期が近づくと、霊界からの働きかけによって、本人の心に自然と霊能力への関心が湧き出すようになります。あるいは霊感の強い人間を通して、霊能者になる運命を持っていることを告げられるようになります。その人に時期がきていれば訓練によって突如、霊能力が発現するようになります。霊能者としての素質を持った人間（霊能体質者）の場合には、時期さえ間違えなければ「正しい霊能力開発訓練」によって、スムーズに霊能力が発現するようになるのです。また、その後も訓練を通して霊能力がぐんぐん増強されていくことになります。
生まれつきの霊能者としての道が決まっている人間の場合には、ある程度までなら霊能力開発訓練によって「霊能力発現の時期」を早めることができますが、予定から大きく外れた時期に霊能力を開花させるようなことはできません。
霊能者としての素質を持たない人の場合、霊能力獲得は可能か？
これまで述べてきたように、霊能者になるかどうかは生まれつき決定しています。では、霊能者としての素質を持っていない人間の場合には、どんなに訓練をしても霊能力を発現させることは不可能なのでしょうか。霊能開発訓練を強力に推し進めることによって、霊能力を身につけることはできないものなのでしょうか。
実は、霊能者としての素質を持たない人間であっても、霊体と肉体の関係を強制的に変化させることによって、一時的に霊能力を発現させることができるのです。霊能体質者の場合には、霊体から肉体に向けて「大量の霊的エネルギー」が流れることによって自然と霊能力が発現するようになります。それが“霊能体質・霊媒体質”というものですが、そうした体質を持った人間であっても霊体から肉体に流れる霊的エネルギーの量が少ないときには、霊能力は発現しません。霊体が肉体に対して優位の状態にないときには、霊能力は発揮できないのです。この霊能力を現出させる霊と肉の条件が「身体次元での霊主肉従」であり、これが“霊能体質・霊媒体質”の本質です。霊能力は――「身体次元での霊主肉従」を強力に推し進めることによって発現するようになるものなのです。（＊「身体次元（霊体と肉体）の霊主肉従」は、「心の次元（霊の心と肉体本能）の霊主肉従」とは異なります。スピリチュアリズムでは「心の次元の霊主肉従」を重視しており、ここで取り上げるような「身体次元の霊主肉従」はあまり重視していません。）
例えば、生まれつきの霊能者としての運命を持っていない人間でも、断食や滝行・断睡行などによって一時的に霊能力が発現することがあります。これは“肉体行”によって肉体が衰弱し、「身体次元での霊主肉従」の傾向が強まった結果、一時的に“霊能体質・霊媒体質”が形成されたからです。それと同様の理由で、病気や老衰によって肉体が衰弱し、身体レベルでの霊主肉従化が進んでいるような場合にも霊能力が現れることがあります。特に死の真際など肉体が最も衰弱したときには、霊能力が発現しやすくなります。臨終を控えた病人が“死者の姿を見たり、死者の声を聞いた”というような話をしばしば耳にすることがありますが、これは肉体の衰弱にともなって霊能力が発現したためです。
もともと霊能者としての素質がなかった人間でも、ある種の“肉体行”を通して身体次元での霊主肉従化を進めることで霊能力が現れるようになりますが、そうして発現した霊能力はどこまでも一時的なものであり、恒常的に発揮できるわけではありません。ところが人によっては、不自然な訓練を続けていくうちに身体の状態が少しずつ変化し、コンスタントに霊能力を発揮できるようになる場合があります。従来の宗教には、霊能力の発現を“悟り”の目安であるかのように考える間違った教えがあったため、多くの修行者・修験者が常軌を逸した肉体行に明け暮れ、霊能力の獲得を目指すことになりました。
霊能力の獲得に奔走する修行者・神秘主義者の大半が、間違った考えに基づいて訓練や修行をしています。そしてその狂気じみた修行を通して獲得した霊能力が死後、霊界にまで持ち越されることがあります。時には前世で身につけた霊能力を、再生時にも携えて生まれてくるようなこともあります。現在、霊能力・霊媒能力を発揮している人の中には、前世における“肉体行”によって霊能力を身につけた人間が含まれています。